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114

店主は可能な限り要望に応えようとしていた。


-114 恋人の幸せ-


店主「唐揚げ・・・、ですか?」


光の口から放たれた言葉が意外過ぎて開いた口が塞がらない主人は同行していたナルリスの方を向いた。


ナルリス「すみません・・・、本人はどうしても唐揚げを肴にビールが呑みたかったらしくそこの空になりかけたガラスケースを見て愕然としているみたいでして。」

店主「そうですか・・・、それは大変申し訳ございません。今すぐ作りますのでお待ち頂けますか?」


 店主が急ぎ足で店の奥の調理場へ行くと、奥から油で沢山の肉を揚げる音がし始めた。音の大きさからかなりの量だと見受けできる。光の感情を汲み取った店主が小皿と箸、そして缶ビールを持って奥から出てきた。


店主「先程のお詫びと言っては何ですが、こちらをお召し上がり頂きながらもう少々お待ち頂けますでしょうか。こちらの缶ビールは私からの先日のお礼です。」


 缶ビールを受け取ると小皿に乗った熱々の唐揚げを一口齧り勢いよく流し込んだ。少し落ち着きを見せたらしく涙ながらに唐揚げを楽しんでいる。勢いよく口に流れ込む肉汁が光の舌を喜ばせた。


店主「お待たせいたしました!!」


 その声の後、ガラスケースに大量の唐揚げが流れ込み始めた。その光景を見た瞬間、光が立ちあがる。


光「それ、全部下さい!!」

店主「吉村様・・・、今何と?」

光「だからそれ・・・、全部下さい!!」


 店主は手を止め、持っていた出来立ての唐揚げを全て紙袋に入れ始めた。ただ横でナルリスがずっと焦っている。


ナルリス「おいおい・・・、足らなかったら俺が揚げるって。」

光「ここのを全部買った上で帰ってからナルリスに追加を揚げて欲しいの!!」


 どうやら久方ぶりに光の「大食い」が発揮されようとしていた。家の冷蔵庫には缶ビールが大量にある、それを大好きなナルリスと存分に呑みたいと思っている光の感情を汲んだヴァンパイアは店にあった鶏もも肉を大量に買い込んだ。そして漬けダレの材料も併せて購入し、何とか恋人を納得させた。


店主「ははは・・・、また凄い量ですけど大丈夫ですか?」

ナルリス「本人・・・、大食いですから。」


 一先ず会計へと移る、店主のレジを打つ指がずっと震えていた。


店主「お待たせいたしました、合計86万4677円でございます。」


 店主は驚きを隠せない、何故なら唐揚げ含め鶏肉だけでこんな金額になったのは人生で初めてだったからだ。


店主達「ありがとうございました、またお越しくださいませ。」


 店を出た2人を店主がスタッフ全員を呼び出してお見送りした。2人は店主達から見えなくなるまで歩くと『瞬間移動』で光の家へと移動した。

 店で買い込んだ唐揚げを肴に最初の1杯を持ち乾杯する、そしてビール片手に続きの唐揚げの準備をし始めた。

 片栗粉や特製の漬けダレ、そして鶏肉をビニール袋に入れて揉み込んでいく。油を適温まで温めると鶏肉を入れて揚げ始めた。30分前に店で買った唐揚げがもう無くなりかけているからだ。


ナルリス「大食いが物凄く発揮されてる・・・。」


 良い香りが部屋中に漂う。その香りだけで缶ビールが進んだ。


光「幸せ・・・。」


 光は口の周りを油で光らせながらとても嬉しそうに唐揚げを頬張っていた。

 今までで一番の笑顔を見せ、目の前の恋人を喜ばせた。


最高の時間だった。

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