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気ままなコレクターという才能をもらって転生したが、気ままに過ごせるかどうかは別問題らしい  作者: つちのこ
4章 活動範囲が広がると起こす騒動も様々
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92今回はやってない

さて、自分は死なないと思っている奴を本当に死なないようにしてあげた。その代わりに強さは奪った。魔力が無いってことは魔法はまず使えない。闘気は使えなくはないけど、HPを削るから限界が早くなるだけ。


ん?そうか…。もし魔法陣を使ったのが強い奴だと、不死身でやばい奴になるのか。こいつはやばそうかな?


「プル。こいつ魔力無しだとどれくらい強い?」


返ってきた返答は『美食の奇跡』の前衛たちの1人と戦ったら、勝てるくらいか。見た目から考えると鍛錬不足って感じか。


それなら拘束を外さないようにだけ気を付けておいたら大丈夫かな。プルの中で全く動けていないんだから今はまだ大丈夫。でも、一般に解き放つことは出来ないな。

強い奴用に少し改良、いや改悪したものを作った方が良いかもしれない。でも今日じゃないな。また明日考えよう。とりあえず、継続してダメージを与え続けて身の程を理解させるようにプルにお願いしておいた。ルールフリーです。


今はとにかく、料理を俺も教えてもらおうと料理教室の方に参加することにした。俺の感覚からすると3日も気を失っていたという感覚が無いので瀕死から立ち直った当日だと思っている。

そんな気持ちのときに、人を死に進めるようなことをする気持ちにはならない。もう少し気持ちが落ち着いてからにしよう。


部屋の外に出て、どこでやっているか分からないけれど探そうとしたところでヨウキが声をかけてくる。


「ご主人。強くなるんやったらどんなスキルから身に付けた方がエエかな」


もう始めるのか。ヨウキは一度決めたことには真面目だな。ちゃんと答えよう。


「骨とはいえ、近接戦が出来ることは必須だろう。魔力は強いだろうからそちらを伸ばすのは有りだけど。結局は万能型が一番強いと思うよ」

「なるほど。ワイはご飯食べられへんし、もう鍛錬に入ってエエ?」

「良いけど。最初は誰かに稽古つけてもらう方が良いと思うよ」

「じゃあ魔力の扱いやら魔法から磨き始めることにするわ」


鍛錬に関しても俺の意見は取り入れてくれるらしい。素直に聞いてくれるだけでありがたいが、そればかりでも困るな。


「ある程度は自由にやってみなよ。リッチだと人族だった時と違いもあるだろうし。まずは己を知ることからだよ。口はドンドン出していくけど、分からないことや壁にぶつかったときはすぐに聞いてほしい」

「心得たで。ご主人、感謝や」

「当たり前だって。それじゃあね」


簡単なアドバイスだけ言って別れる。まだ昼を過ぎたところだから、外には行かないだろう。部屋の中で分裂プルを相手に色々と行うのではないだろうか。見張りにもなるし、任せておこう。


料理教室に顔を出したとき、まだ何も始まっていなかった。材料集めにフーズさんが向かったところで、ドラミラナは使える道具を確かめていた。

前世の料理は、生まれが寒さが厳しい国だったそうで温かい料理や味の濃い料理が多かった。この世界では普通の農村だったそうだが、素朴な味付けのものを教えてもらった。


代わりにコレクションハウスから食材を提供した。すると興が乗ってきたイートさんとフーズさんが本格的に料理をし始めたので、楽しい時間を過ごせた。


次の日からも、鍛錬をすることなく過ごした。死にかけたことで戦うことに恐怖を感じたのは本当だ。いつまでもこのままではいけないと思いつつ、過ごしてしまった。


俺も切り替えてまた頑張ろうと思ったときには、一週間経過していた。王都からの派遣組がやって来た。報告は粗方済んでいるので、引き渡しやら一旦帰ることについてのすり合わせからだ。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


応援にやって来たのは、ヒュレム様を始めとした公爵家の方々だった。顔見知りだったのは、お馴染みのヒュレム様とダブスクラブ家のメイクリム様でもう一人は初めてお会いする人だった。


