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眩しい光の正体とは。
-139 懐かしき再会-
その眩しい光は渚にとって少し懐かしさを感じる物だった、ただ花火か何かかなと気にせずすぐに仕事に戻った。今いるポイントで開店してから2時間以上が経過したが客足の波は落ち着く事を知らない。
2台の屋台で2人が忙しくしている中、渚の目の前に『瞬間移動』で娘の光がやって来た。スキルの仕様に慣れたのか着地は完璧だ。
光「お母さん、売れてんじゃん。忙しそうだね。」
渚「何言ってんだい、そう思うなら少しは手伝ってちょうだい。」
光「いいけど、あたしは高いよ。」
渚「もう・・・、分かったから早く早く。」
注文が次々とやって来ている為、調理と皿洗いで忙しそうなのでせめて接客をと配膳とレジを中心とした仕事を手伝う事にした。2号車の2人の汗が半端じゃない位に流れている頃、少し離れた場所から女性の叫び声がしていた。先程眩しく光った方向だ。
女性①「大変!!人が倒れているわ!!誰か、誰か!!」
大事だと思った屋台の3人も、そこで食事をしていたお客たちも一斉にそちらの方向へと向かった。一応、火は消してある。
男性①「この辺りでは見かけない服装だな、外界のやつか?」
女性②「頬や肩を叩いても気付かないわよ、死んでるんじゃないの?」
男性②「(日本語)ん・・・、んん・・・。何処だここは、俺は今まで何していたっけ。」
どうやら男性が話しているのは日本語らしいのだが、まだ神による翻訳機能が発動していないらしい。
男性①「(異世界語)こいつ・・・、何言ってんだ?やっぱり外界の奴らしいな。」
男性②「(日本語)ここは・・・?この人たちは何を言っているんだ?」
しかし光の時と同様にその問題はすぐに解決され、光達が現場に到着した時には雰囲気は少し和やかな物になっていた。すぐに対応した神が翻訳機能を発動させ、男性は皆に今自分がいる場所などを聞いていた。ただ、男性の声に覚えがある光はまさかと思いながら群衆を掻き分け中心にいる男性を見て驚愕した。
光「や・・・、やっぱり!!」
男性②「その声は吉村か?!何故吉村がここにいるんだ?!」
渚「あんた・・・、ウチの娘に偉そうじゃないか?」
光は男性に少し喧嘩腰になっている渚を宥める様に話した。
光「母さん、この人は向こうの世界にいた私の上司の寄巻さんっていうの。」
渚「え・・・、上司の・・・、方・・・、なのかい?」
寄巻「そう、今光さんが仰った通りです。私、営業部長の寄巻と申します。そういうあなたは?」
渚「先程は失礼しました、私は光の母の赤江 渚です・・・。」
光から母親を早くに亡くしたと聞いていた寄巻は訳が分からなくなりその場に倒れてしまった、目の前に亡くなったはずの光の母親・・・、しかも名字が「赤江」なので正直頭が痛い。
寄巻「吉村・・・、私は夢を見ているのか?急に周りの人との会話が出来る様になっているし、葬儀に並んだはずのお前がいるしでもう訳が分からないぞ!!」
光「あ・・・、それなら多分もうすぐ・・・。」
すると光の時みたいに寄巻の頭に神様の声が響き、目を瞑った部長はその場に倒れてしまった。周囲の人達が少し驚いていたが、以前自分も経験した光は冷静にシューゴを呼んで木陰へと運んで行った。
数分経った後、神の説明を受けた寄巻が目覚め光から水を受け取ると一気に煽りお代わりを要求したので『作成』で作って手渡した。
寄巻「吉村・・・、お前それ魔法ってやつか?」
光「まぁ、そんなもんです。」
寄巻「今が現実で・・・、異世界で・・・、なぁ・・・、俺これからどうすればいい?」
光「そうですね・・・。」
光は周囲を見回した。先程のお客が食事を再開し、屋台には行列ができている
光「とりあえず屋台を手伝って下さい。」
光は何故か冷静だった。