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店主はどうやって修業したのか。
-126 飲食店に拘る理由-
店主が思い出に浸っていると勢いよく出入口のドアが開いた、ドアを開けたのは愛車の修理を待つ渚の娘・光だ。
店主「ごめん光ちゃん、今「準備中」というか休憩してたんだよ。」
光「こちらこそごめんなさい、レンカルドさん。車屋の珠洲田さんに母の場所を聞いたらここだって聞きまして。」
光は懐からハンカチを出して汗を拭った、息を整えようとするとレンカルドがお冷を渡した。
レンカルド「ほら、これ飲んで。それにしても光ちゃんのお母様だったんですね、何となく雰囲気が似ていた訳だ。」
渚「こちらこそ娘がお世話になっています。」
レンカルド「いえいえ、何を仰いますやら。光ちゃんはここの常連になってくれましてね、いつも美味しそうに私の料理を食べてくれるんです。」
料理と聞いて渚は先程の昔話について疑問に思っていた事をレンカルド本人にぶつけてみた、不自然すぎる事が一点。
渚「そう言えば先程ヨーロッパや日本の洋食屋で修業をしたと仰っていましたが、どうやってそう言った国々に?」
レンカルド「私が18歳になったばかりの頃です。実は兄が祖父の拉麺屋台の修繕とスープの再現に勤しんでいた傍らで、私は不治の病に倒れ入院先の病院で意識と霊魂の一部のみが異世界に飛ばされていたんです。そして現地の料理人見習の方に一時的に憑依する形でその方と一緒に洋食の修業をし、終わった頃に私本人として復活致しました。意識と霊魂の一部が自分自身の体に戻ったのですが、異世界で学んだ技能などははっきりと覚えていたのでこの経験を是非活かそうとこの飲食店を始めました。」
光「初めて食べた時に何処か懐かしさを感じたから常連になっちゃったって訳。」
男性「あのー・・・、とても良い話をお聞かせ頂いた後に恐縮なのですが、私はずっとほったらかしですか?」
光は後ろに振り返り、飲食店に来た目的等をやっと思い出した。レンカルドの話につい聞き入ってしまっていたのだ。
焦りの表情を見せながら一緒に連れてきたその男性を急いで招き入れた。
光「あ、ごめんなさい。珠洲田さんの所に行ったらこの人がいてね、一緒に連れて行ってくれって頼まれたんだ。」
デカルト「来ちゃったー。」
林田「デカ・・・、ダンラルタ国王様。どうしてこちらに?」
周囲に他の人がいるので林田はいつも通り名前で呼びかけたが急いで言い直した。
デカルト「のっちー、良いじゃんか。別に隠している訳じゃないんだからさ。」
林田「でもなデカルト、一国の王が構わないのか?」
デカルト「俺が良いって言っているのだから良いの。」
光「それに仲良しだって皆知ってましたよ。」
呆気にとられる林田とデカルト。
デカルト「折角こっちの王宮から保存していたミスリル鉱石を持って来たのに。」
光「それを母に伝えに来たんです。」
林田「そうですか・・・。悪かったな、デカルト。ありがとうよ。」
渚「国王様自ら私の為に・・・、恐れ入ります。」
デカルト「いえいえ、丁度友人に会いたかったので構いませんよ。そう言えば・・・。」
デカルトは店内に漂うスープの良い匂いを嗅ぎ取り、腹の虫を鳴らした。渚たちが食べていた新作のスープパスタを見て食欲が湧いて来たらしい。
デカルト「拉麺のスープを使ったパスタですか、珍しいですね。実は昼食がまだだったんです、私もお一つ頂けませんか?」
レンカルド「かしこまりました、急いでお作り致します。」
調理場に急ぐレンカルドを見送ると、デカルトは林田の隣の席に座りお冷で喉を潤した。
そして話題は渚のとエボⅢの事に。
デカルト「そう言えば光さんのお母さんでしたか、自己紹介が遅れて申し訳ございません。私はデカルト、ダンラルタ王国の国王を一応やってるただのコッカトリスです。」
渚「これはこれは国王様、ご丁寧にありがとうございます。私は赤江 渚、異世界から転生した後ダンラルタ王国から今日この国に引っ越して来た者です。」
レンカルドの料理を楽しみに待つデカルト。