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133

渚の屋台デビュー当日。


-133 お仕事開始-


 夜明け前、弟・レンカルドの経営する飲食店の調理場を借り、毎日継ぎ足して使っている秘伝の醤油ダレをシューゴが仕込んでいた。

 自らの舌で選び抜いた素材と独自に調合したスパイス、そして黄金比をやっとの思いで見つけ出し配合した調味料を沸騰させない様にゆっくりと火入れしていく。

 幾度となく納得のいくまで味見を繰り返し、完成しかけたタレに煮込み前の叉焼を入れ肉の脂を混じらせつつ双方を仕上げていった。

 

シューゴ「これは味見・・・、味のチェック・・・。」


出来たばかりの叉焼を1口、十分納得のいく味付けと全体的にトロトロの食感が織りなす絶妙なハーモニーを口いっぱいに頬張って首を縦に振った。その味に堪らなくなってしまっていたのか数秒後には白飯に手を出していた。こうなると予想していたレンカルドが気を利かせて用意してくれていたのだ。


シューゴ「うん・・・、これは仕事終わりにビールだな。」


 数切れ程タッパーに残し楽しみに取っておき、屋台2台分の準備をし始めた。そうこれからは屋台が2台だ、味付けの責任も2倍だ。

 2台分の醬油ダレ、叉焼、そしてその他の具材を用意し終えた頃に裏の勝手口から渚が声を掛けた。


渚「おはようございます、良い匂いですね。」

シューゴ「おはようございます、宜しければ味の確認も兼ねて出来立てを如何ですか?」


 そう言って1口サイズに切った叉焼を小皿に乗せて渡すと渚は目を輝かせながらパクついた。目を閉じてその味を堪能する。


シューゴ「その表情だとお口に合ったみたいですね。」

渚「これビールの肴としての叉焼単品や叉焼丼でも売れるんじゃないですか?折角辛子マヨネーズも持っていくのでそれをかけて。」

シューゴ「そのアイデア・・・、採用しても良いですか?」


 シューゴは調理場に渚を残しパソコンのある部屋に向かい、急ぎ電源をつけた。どうやらメニュー表や注文用のメモの改定と魔力計算機レジのボタン設定を即座に行っている様だ。因みに値段は原価等を考慮して即席で決定した。


渚「シューゴさん、いくら何でも早すぎないかい?私でも焦りますよ。」

シューゴ「いや、折角のアイデアです。是非採用させて下さい。容器はまたいずれ作りますので今日は取り敢えず今ある分でお願いします。」

渚「了解しました。」


 新メニューが即席で誕生した所で屋台への積み込みだ、忘れ物の無いように必ず2人で1台ずつ確認しながら行っていく。忘れ物があると折角の注文を断らねばならない、それはお客さんの信頼を失う行為だ。

 全ての積荷の確認を終えると次は各々のルートを確認する、まだまだ現役と言える軽トラの1号車に乗るシューゴは前回と同様にダンラルタ王国からのルートを、そして新しい軽バンである2号車の渚は新ルートのバルファイ王国からのルートを周回して行く事になった。以前レースがあった様に3国全て行っても車で回れる距離なので無理なくダンラルタ王国に帰国出来て途中での合流も可能だ。

 各々が車に乗り込み、飲食店の駐車場から各ルートへの方向に走り出した。屋台を移動させている途中でも食べたそうな人がいれば一先ず声を掛けて必要に応じてその場で屋台を展開して販売する。

 シューゴの乗る1号車はダンラルタ王国に入ると常連さんが多いいつもの採掘場を目指した、リーダーであるゴブリンキング・ブロキント率いるチームがミスリル鉱石を日々採掘している。何より体力を必要とする作業をしているので屋台の拉麺はゴブリン達に人気なのだ。

 いつもの駐車場に車を止め屋台の準備をしていると噂をすれば影と言わんばかりにリーダーがその場に現れた。


ブロキント「店主はん毎度、相変わらず良い匂いでんな。」

シューゴ「ブロキントさん、いらっしゃい。今日は何しましょう。」


 ブロキントは新しくなったメニューをまじまじと眺めて尋ねた。


ブロキント「店主はん・・・、この「特製・渚の辛辛焼きそば」ってなんでっか?」

シューゴ「実はうち、今日から2台体制でやらせてもらう事になりましてね。その2号車に乗る渚さんという方から教えて頂いた新メニューです、叉焼丼のアイデアも下さったんですよ。」

ブロキント「もしかしたら・・・、すんまへん、それ1つずつくれまっか?」


ブロキントが思い出した事とは。

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