「オスカー・フォン・ジスメダイヤだ。よろしく」

「お初にお目にかかります。冒険者のクーロイと申します」

「クーロイ君、僕たちに初めて会った時よりも丁寧じゃない?」

「一目見て強者と分かる人と敵対したくないですもん」


その一言に、3人とも驚く。


「初めて見ただけで分かるんだね。僕たちは言われても分からないのに」

「それは実際に体を動かして戦う術を持っているかいないかの差じゃないですかね」

「……素晴らしいな」


褒められたのは嬉しいが、この人からの視線が怖いぞ。


「我が家に雇われる気は無いか?」

「「ちょっと待った!!」」

「は?」


オスカー様の一言に、二人が先に止めに入る。一気に敵対感が増してるぞ。


「クーロイ君はうちのケイトが命を救われた上で既に先生として指導してもらっている。交渉ならまずうちを通してもらおうか」

「イヤイヤ。クーロイ君の発想はこの世界に革命をもたらすレベルだよ。その才能を活かすには一番魔導の研究を進めているダブスクラブ家が一番さ」


お互いに一番を主張したため、二人の間にも亀裂が走る。オスカー様は二人の言葉に表情を変えることなく、俺に話しかけてきた。


「今回の動きは守護を司るジスメダイヤ家の動きそのものだった。正に感服したと言っても過言ではない。私が表せる最大級の賛辞を贈ろう。その手腕を活かしてみないか」

「いや。たまたまそうなっただけで、この国だけに縛られるつもりないので。冒険者でいますから」

「む。国のためだけではない…と言いたいのか?」

「まあ、そんなところです」

「「というか、権力に取り込まない方が良いよね。フォローが大変」」


なんでそんな言葉でハモるんだ?多少2人の言い分にひっかかるものはあるが、世界を巡りたいのは本当だから、適当に躱しておこう。それよりも引き取ってほしいものを渡そう。


「引き渡したい身柄は2人です。一人は女性で大人しくこちらとの対話も全て応えてくれるでしょう。お会いすれば分かっていただけます」


まあ二人とも隣の部屋なんだけどね。ついでだから案内する。待遇の差は反省の差です。


ただ、3人はドラミラナを見る前に巨大化したプルに驚き、その中に囚えているモノを見て固まっている。これを見るとさすがに固まるのか。ドラミラナも顔色悪いしな。『美食の奇跡』は、飯がまずくなると言って来てないよ。


「その…、それは?」

「これですか?俺の連れは皆不眠不休で活動が可能なので、がんばってもらった結果です」


プルの中に男の顔は浮かんでいるが、体に当たる部分はところどころが赤色で染まっている。常に出血は当たり前、腕や足はどこかがいつも折れている状態で治ればすぐにどこかを折る。

体はヨウキの体術や武器術の練習台にしたり、調合の練習で色々と新作を投与してみた。反応が一瞬で消えてしまうので、仕掛けた魔法陣を消して観察もしていた。

幸丸の新作機の試運転はわざわざ人体に向けてやる必要は無かったが、追跡機能を見るためとか理由を適当に付けて都市の周りの壁外で試すことになった。プルの拘束を外して、しばらく走らせた後にどれくらいの速度で追いつくか、行動不能にするのにかかる時間がどれくらいかを試した。


どちらかと言うと気が抜けてしまった俺の代わりにやっていた。俺が死にかけた原因ということもあり、心配した分もあって中々に苛烈だった。

普通なら死んでいるのだろうが、そうはならないのでいつまでも使用可能だ。おまけに精神的に狂うこともないので、受け答えがおかしくなることもない。おかしくしていたとしてもわざとなので気にする必要が無い。


ドラミラナに聞いた事だが、前世の世界でも大量虐殺をやっていたみたい。こっちの世界での所業の全てを知っているわけでもないドラミラナでも、遠慮の必要は無いのではと言っていたので容赦していない。


「ここまでとは思っていなかったわ」


多少顔色が悪いが、待遇が悪かったわけではないのは分かっている。やはり自分の技術を伝えることの楽しさは感じていたようで、1週間で表情は悲壮なものからかなり柔らかくなっていた。さっきまでは。


「ん~。それでもこいつからまだ悪意を感じるんだよね。逃げたら復讐してやるってくらいは考えてるんじゃないかな。そんな状態では逃がさないし、手を緩める必要はないよね」


一週間で心が折れるくらいなら、こちらが拍子抜けしてしまう。まだまだがんばってもらうつもりだ。


「俺が魔法陣を改悪して生命の維持だけで欠損は治さないようにって設定ができるまでは、少なくともこの状態かな」


オスカー様の肩に一緒に来た公爵家2人が手を置いていた。なんだよ、その悟った顔は。理由は分かるけど、今回の俺はほとんど手を出してないぞ。


「あと皆さんに聞いてみたいことがあったんだけどさ。ボクシングって知ってる?」


聞いたことが無いことが表情から見て分かる。ドラミラナだけが、引いた表情を見せている。


「拳で戦う格闘技なんだけどね。練習で使う道具があってさ。サンドバッグって言うんだ。彼にぴったりの役割でしょ」


結構良い笑顔だったと思うんだけど。こういうときに表情が一致しないのが不満です。

お読みいただきありがとうございました。

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