表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気ままなコレクターという才能をもらって転生したが、気ままに過ごせるかどうかは別問題らしい  作者: つちのこ
4章 活動範囲が広がると起こす騒動も様々
99/151

99狙いは何かに気づく

二人の話を聞き出したことをまとめるとこうだ。


手に入れた魅了の道具を使って、エスロンさんとサイラさんを魅了して17階層まで連れて来た。

入ってしばらくは問題無かったが、いきなりオスバ(槍男)が吹っ飛ばされた。

エスロンさんがフォローと治癒に回る。

デーテル(魔法使い)が現れたAランク魔物を捕まえろと叫ぶ。それにサイラさんが反応し、魔物に飛び掛かって何とか抑える。

デーテルが魅了の針を捕まえた魔物に使用する。2人には見えなかったそうだ。何とか成功して配下にすることに成功したと言われる。

が、そのデーテルが吹っ飛ぶ。見ただけで即死だと判断できるほどバラバラになっていた。

その時点で、エスロンさんとサイラさんに俺たちが逃げる時間を稼げと命令して逃げ出してきた。


二人を16階層に上がってすぐのセーフティエリアで待っているように『優しく』話をして、『優しく』押し出した。俺の優しさに泣いていたから大丈夫だろう。勝手に動いた時には厳しくすることを伝えたので問題ないだろう。

叩きだした後は情報を整理しながら二人が走ってきた方向に走っている。多少方向のずれはあるだろうが、ただ待つよりも時間も節約できるし、動いている方が落ち着く。


「ご主人、なんでそこまでAランクは避けるんですか?」

「AランクとBランクの違いはやばいんだよ」


あいつらが無事に16階層抜けることが出来たはBランクが6人もいればまあ安全であろうということは想像できる。

更に最前線のタンクとアタッカーを二人に押し付け、安全を確保しながら進めることで17階層も途中までは進めたのも納得できる。半分以上はBランクが出るわけだから。

大きな消耗もなく進めたおかげで、さっきの2人は全速力で逃げるほどの体力が残っていた。


一般的にBランクとAランクの魔物とでは2倍以上はステータスが違う。今までもスキルやら魔法やら使っていたところにAランクは特殊な能力を持つものが多くなる。

単純な力のみでAランク認定されている魔物だとしたらステータスの上がり方は2倍どころではない。これは冒険者について学んでいるときにじいちゃんに耳タコになるほど言われたことだ。

簡単には超えられない壁が存在する。知らないはずは無いが、何かを勘違いしたのだろう。大体被害を受けるのはその本人ではないのが世知辛い所だ。詰問するのは全部が終わってからにしよう。


「そんなに危険なもんなんですか」

「そうだ。Aランク認定されている魔物なんて地上にはほとんどいないぞ。発見され次第、全力を持って討伐される。下手な村なら1時間かからず全滅だ」

「今のご主人でも勝てるんですか?」

「いや、無理。プルと連携しないと絶対に死ぬ」


そう答えるとヨウキは黙ってしまった。ヨウキは魔力の通わない攻撃が無効だといっても下手に食らって有効だと即死する可能性もあるからな。外には出ないように言っておく。


だが、考えてみると本当にイヤな気持ちになる。この森に出てきて、いきなり吹っ飛ばすような魔物だろう?心当たりしかないんだが。

ひねりが無いと思われるかもしれないが、ひねりが有ってもAランクなら何が来ても困る。俺も全部の魔物を知っているわけではない、だから心当たりではないことを祈ろう。

俺もまだヤツには会いたくない。


そして、幸丸から発見の報告がある。方角的には避けたかった方角だ。因縁を払うと思えば良いだろうか。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


遠くの方から戦っている音がしている。森林虎なら戦い方は暗殺者みたいなものだから違うのかもしれない。


そんなことを考えながら現場に到着。その場の状況を確認して唖然とする。


立っているのが2人、うずくまっているのが1人、ここに俺が入って来れたのが不思議に感じるくらいに周囲には魔物に囲まれている。

囲んでいる魔物は猿系だ。数と戦意の高さから考えて軍隊猿というやつだろうか。


Bランクとなっているが、群れとしての評価だから単体としてはそんなに強くない。でも勝てないと悟ったら指揮官が引くはずだ。

厄介なのはその指揮官が諦めない限りは引かない、攻めるときは作戦的行動を取りつつ一気に攻めてくるというところにある。

現状では俺というイレギュラーが来たことで睨み合いの状態のようだ。


そして、忘れてはいけないのは守るようにして立っているのがもう1体。森林虎がうずくまっている男をかばっている。

すぐそこに巨大な魔石があるから、立っているメンバーだけでAランクを倒したようだ。森林虎の魅了が解けたときの気持ちを考えると痛いが、それも考えるのは後回しだな。


さて、明らかに魔物ではない俺が援軍で来たことは軍隊猿にとっては不利だと判断するはずだ。引いてくれるか…?


