80わざとスタンピードを起こす
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プルのぬいぐるみは結局のところ、手持ちに材料が無かったので公爵家からもらいつつ作成した。俺が作った見本はケイトに取り上げられた。作成過程を見ていたメイドさんがプロに任せますので、と言ってそれ以降の作業は引き取ってくれた。
ぬいぐるみに関してはセリナ様が引き受けてくれるようだ。マキシ様に話していた内容をもう一度伝えて、あとはお任せすることにした。
こういったことのアイディアくらいならいくらでも出してよいなとは思いつつ、帰ろうとしたがもう少しぬいぐるみについて話を聞かせろと夕食まで引っ張られることになった。
夕食前にマキシ様が帰ってきて早速明日行うことで話を付けてきたと言われて感謝を伝えた。さすがに宿泊までは留まらず、祝福の朝亭に泊まった。
翌日、昼前には倉庫の前に集まっていた。一応出撃可能だった部隊を配置していると言われたが、来ているのはお馴染みとなったブレイムさんの隊だけだ。
以前の事件のあとで、出世まではしていないが真面目に勤めていることが評価されているそうだ。色々な公爵家に名前と顔を覚えられたことが原因だそうだ。婚約一歩手前くらいのお話もいただいているそうだ。表情が明るい。
幸せいっぱいの人を不幸にするわけにもいかないからな。本気でやるとしよう。と言ってもやることは調査と破壊だ。
地下に降りてまずは魔力の調査を幸丸が始める。外見を見ているだけだと和んでしまうだけだが、幸丸は表情があまり動かないのでぷよぷよと動いているのを見て和むだけだ。
「ご主人、緊張感無さすぎ」
ヨウキから言葉でプルからは体当たりで諭される。謝って再度気を引き締める。特に今はすることがないし、再度辺りを見回しつつ待機している。
騎士団のメンバーはキャラが濃い
「魔力パターンの採取を完了しました。解析はすぐに完了しますが、潜伏場所の特定については近くでない場合は時間がかかります。」
「ありがとう。了解だよ」
「念のためスタンピード魔法陣も分かる範囲で記録しといたんで、気になることあったら言うてください」
「わかった。ヨウキもありがとう。じゃあ、やりますか!」
「ご主人、あんまりはしゃぎ過ぎたらあかんからね!」
「マスター。ご武運を」
気合を入れて、破壊に乗り出すことにした。騎士団の人たちは地上へと避難してもらい、ヨウキはピアスへ、幸丸はコレクションハウスの中へ入った。この場にいるのは俺とプルだけだ。
「基本的には前回と同じで行くけど、プルは念のため奥と階段でも待機してくれ」
ヨウキから魔力線を遮ることで部屋の魔法陣から出現するとは言われた。ヨウキにとって嫌な記憶しかない場所だろうと住んでいた場所は壊させたくないし、階段から上を通って後ろに回られたくないので予防策を敷いておく。
前回と同じくすぐに出現するのだろうという予想だけ立てて、先に纏気だけ発動して線に触れる。魔法陣が紫色に光を発すると前よりも強い魔物たちが魔法陣から出現してくる。
まず弱いところでお馴染みのレッドスライム、体格が大きくなったホブゴブリン、野性味が増して牙も爪も鋭く大きいワイルドコボルド、四本腕全てにサーベルを持ったビッグスケルトン。体格が大きくなった上に太い棍棒を持ったオークリーダーは近くのゴブリンをまず配下に従えているようだ。
この分だと更に強い魔物が現れてもおかしくなさそうだ。これは思ったよりも危険そうだ。だが、基本戦法は変わらない。強めの回転をイメージして魔力弾丸を打ち出していく。
オークリーダーは肉壁を利用して近づいてくるが、プルにあっさりと撃退されている。他は現状はこれで問題なさそうだ。
「ご主人油断せんでくださいよ。最初は込めた魔力のカスで作られた魔物なんで。これでまだ弱い方ですからね!」
ヨウキから注意が飛ぶ。
