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73また日常へ

また1か月が経過した。後片付けの方が時間がかかるとは良く言ったものだ。その後の話は特に山場も無く順調に終了となっている。

下手人はほぼプルが捕らえていたからね。あとは証拠が出るかどうかです。


ヤマイダレとの戦いのときに奥に寄ったのは、証拠の保存のためだ。書類か何かで残っているのであれば、自分の手の届くところにするはず。扉付近や左右の壁はザクザクに傷つけたが、奥には出来る限り被害が及ばないように気を付けた。

あの後に踏み込んだ憲兵の捜索から呪いの状態異常の魔導具を購入希望者リストや、誰に売りつけたのかなどが発見されたそうだ。同時に封印の施された書物に関しては中身が確認されないままエルンハート家に持ち込まれ俺が受け取っている。


これは誰が何と言おうとヨウキのものだ。彼が思うとおりにすれば良い。俺から聞くことは無い。


捕まえた者たちはこれからの捜査に使われるそうなので、一日だけ待ってもらってお渡しした。捜査の遅延となるようなことをすると、どういうことになるかをお話してある。体の怪我はサービスで治してあげた。嘘偽ることの無いようにだけお伝えしたので、きちんと尋問に答えてくれることだと思う。

具体的にはあの部屋にいた3人を実験台にして見せてあげた。代わりの立候補が出なかったから仕方ない。同じものを相手に丸一日はさすがに堪えるので、バリエーションをもたせるのが大変だった。おかげで久方ぶりに色々と技の練習になった。


どうせこの世にとっての害悪だし、きちんと体は元に戻せるのだから問題は無い。全てが明るみになればまた引き取りたいのだが、ルウネのような長期の引き取りが可能な宛てが無いので、そのまま国にお願いすることになるかもしれない。

なんとかがんばって実験体として使うか、研究テーマをもう少し健全にするかの方向転換が迫られるところだ。技術的に難しいって言ってたからヨウキ次第だ。


そういえば、サンドバ家はほぼ壊滅した。家をぶっ壊したこともあるが、当主とその補佐、上から数えて1番および2番が行方不明だそうだ。序列は功績で入れ替わっていくものらしい。

ある程度の功績があれば家から出ても手助けはしてくれるそうだ。といっても善行よりも悪行の方での功績だが。そして1番はずっと同じでサンドバ家を確立させた人物、2番は魔物を生み出す技術を確立させた人物だそうだ。


今回の倉庫でもスタンピードと言えるくらいに魔物は発生したし、過去にはユーシル村でも魔物が異様に発生したことがある。やっぱりここに原因があるのか。

それでも捕らえた者たちの口から情報は提供されているので、ある程度までは追うことが出来るだろう。それに、国の上層部には俺の存在と出来ることをマキシ様から報告してもらっている。

もし、やつらに組するなら王国を敵に回してでも一族全てを根絶やしにするというメッセージ付きで。疑問に思うなら、元騎士団団長のアレックス・フォン・ビーガスペード殿を見てもらうようにお願いした。

体中が無毛となった上に大した情報も無く、早々に精神が壊れてしまった。痛みに耐える訓練は貴族様は行っていないようだ。剣術や兵法に関しては学んだんだろうけど、ぬるいなぁ。その辺に関してはじいちゃんもばあちゃんもゴザルさんも手加減してくれなかったからなぁ。


