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この世界におけるエボⅢの価値とは。
-117 不自然な事象-
ナルリスは渚がアイテムボックスから出した愛車・エボⅢを見て驚きを隠せずにいた。この世界では大抵の者が珠洲田製の軽自動車に乗っていて、乗用車を持っているのは都市圏に住む金持ちや貴族が殆どだ。
ナルリス「光・・・、貴族様だったの?」
こう聞きたくなるのも無理は無い、しかし光はごく普通の一般市民だ。ただ神様の力により全財産の金額がとんでもなくなっているが。その事が冒険者ギルドで発覚してから光は決して言わないでおこうと誓っていた。ただ普段地下倉庫にしまっているカフェラッテを含めて愛車が2台ある時点で怪しまれても仕方ない。
一先ず話題を変えようと渚に質問をぶつけた。
光「母さんは今どこに住んでいるの?」
かなり久々に、しかもこの異世界で亡くなったはずの母親との再会は本当に感動的で願わくば一緒に住めないかと思っていた。
渚「今ね・・・、ネフェテルサ王国って所の団地かなぁ。」
ナルリス「団地に住んでる方がお持ちのお車には思えないのですが。」
渚「やっぱりそういう理由なのかな。何処も止める所がなくてね、いつも『アイテムボックス』に入れてんのよ。つい最近の事だけど今住んでる所に引っ越す時に大家さんに言って駐車場を確保してもらおうとしたら何故か入居自体を拒否されかけちゃったけど、そういう訳だったのね。」
違う、そういう訳では無い。後で分かった事なのだが大家にとったら皆軽しか乗らないのでその分の駐車場しか用意出来てなかった為に、渚のエボⅢが大きすぎて困惑してしまったのだ。きっと駐車しようとしたら白線からかなりはみ出てしまう。別に入居を拒否した訳では無いらしく、ただの言い間違いだった。
光「団地なんてあったっけ?」
ナルリス「確か・・・、お風呂山の手前だった様な。」
渚「そうそう、だから今みたいな風呂なしアパートでも問題なし。」
光は決して聞き逃さなかった、自分の母親が風呂なしアパートに住んでるって?自分は神様に貰った財産で一軒家を購入、それに対して親は風呂なしアパート暮らし・・・。何となく気になる事を聞いてみた。
光「母さん・・・、家賃いくらの所なの?」
渚「月3万8千円だったかな、八百屋の給料って安くてね。あんたはどこで働いている訳?」
光「パン屋さん・・・、かな。」
真実を伝えその場を治めた。実はこの世界では冒険者ギルドに登録しているかどうかで給料が変わる職場が多いらしく、渚の勤める八百屋もその一つだった。
そこで光はある提案をしてみる事にした。
光「母さん・・・、良かったらウチに住まない?それと冒険者ギルドに登録はしてる?」
渚「普通に働いて暮らすだけなのに何で冒険者ギルドに登録する必要があるんだい?」
やはりかと思う光の横で給与に関する事情をナルリスから説明を受け、渋々納得した渚は先程から気になっている事を聞いた。
渚「あんた・・・、そんなに良い生活しているのかい?それとさっきから隣にいる人は誰だい?まさか・・・。」
光「一応・・・、一軒家持ってて・・・。後隣にいるのはナルリス、御察しの通り私の彼氏。」
ナルリス「只今ご紹介に預かりました、ヴァンパイアのナルリスです。」
渚「ヴァン・・・パイ・・・ア・・・、面白いじゃないか。流石異世界だね、改めてあたしゃ赤江 渚。娘の光がいつもお世話になっております。」
改めて3人で乾杯しようかと渚が缶ビールを回していると、ドサッと荷物を落とす音がした。その方向に振り向くとこちらをずっと驚愕の眼差しで見ている男性がいる、ネフェテルサ王国警察の林田警部だ。
林田「あ・・・、あ・・・、貴女は・・・、まさか・・・。」
渚「新人警官の林田ちゃんじゃん、久しぶりじゃない。元気にしてたぁ?」
光「母さん・・・、林田さん、今警部さん・・・。」
光は耳打ちでそう聞いた渚は数分ほどその場に立ちすくしていた。
よく考えたら光ももう大人だし、自分も年を取る訳・・・、ん?
何が発覚したのだろうか。