「おそらく最初に込めた以外にも魔力を吸収していくように仕込んでたんでしょう。ワイよりも遥かに優れた技術です。というかワイが見たことのあるものよりも遥かに強力になってます!」
ということは以前よりも強力な個体が出てくることは確定のようだ。しかし、一人で抑え込むには魔力弾丸以外に手数が足りない。前回は5分程度で出現しなくなったが、今回はそれくらいでは終わらない。
徐々に強い個体が出現するようになってくるのだろう。一旦出現が止まった。そのタイミングで控えていたプル分裂体に魔石を一気に集めてもらう。集めたところでコレクションハウスの扉を開けて幸丸とプルで回収を行った。
片付けがもう少しで終わるというところで、魔法陣から現れてきたのはブラックオーガ10体とトロルコング3体、一つ目巨人が1体だった。
「これで終わりそう?」
「終わりやとは思いますけど、強さ的にはA~Bというところですからね。油断大敵ですよ」
「いけるいける。楽勝ではないかもしれないけど、人型鈍重タイプには負けないよ。これで打ち止めだよね」
「魔法陣の光も収まりましたから、最後でしょう」
「オッケー、了解ぃぃ!!」
闘魔纏身に切り替えて、剣を携えて飛び掛かっていく。ブラックオーガ2体をそれぞれ切り倒して始末すると、一斉に攻撃対象がこちらに向く。
ただ、出現したのは全てが巨体の魔物のため、振り上げた腕すらもお互いの邪魔になっている。笑い話である。
「悪いな。更に減らすよ!剣式三番!昇竜!」
屈んで状態から剣先を下から上へと半月を描くように振り上げる。斬撃が切っ先から伸びることで、目の前の一体だけでなく後ろに並んでいた2体も同じように切り裂いた。
「ラッキー。高威力で良かった。もう一つ試しだ!」
魔力を集中させて弾丸とは違う形をイメージする。かつてヤシタさんと競い合った魔力の形態変化だ。弾丸よりも一つずつが小さくて済むので、数を多く出現させることが出来る。
数を欲張りすぎて、時間がかかっていると、生きのこった魔物から攻撃を仕掛けられるが軽く躱していく。
「だから遊ぶなと!」
「今話しかけるな!」
ヨウキからの言葉に荒く返す。
「魔式一番!乱れ打ち!」
最終的に数十本ほど出現させた魔力の矢を全て魔物の顔面に向けて放つ。後ろに控えていた一つ目巨人はとトロルコング2体は腕で覆うことが出来たが、それ以外には目のところに刺さって視界を塞ぐことに成功する。
「おし!堅そうなやつでもちゃんと刺さる!」
成果に喜びながら目を塞がれてただ暴れるだけになった魔物に、遠距離から剣式一番飛鳥で止めを刺していく。闘魔纏身状態であればサクサク切れる。
ブラックオーガの全滅を全滅させ、トロルコング2体を倒し、最後のトロルコングの首を落としたところで、最後に残した一つ目巨人と向き合う。
「悪いね。もう少し広ければ思い切り戦えたんだろうけどね」
話しかけても言葉が帰って来ないことは分かっていたが、なんとなく声をかけてしまった。頭が通路の天井まであと少しで届くくらいしか無いのだ。
振り上げて叩き潰すという攻撃手段がとれない以上、薙ぎ払いくらいしか攻撃手段が無いことは分かっている。こういったデカい魔物は小回りの利く魔物と出てこないと脅威にならない。
スタンピード魔法陣から出てきたのが、ほとんど人型であることから設定が甘いのだろう。見せ場もなく倒されるのだからいっそ哀れだ。呼び出される召喚ならともかく、これは生み出された魔物である。経験もないため打開策も無い。
だが、命を刈り取るのだ。全力でかからなければ失礼というもの。まだ余裕のある魔力を確認して最後の攻撃に向かう。
一つ目巨人は他に選択肢がないので、薙ぎ払いで迎撃しようと振り回すが、縮地で後ろに飛び躱す。直後に前に飛び込む。
「剣式四番!乱れ桜!!」
一気に切り裂いて魔法陣から出てきた魔物を全滅させた。
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