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ヒドゥラを呼び出した2人とは。
-137 人事部長の悪事-
夫婦は重い頭を上げヒドゥラにソファを勧めた、先程の入り口前にいた女性にお茶を頼むとゆっくりと話し始めた。
夫人「初めまして、普段は学園にいるからお会いするのは初めてですね。私は貝塚結愛、この貝塚財閥の代表取締役社長です。隣は主人で副社長の光明です。」
光明「初めまして、これからよろしく。」
ヒドゥラ「しゃ・・・、社長・・・。そうとはつい知らずペラペラと、申し訳ありません。」
結愛「何を仰いますやら、貴重なお話を頂きありがとうございます。」
実は最近の異動で人事部長が変わってから、やたらと人件費が削減されているので怪しいと思っていたのだ。削減された人件費の割には利益が昨年に比べて悪すぎると思っていた折、ヒドゥラの話を聞いた結愛は人事部長が怪しいと踏み、部の社員数人にスパイを頼み込んで調べていた。光明の作った超小型監視カメラを数台仕掛けて証拠を押さえてある。
調べによると金に困った人事部長が独断でありとあらゆる部署から人員を削り、余分に出た利益を、書類を書き換えた上で自らの口座へと横流ししていたのだ。
結愛「今回発覚した事件により貴女を含め大多数の社員に迷惑を掛けてしまった事は決して許されない事実です。人事部長は私の権限で以前の者に戻し、迷惑を掛けた皆さんには賠償金を支払った上で私達夫婦からお詫びの温泉旅行をプレゼントさせて頂きます。」
光明「そしてヒドゥラさん、貴重なお話を聞かせて下さった事により我々にご協力下さいました。我々からの感謝の気持ちもそうなのですが、業務に対する責任感を感じる態度へと敬意を表し今の部署での管理職の職位を与え、勿論貴女にもお詫びの温泉旅行をプレゼント致します。」
ヒドゥラは今までの苦労が報われたと涙を流すと、全身を震わせ崩れ落ちた。2人に感謝の気持ちを伝えると自らの部署に戻り暫くの間泣いていたという。
問題の人事部長についての調査なのだが、以前から魔学校の入学センター長を兼任しているアーク・ワイズマンのリンガルス警部に結愛が直々にお願いしていた。そしてこういう事もあろうかと様々な魔術をリンガルスから学んでもいたのだ、屋台で使用した『変身』もその1つである。そのお陰でネクロマンサーとなり、多くの魔術が使える様になった結愛は魔法使い特有の念話も使える様になっていた(光は『作成』スキルで作ったが)。
結愛(念話)「警部さん、調査の方はいかがですか?」
リンガルス(念話)「理事長・・・、思ったより多くの問題が発覚しましてね。正直困ったものです。」
結愛の思惑通り人事部長には業務上において社員や魔学校の教員、そしてまさかとは思ったが生徒の保護者からの苦情により発覚した問題が多数あり、リンガルスの正体を知る者から情報が多数提供されていた。
リンガルス(念話)「それが我々が見えてない所で今回の様な横流しは勿論、社員に対するセクハラ・パワハラに暴力行為を行っていたらしく、その上一番酷いのが・・・。」
結愛(念話)「どうされました?」
リンガルス(念話)「それが生徒に対する脅迫行為などもあるらしく、申し訳ないのですが多すぎて私の頭脳が追いつきません。」
結愛(念話)「分かりました、すぐに対応します。」
結愛は即座に人事部長の解雇通知書を作成し、代わりに以前務めていた者に対し戻る様に通達を出した。
その解雇通知書は人事部長に対する逮捕状も添付されており、裁判所にはリンガルスが申告を出していた。
結愛(念話)「相変わらず対応が早いですわね、助かります。」
リンガルス(念話)「いえいえ、理事長に感謝しているのは私の方です。私の様なクズ人間をずっと雇って下さっているんですから、生徒の皆さんや教員の先生方、社員の皆さんの為に当然の事をしたまでですよ。」
結愛(念話)「貴方を雇って正解でした。これからもよろしくお願いします、リンガルス入学センター長。」
リンガルス(念話)「私も以前ご迷惑をおかけした身、これ位で恩を返せたとは思っていません。」
結愛(念話)「あれは捜査の一環だったじゃないですか、相変わらずの真面目っぷりですわね、尊敬してます。それと・・・。」
リンガルスは急に途切れた念話に少し焦りを見せた。
結愛「もう近くにいるのですから、念話じゃなくても良いのでは?」
リンガルス「あらま、いつの間に。これはやられちゃいましたね。」
光明「お前も人が悪いな、結愛。」
結愛「何言ってんだよ、たまには俺だってこういう事するんだぜ。」
結愛もたまには意地悪になる。