罪状を示しても納得しないなら呼んでほしいと言ってある。その話し合いは現在城で行われている。結果待ちの状態だ。

俺はケイトの鍛錬の日、プルは色々、ヨウキは素材の解体終了予定日だ。


「先生!回復魔法が発動したような感じがあります!疲れが消えていきます!」

「ええ?もう?魔力が扱えるようになってから出来るようになるまでは早すぎない?」

「でも、本当なんです。少しずつですけど!かけてみましょうか?」

「ちょっと待って。全然疲れてないから」


そう言って。ナイフで左手人差し指の先を切る。血が少しにじむ程度だ。


「わざわざ怪我なんてしないでくださいよ!じゃあすぐに治療します!」


ケイトは患部に両手をかざすと目を閉じて集中する。しばらく待つと手から魔力が放出されて傷がふさがる。


「終わったみたいだぞ」

「どうですか!?」


じっと人差し指を見ると、傷はしっかりと塞がっている。問題無い。


「成功してるな。俺よりも早いよ。魔力の扱いが下手すぎただけで素質はあったんだろうな~」

「それもあるでしょうけど、私もがんばりましたよ!先生に教えてもらった細胞や体のつくりも勉強して覚えましたし!」


こちらの世界に完全に当てはまらないかもしれないと前置きをした上で、前世の理科の話を覚えている限り伝えた。高校内容以上はさすがに忘れたが、中学生内容くらいまでならなんとなく覚えている。そこまではまじめに勉強してたし。

その知識でも、こちらの学術内容と当てはまる部分が多かったので、ケイトだけでなく興味のある学者を呼んでの講演会になった。

今ではケイトの鍛錬とは別に日程を設定して話をすることにされている。


ケイトだけなら誤魔化せたかもしれないが、エルンハート家の人たちには前世の記憶持ちということは話してしまっている。ケイトの指導中の話を聞かれてしまい、知識をどこで身に付けたのかをツッコまれてしまったのだ。

下兄様ことエルンハート家次男のカミール様の才能が分析官というもので、きっかけさえあればあらゆることを分析できるトンデモ才能にやられてしまった。

学問の方向にばかり使っていたが、尋問にも発揮するとは思っていなかったらしく、思わぬ使い方に慌てたのは俺だけではないのだが。


そんなわけで、まずエルンハート家の人たち向けに講義をし、その上で学者たちへの講演会となっている。学者たちへは悪いが質疑応答は無しだ。ボロが出る。

よって、ケイトの指導3日は変わらないが、あとの2日も講義や講演会で潰れてしまい、宿こそ変えていないがほとんど冒険者らしいことが出来ていない。


ケイトがこうして回復魔法を発現できるようになったのなら良いとも言えるが。つまり盗賊のアジトへはまだ行っていないのだ。これがキリの良いところになるのではないだろうか。


「先生、冒険者の活動が出来てませんよね。申し訳ありません、私のせいで」

「出来てないけど、最低限こなしたいことはやっているから構わないよ」

「でも先生ほどの技量でE級はおかしくないですか?」

「それは年齢の問題だってさ。目立ちたくないなら正規で上がるのは少しずつありえそうな年齢になってからにした方が良いって言われた」

「今更ですか!?」


思っていたよりも大きい反応を返されてしまって、こちらが驚いてしまう。どの部分が今更だろうか。言うのが遅いってことかな。


「まあまあ気にするなよ。そろそろ昼の時間だし、休憩にしよう。昼ご飯はいつも通りここで良いよな。もらってくるぞ」

「は、はい」


返事を確認して、屋敷へと向かう。ケイトの次の段階に向けて考えてみる。ひたすら鍛えていくしかないよな。それなら回復魔法使えるようになったんだし、一段落ついたってことで、まとまったお休みもらって行ってみようかなぁ。


考え事をしていたのでケイトが何か他にも言っていたような気がしたが風が吹いて聞こえなかった。


【ケイトの呟き】


先生、目立ってないつもりだったんでしょうか。我がエルンハート家の研究を大きく発展させる知識と技術、実際には作れなくともどういったものがあれば研究が進めやすいのかという具体例は革命と言えます。

顕微鏡、細胞やウイルスといった知識は医術の発展には欠かせません。それだけでもとんでもないのに。あの強さと私を指導しての成果までの時間の早さ。何らかのスキルが私に補正を加えているとしか思えません。


それにお父様が言っていました。本日の王城での話し合いについて。王家や四大公爵家の当主やその跡継ぎに対して、宣戦布告ととられかねないことを告げてくると。

命の危険があるかもしれないのに、エルンハート家はクーロイ先生の味方につくと仰って、本日登城されました。私の恩人であることも関係ありますが、一番は滅ぼすという点において先生はおそらく可能だから、だそうです。


それなのに、目立ちたくない!?


感覚がずれているとしか思えません。なんと言いましょうか、こちらが慣れるしかなさそうです…。

お読みいただきありがとうございました。

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