しばらくの間睨みあうと猿たちは下がっていった。一息ついて状況の確認をする。


2人と1体はまだ状況の確認もせずに震えている男の周りで警備を固めている。近くを見回しても話に聞いていた死体の残りは見当たらない。先程の戦いの現場からはここは離れているようだ。

どこから手を付けたものか悩ましい。この人たちは魅了の状態で切り抜けているのだから、いっそのこと16階層に戻るまではこのままでいこうか。説明している間に別の魔物が来ても困るし…。


俺たちが近づいても敵対反応は返って来ないので一度離れても大丈夫だろう。一応ここにいてほしいと伝える。反応は無いが大丈夫だと判断して分裂プルを念のため置いて離れる。


とりあえずは幸丸が発見した遺品の回収に向かおう。ここから数分もかからないところだ。現場に到着したが、木に付いた血痕はあっても遺体と呼べるものは無かった。転がっていた装備品をや荷物を遺品として回収した。


戻ってきてそのまま待機してくれていたことに安心する。さっきまではうずくまっていた男は体を起こして座る状態にはなっていた。

自業自得の癖に何を心折れているのかとイラっとする。被害者の2人に取り返しのつかないことが起こっていたら、絶対に許さないところだ。


「おい。本当ならここで殺しても良いんだが、周りの安全を考えるとそうもいかない。一旦16階層に戻るぞ」


殺すの部分で防御態勢を取られているが、武器も何もない状態では迎撃まではされないようだ。こっちの2人も軍隊みたいじゃない?


「いったい、いまはなにがどうなっているんだ?」

「魔法使いは死んだ。お前を除いた2人は16階層まで逃げてる。そこまで行けば合流できる。そこまで行った時点で2人の魅了状態は解除する」


びくっと体を震わせてまた顔を隠す。


「森林虎についてはちょっと後回しだ。地上に出たらお前らは禁止魔導具を使用した罪で投獄だ。もっと厳しい罰も用意できるし、ここで死にたいならその希望も叶えてやれるぞ」

「…………行くよ」


辛うじて聞き取れる声の大きさで声が聞こえた。ギルドの前で話しかけられた時とは大違いだ。死にそうな目に遭った時に元気のままではいられないか。

少し前の時分を思い出して、同じ目に遭わないようにと気持ちを引き締めた。


「さて、じゃあ…」


行くぞと言おうとしたが、幸丸から緊急事態を告げられる。先程の軍隊猿が一気に近づいて来ていることを告げられる。


「軍隊猿が近づいて来ている!全速力で逃げるぞ!森林虎には乗れるか!?」

「あっ、ああ!」


森林虎には3人も乗ればいっぱいだ。俺は走るから別にいらない。全速力で走るように指示して16階層への方角を示して走らせる。

せめてもう少し森が途切れるところまで移動したいので、俺も一緒に移動する。一緒に走り出したが、さすがに全速で走られると負ける。みるみるうちに離されていく。


「気にするな!とにかく急げ!再度攻めて来るなんておかしいんだから!止まるなよ!」


もう見えないが、ちゃんと聞こえていると良いな。あと10分もすれば辿り着く位置まで来れた。この辺りで良いか。


「俺が相手になってやる!かかってこい!」


追いつきつつある軍隊猿に向けて新型の魔力弾丸を大量に生み出して打ち込んだ。いくつか当たりはしたが、木の陰に隠れて躱すものもいる。

俺が立ち止まると、軍隊猿たちは周りを取り囲む。進行方向まで完全に塞がれる。


「狙いは俺なわけ?」


理由は分からないが、相手が襲ってくるなら迎撃するまで。Bランクならまだ余裕を持って戦うことが出来る。そう思った瞬間に以前味わった感覚が襲ってくる。

出来る限り大きく右に飛ぶ。先程まで立っていたところに明らかに攻撃の手段が通ったことが空を切る音で分かる。


目に見えない状態なのに、攻撃してくる?しかもこんなに人目に付くところで?ありえないはずの状況は、1つの道具で解決することが出来る。


「軍隊猿が組織的な動きで、魅了の針を森林虎に刺して配下にしましたってことですかね…?」


つまり、奴らが次に狙う対象はというと…。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