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珠洲田はどうして連絡してきたのか。
-122 作業不可の理由と古き友人-
珠洲田からの連絡によると、この国の車はエンジンの起動の為に予め魔力を貯めるタンクがあり、渚のエボⅢの様な乗用車は軽に比べて1まわり大きいのだがそのタンクを作るためのミスリル鉱石が足らないとの事なのだ。
この世界においてミスリル鉱石はそこまで希少という訳では無いのだが、全体の採掘量の8割以上を占めるダンラルタ王国での生産が滞りがちになっており、珠洲田自身も必要なので1週間前から採掘業者に何度も発注しているのだが全くもって品物が届いていないというのだ。
今までは軽自動車での作業ばかりだったので在庫で何とか持たせていたのだが、今回はエボⅢなのでどうしても追加が必要になる。
林田は状況を確認すべくある友人に連絡を取る事にした。
林田「もしもし、今電話大丈夫か?」
友人(電話)「のっちー、久々じゃん。」
林田「デカルト・・・、それやめろと前から言ってるだろ。」
そう、林田が連絡を取ったのはダンラルタ国王でありやたらと「のっち」と呼びたがるコッカトリスのデカルトだ。
デカルト(電話)「それは置いといて何か用か?」
林田「実はな・・・。」
すぐさま珠洲田から聞いた事を報告し、ダンラルタ王国におけるミスリル鉱石の状況が知りたいと伝えた。
デカルト(電話)「何だって?!それは迷惑を掛けて申し訳ない。すぐに王国軍の者と調べて来るから待ってくれ。何分俺も初耳だ、状況を知る必要があるから俺自身も出る事にしよう。待ってくれているお客さんにも俺の方から謝らせてくれ。」
林田「すまない、宜しく頼む。」
デカルトは電話を切るとすぐに王国軍の者を呼び出した、応じたのは軍隊長のバルタン・ムカリトとウィダンだ。
デカルト「南の採掘場の現状を知りたいので一緒について来て頂けますか?」
ムカリト「勿論です。」
ウィダン「かしこまりました、国王様。」
3人は王宮を出るとすぐに南の採掘場に向かって飛び立った。そこではゴブリン達が日々採掘作業に勤しんでいて、唯一人語を話せるゴブリンキングのリーダー・ブロキントが指揮を執っていた。
3人は採掘場の出入口の手前に降り立つと早速ブロキントに話を聞くことにした。
ブロキント「お・・・、王様。おはようさんです。」
ブロキントは何故か関西弁を話した。
デカルト「ブロキントさん、おはようございます。我々がここに来たのは他でもありません。最近ミスリル鉱石の生産が滞っていると聞いたのですが。」
ブロキント「すんまへん、実は最近洞窟の何処を掘ってもミスリル鉱石が全然出て来なくなってるみたいなんですわ。訳を部下に聞いたらかなり大きなメタルリザードが出たみたいで、わいも有り得へんと思ってるんですがそいつが全部食うてしもてるらしいんですわ。ほんでこの国って「魔獣愛護協定」があるでしょ、せやから追い払いたくてもわいらには何も出来ひんのです。それにどうやら相手はわいみたいに人語を話せる訳でもないみたいですんでどうも出来ひんで、今丁度王宮に連絡仕掛けてたんですわ。」
デカルト「ふむ・・・、分かりました。我々が行ってみましょう。中のゴブリンさん達を一時的に外に出し、ブロキントさんは一緒に来てください。」
ブロキント「分かりました、・・・・・・・(ゴブリン語)。」
ブロキントの言葉を聞いたゴブリン達が採掘場からの避難を終えると、デカルト達は歩いてでの調査を始めた。ゆっくりと歩を進める為に敢えて人化した姿での調査を行う。ブロキントにも協力を願い、人化をしてもらう事にしたが久しくしていなかったそうなので思ったより時間がかかった。
問題の場所である採掘場の最奥の場所に近づくとガジガジという何かを齧る音がずっと響き渡っていた。
デカルト「あいつ・・・、いやあのお方みたいですね・・・。」
メタルリザード「何だよ、折角の食事中に・・・。今俺の事「あいつ」って言ったか・・・?」
デカルトには全ての魔獣の鳴き声や言葉を人語として理解する『完全翻訳』のスキルがあった、どうやらお知り合いらしい・・・。
デカルトの知り合いとは・・・。