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迷惑を掛ける蜥蜴の正体とは。
-123 鉱石蜥蜴の正体と謝罪-
採掘場に潜み、その場のミスリルをメタル代わりに食べ尽くしてしまったが故に、本人も気づかぬ内に鉱石蜥蜴の上級種である希少鉱石蜥蜴になっていたのはダンラルタ国王の側近である食いしん坊のロラーシュ大臣であった。
大臣を含む鉱石蜥蜴種の者達は人間や他の魔獣と同様の食物を普通に食べても体質的には問題ないのだが、デカルトはロラーシュ本人がたまにこっそり他の採掘場でメタルを勿論迷惑を掛けない程度におやつとして食べていた事を黙認していた。しかし、どうやら普通のメタルに飽きてしまったらしくぶらっとこの採掘場に来て1口ミスリルを食べたら一気にハマってしまったとの事だ。夢中になっていたが故に気付けば1週間ずっと食べ続けてしまっていたそうだ。
因みに王宮で大臣をしている位なのだから勿論人語を話せるのだが、正体がバレない様に敢えて人語を無視している事もデカルトは知っている。
別にミスリル鉱石自体は翌日にまた出現するので生産的には問題ないのだが流石に食べ過ぎだ、これは酷い。
一先ずデカルトは採掘場のリーダーであるゴブリンキングのブロキントに頭を下げ小声で一言。
デカルト「ブロキントさん、王宮の者がご迷惑をお掛けし大変申し訳ございません。心よりお詫び申し上げます。」
ブロキント「国王はん、そんなんやめて下さい。誰だって美味いもん見つけたら独り占めしたくなるもんです。」
デカルト「そう仰って頂けると幸いです。ご迷惑をお掛けしたゴブリンさんや発注元の方々にも王宮から謝罪させて下さい。勿論、1週間分の御給金は上乗せして王宮から支払わせて頂きます。」
ブロキント「逆に申し訳ないです・・・。」
デカルト「それ位のご迷惑をお掛けしたのです、せめてもの謝罪です。さてと・・・。」
デカルトはロラーシュに気付かれない様にこっそりと近づき、物陰に潜んだ。因みにロラーシュがまだ人語を理解しないフリを続けているのでデカルトは『完全翻訳』で話しかける事にした。
ロラーシュ「誰だ・・・、誰がちょこまかと動いているんだ。コソコソせずに出て来い・・・。」
デカルト「分かりました、ただ随分と長いおやつタイムですね。1週間も王宮に出勤できない程美味しい鉱石だった用ですね、大臣。」
ロラーシュ「その声は・・・。こ・・・、国王様!!何故ここに?!」
デカルト「ネフェテルサ王国警察の林田警部からご連絡を頂きましてね、お知り合いのお店の方が発注されたミスリル鉱石が全く届かないと聞いたので調査に来たのです。溜まっている書類を私に押し付けて何をしているのですか、それに週休以外に休むなら必ず届け出を出すようにと常日頃から言っているでしょう。今回は無断欠勤を含めた罰を与える必要があるみたいですね、分かったら早く人化してゴブリンさん達に謝って下さい。」
デカルトがロラーシュを連れ採掘場の外に向かうと、外にはブロキントを含むゴブリン達が集合していた。国王が非は自分達にあると言うと、せめてもの謝罪にと人語を全く話せないゴブリン達に『完全翻訳』を『付与』して皆と話せるようにした。ただ何故かブロキントの部下達も関西弁を話していた。
ゴブリン「ど・・・、どういう事や?何でか分からんけどいきなり皆の言葉が分かるようになったで。」
デカルト「私からの謝罪を受け取って頂けますか?」
ゴブリン「勿論です。国王はん、ほんまおおきに。おおきにです!!」
デカルト「さてロラーシュ大臣・・・、謝罪を。」
ロラーシュ「皆さんの仕事を奪った上に財源となるミスリル鉱石を独り占めし、ご迷惑をお掛けした事をお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。」
デカルトはゴブリン達に迷惑を掛けた1週間分のお給料は王宮の経費から色を付けて支払わせて貰うと約束すると、その場を後にして王宮にその旨を連絡した。その時、滞ってしまっている受注リストのコピーをブロキントから受け取ったので、王宮が保有するミスリル鉱石を各所に送るようにとも伝えた。
そして今回の事態発生の連絡をくれた林田に急ぎ電話をかけた。
デカルト「もしもしのっちー、待たせて申し訳ない。どうやらメタルリザードである俺の側近がおやつとして独り占めしちゃってたみたいなんだよ。だから代わりとして王宮にあるミスリル鉱石を持ってい・・・、送るから許してくれ。」
電話を切るとデカルトは急いで王宮に戻り珠洲田からの受注書をこっそり抜き出すと、必要分のミスリル鉱石を倉庫から取り出してネフェテルサ王国に向かいルンルン気分で飛び立って行った。因みに大臣は半年の減給の罰を受ける事になっている。
デカルト「よし、久々に遊びに行ってのっちを驚かせてやろうっと。」
意気揚々とネフェテルサ王国に向かうデカルト。