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136

渚の作った料理を噛みしめる様に楽しむヒドゥラ。


-136 優しく頼もしき老夫婦-


 先程まで抱えていた悩みなどどうでも良くなってしまったと周りに思わせてしまう位の笑顔で拉麺と銀シャリを楽しむラミア、その表情に安堵したのか渚は屋台の業務に戻る事にした。でもその表情には何処かまだ疲労感がある、そこで冷蔵庫からとあるものをとりだし、ヒドゥラに渡した。


ヒドゥラ「あの・・・、頼んでいませんけど。」

渚「いいんですよ、疲れている時は甘い物です。貴女この後も頑張らなきゃなんでしょ。」


 ヒドゥラは手渡されたプリンを食後の楽しみにすると、より一層笑みがこぼれた。


ヒドゥラ「ありがとうございます。」


 その数分前、渚が屋台を構える駐車場の前を1組の男女が通りかかり、その内の女性が小声で男性に一言ぼそっと呟くと、2人は頷き合いその場を離れた。

 それから数分後、ヒドゥラがプリンを楽しんでいる時に1組の老夫婦が屋台を訪れ席に座った。


老夫人「よっこらしょ・・・、お姉さんここ良いかね?」

ヒドゥラ「勿論どうぞ。」

ご主人「ありがとうよ、昼間にやってる拉麺屋台なんて珍しいから食べてみたくてね。」

ヒドゥラ「美味しいですよ、お2人も是非。」

老夫人「嬉しいねぇ。店員さぁ~ん、拉麺2つね。歯が悪いから麺は柔らかめにしてもらえるかい?」

渚「はい、少々お待ちを。」


 渚が老夫婦の拉麵を作り始めると夫人がヒドゥラを見てお茶を啜り、声を掛けてきた。


老夫人「そう言えばこの辺りでラミアを見かけるなんて珍しいね。」

ヒドゥラ「あ、これ・・・。普段は魔法で足に変化させて人の姿で働いているんです。」

ご主人「それにしてもお姉さんどこか疲れているね、何かあったのかい?」


 老夫婦の柔らかで優しい笑顔により安心したのか、先程渚に語った会社における自らの現状をもう1度語った。老夫婦は親身になってヒドゥラの話を聞き、時に涙を流しつつまるでそのラミアが自分達の孫娘であるかの様に優しく手を握り頭を撫でた。

 ヒドゥラは涙を流し老夫婦に感謝を告げると、手を振りながらその場を後にして会社へと戻って行った。

 老夫人がご主人に向かって頷くと、残った拉麵を完食してすぐお勘定を払ってその場を去っていった。


渚「ありがとうございました、またどうぞ!!」


 老夫婦が去ってからは昼の2時半頃までお客が絶えず、ずっと皿洗いと調理を繰り返していた。正直こんなに大変とは思わなかったと感じてしまう位に。

 客足が落ち着くと渚は水分を補給し、片づけを始めた。テーブルや椅子などを軽バンに納め運転席に乗りこむ、そして地図に書かれている次の販売ポイントへと向かって行った。

 数日後、仕事に追われ相変わらず疲弊した表情を隠せずにいるヒドゥラの部屋の内線電話が鳴り、女性の声である部屋へと来る様にとの連絡がなされた。


ヒドゥラ「何の用だろう・・・。」


 そう呟きながらエレベーターに乗り指定された階へと向かうと、降りた所の大きなドアの前で先程の内線をしてきた女性が待ち構えていた。恰好から見るに秘書っぽい。


女性「ヒドゥラさんですね、中へどうぞ。」


 案内されるがままに奥の部屋に入ると、先日の老夫婦が優しい笑顔を見せながらその場に立っていた。


ヒドゥラ「あ・・・、先日の・・・。」

老夫人「そう、先日は貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました。」

ご主人「ただこのままでは貴女を騙している様な物なので正体を明かすことにしたのです。」


 老夫婦がスキルの『変身(特殊メイク)』を解くと、そこには若い夫婦が立っていた。


ヒドゥラ「あなた方は・・・、えっと・・・、どなた?」


 ヒドゥラがぽかんとした表情を浮かべている中、夫婦はヒドゥラに頭を下げた。


夫人「貴女の話を聞いて人事部に確認しました、本当に申し訳ありません。」


頭を下げた夫人はまさかの・・・。

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