134
早速新メニューを注文したブロキント。
-134 懐かしの味-
常連さんの注文に応じ、新メニューである「特製・渚の辛辛焼きそば」を作り始めた1号車の担当・シューゴ。まずは豚キムチを作っていくのだがここで必ずお客さんに聴いて欲しい事があるそうだ。
シューゴ「辛さはどれくらいがお好みですか?」
判断基準の為、ラミネートされた用紙を渚から手渡されていたのでそれをブロキントに見せる。辛さは5段階まで表示されており、それに応じて各々の辛さのキムチを使用する事になる。キムチはこの調理用に全て渚が特製で漬けていたのだが、シューゴには5種類とも試食する度胸が無かった。最高の5辛のキムチは色が尋常じゃない位に黒く、恐怖心をあおる様に唐辛子の匂いがやって来る。5辛以上の辛さを求められた場合は5辛の物に特製ペーストを加えて作る。
因みに最初のお客さんには1辛を勧める様にと伝えられており、1辛のキムチは多めに作られていた。
シューゴ「最初は1辛をお勧めさせて頂いているのですが。」
ブロキント「せやね・・・、丁度刺激が欲しかったんで敢えて3辛でお願いできまっか?」
シューゴ「3辛で・・・、分かりました。お好みで辛さ調節できますのでね。」
3辛用のキムチを加え調理にかかる、後で炒めなおすので最初は軽く火を通す程度に。一度皿にあけ少し硬めに茹でていた麺をソースと辣油で炒め先程の豚キムチを加え一気に煽る。それを見た瞬間、ブロキントが何か思い出したかの様な表情をして聞いた。
ブロキント「店主はん・・・、それまさか赤江 渚はんのレシピちゃいますのん?」
シューゴ「はい、なので「渚の」が付いているんです。」
ブロキント「渚はんって、ホンマにあの渚はんなんですか?」
シューゴ「ど・・・、どうされたんです?」
ブロキント「いやね、以前ここで事務と調理の仕事をしとった人がおったんですけどね、その人と同じ作り方やなぁと思っとったんです。」
そういうと幸せそうに、そしてどこか懐かしそうに微笑みながら調理を眺めていた。
シューゴ「渚さん・・・、多分今日中にこの場に来るはずですよ。実は今日からウチの2号車としてデビューする事になったんで。」
ブロキント「ほんまでっか?!ほな夕飯に渚はんの作った拉麺を食べてみます!!」
シューゴ「ふふふ・・・、お楽しみに。さぁ、出来ましたよ。」
皿に炒めた麺を盛り付け辛子マヨネーズを振りかけて出来上がり、お客のゴブリンキングは嬉しそうに受け取ると1口啜り頷いた。
ブロキント「これこれ、これですわ。正に渚はんの味。」
シューゴ「お褒め頂けて光栄です、さてと。」
続いて叉焼丼の調理にかかる、ホカホカの白飯にサニーレタス、刻んだ叉焼とネギを乗せ特製の醬油ダレと辛子マヨネーズをかける。
ブロキント「これは美味そうですわ、頂きます。」
出来立ての料理に匙を入れ、全ての食材が美味しく味わえるように掬った。
ブロキント「これは贅沢やな、頂きます。」
口に入れて咀嚼する、顔は幸せそうだ。
ブロキント「いつまでも噛んでいたい位美味いですわ、飲み込むのが勿体ないでんな。」
シューゴ「ありがとうございます、これから新メニューとして売り出す予定です。」
すると、美味そうで何処か懐かしい豚キムチの匂いに誘われゴブリン達が採掘場から出てきた。
ゴブリン「リーダーまた抜け駆けでっか?ずるいでんな・・・。」
後から後からどんどん集まってくるゴブリン、懐かしい渚の料理と共に定番の拉麺も売れていく。用意していた麺が無くなるんじゃないかと心配しながら調理していたのだが、実は保険で以前の倍の量を持って来てたので大丈夫だった。ただ心配な事が1つ。
シューゴ「これじゃ皆さんの夕飯時に渚さんが来た時に、かなりハードルが上がっちゃってますね。」
ブロキント「いけますいけます、渚はんはそれを絶対超えてきますんで。」
渚はどうしているのだろうか。