140
異世界でいきなり働く事になった寄巻。
-140 部下から先輩へ-
異世界と言っても神によって日本に限りなく近づけられた世界で、同じ様な拉麺屋台なので学生時代にバイト経験があったせいか寄巻部長はお手伝いをそつなくこなしていた。
寄巻「拉麺の大盛りと叉焼丼が各々3人前で、ありがとうございます。注文通します!!大3丼3、④番テーブル様です!!」
シューゴ「ありがとうございます!!おあと、⑦番テーブルお願いします!!」
寄巻「はい、了解です!!」
寄巻の登場により一気に回転率が上がったシューゴの1号車は、今までで1番の売り上げを誇っていた。嬉しい忙しさにシューゴも汗が止まらない、熱くなってきたせいか寄巻はTシャツに着替えている。
数時間後、今いるポイントでの販売を終えシューゴが片付けている横で手伝いのお礼としてもらった冷えたコーラを片手に寄巻が座り込んでいた。
シューゴ「寄巻さんだっけ?あんた・・・、初めてでは無さそうだね。」
寄巻「数十年も前も話ですが、あっちの世界で拉麵屋のバイトをしていた事があったのでそれでですよ。」
いつも以上に美味く感じる冷えたコーラを一気に煽ると、寄巻はこれからどうしようかと黄昏ながら一息ついた。渚は隣に座り寄巻自身が1番悩んでいる事を聞いた。
渚「部長・・・、家とかどうします?」
寄巻「吉村・・・、さん・・・。こっちの世界では違うからもう部長と呼ばなくていいんだよ?それに君の方がこの世界での先輩じゃないか、お勉強させて下さい。」
寄巻は久々に再会した部下に深々と頭を下げた、渚は焦った様子で宥めた。
渚「よして下さいよ。取り敢えず不動産屋さんに行ってみましょう、即入居可能なアパートか何かがあるかも知れません。」
シューゴ「おーい、寄巻さんにまた後で話があるから連れて来て貰えるか?」
シューゴの呼びかけに軽く頷いた渚は寄巻を連れて『瞬間移動』し、ネフェテルサ王国にある不動産屋に到着した。以前渚もお世話になったお店だ。
寄巻は『瞬間移動』に少々驚きながらも目の前のお店に入ろうとした渚を引き止めた。不動産屋で契約出来たとしてもお金が・・・。
渚「そうでしょうね、でも安心して下さい。部ちょ・・・、寄巻さんも神様にあったんでしょ?」
寄巻「それはどういう事だ?「論より証拠」って言うじゃないか、分かりやすい形で見せて欲しいんだが。」
渚「では、場所を移しましょう。」
渚は再び『瞬間移動』し、ゲオルの雑貨屋に到着した。そしてATMへと案内し、自分のカードを挿し込む様に促した。
渚「ほら、日本にあるどこの銀行のカードも使えますから。」
寄巻はキャッシュカードを入れて暗証番号を入力すると、鼻血を出しながらその場に倒れてしまった。やはり渚同様、見た事の無い金額が入金されていたみたいだ。
渚「やはりですか・・・、それは転生者だけらしいので他の人には内緒にした方が良いですよ。」
寄巻「ふぁ・・・、ふぁい・・・(は・・・、はい・・・)。」
気を取り直して不動産屋に向かい、こちらでの新居の契約をしにいった。奇跡的に「即入居可能」で月家賃が8万8000円のマンションがあったので寄巻は迷う事無く契約した。
寄巻「さてと・・・、次は仕事か・・・。」
渚「多分その事だと思いますけど、先程のシューゴさんが呼んでましたよ。早速行きましょう、良かったら私も連れてって下さい。」
渚は寄巻が契約書を熟読し、サインをしている間に『瞬間移動』を『付与』して使える様にしていた。渚の動きを真似てスキルを発動する。
寄巻「何故・・・、俺にも出来たんだ・・・。」
寄巻が冷静な渚に動揺しながら聞くと、促された通り両手を前に出して念じステータス画面を出してじっくりと見た。
寄巻はそれにより一層、異世界に来た実感が湧いた様だ。
寄巻部長の異世界生活が始まった。