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7スライムは仲間になりたそうだ

今回の題名って怒られないですよね

「はぁ…????」


魔物が魔物を倒す。話は聞いたことがあるが、初めて見た魔物でそんなことが起こるとは思っていなかった。


「何なんだ?この青スライム。味方してくれるのか?」


見ている間にもう1匹も包み込んで食べてしまった。残った赤スライムは先程のクーロイと同じように、足が竦んだのか動けないでいる。

野生において、動けないのはそれだけで致命傷のはずだ。間もなく青スライムに食べられて3匹とも消えてしまった。


「いや、逃げよう。敵ではないと決まったわけじゃない」


言葉が通じるとは限らないのだ。敵の敵は味方という言葉があっても、確認する言葉が通じなければ意味がない。

振り返ろうと動いた瞬間に青色が目の端に映る。また油断したことに気づき、舌打ちしてしまう。


最初の位置に青スライムが戻ってきた。動いた反動かプルンとしている。


(この青スライム速くないか!?)


まだ森の中に赤スライムが2匹はいる。前ばかりは見ていられない。ただ、赤スライムが来たところで青スライムが食べてくれるだろう。それはこの青スライムを抜けることが赤スライムよりも困難であるということを示している。


(大声で叫ぶか?誰か気づいてくれるかも。でもその瞬間に襲ってくるかもしれない)


必死で考えるが、手段が思いつかない。

そして睨みあうこと10秒。違和感を覚えた。


「敵意を…感じない?」


あの狩人ごっこの中で身に付いた感覚が訴えてくる。狙われている感覚を感じないことにクーロイは戸惑いを感じた。

さっきは赤スライムもいたので気づかなかった。この青スライムにはクーロイを襲ってやるという敵意を放っていないのだ。


気づくと見方が変わってくる。プルプルの動きをなんとなく感じるのだ。恐る恐るだが、話しかけてみる。


「お前さ、もしかしてだけどさ」


プルプルプルプル。激しく首(?)を振っている。


「お、俺の仲間になりたいのか?」


プルプルプルプル!!


「マジかよ」


へにょっと曲がるってプルプル。


「ダメなのって?いやダメなわけじゃないけど」


プルプル!


「じゃあよろしく!って?俺が決めて良いのかな。じいちゃんとばあちゃんに聞いてみないと分からないよ」


胸を張るようにプルプル。


「いや許してもらえる自信はあると言えばあるけどさ」


プルプル。


「まあ命の恩人(?)だしな。聞くだけ聞くよ。…………なんで言葉分かるの?」

会話をしている事実に気づくと精神的に何かが削られた気がする。


触手が伸びてきて指のようにチッチッチとプルプル。


「気になるって。って何なんだよ…」


会話が成立することを考えるのは気にしないことにした。


これで一人で旅に出なくて良いのではないかと思うと気づくとこれはこれで良かったのかもしれないともクーロイは思った。

これから付き合いの長くなりそうな新しい友人がプルプルしていたのが微笑ましかった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


結局もめた。いくら何でも魔物だ。敵意を感じずとも村の中で暮らすことなど認められるはずがない。それにまだ赤スライムが森にいる。


解決は牙丸の一言で済んだ。


「赤スライムを処理した後に俺たち夫婦がこいつと一緒に出ていく」


慌てた。村の大人たちは慌てた。村最強と村一番の薬師がいなくなったら何かあったときに困る。

特に村長は村の防護やまとまりとしても、私的感情でいうと開拓当初からの友人がいなくなるのは避けたい。


そこからは変化した。「始末しろ」が「行かないで」に変わったときはクーロイは安心した。


途中でクロエミがクーロイを連れて荷物をまとめて来たのも拍車をかけた。荷物を背負って、クーロイの手を繋いで


「あなた、行きますよ」


と来たら、真剣に引き留められた。


村の大人たちは語った。『あれは確実に本気だった』

クロエミさんは語った。『交渉をするときは、本気度を相手に悟らせることが大事なのよ』

村長は語った。『村起こしをして三十年。意表を突かれた出来事はまだあるけどさ。これはひどくないか』


最終的には残っていた赤スライムの狩りを見せることで納得させた。何をさせることもなく吸収する様を見ると一様に驚いたが認めてくれた。

ただ、大人たちに聞いても青スライムと話が通じる理由は分からなかった。


「まあ良いか。命の恩人と一緒にいることが出来るなら別に良いや」


プルプル。


「まあ気にするなよ。そういえば何食べるとか決まってるのか?」


プルプル。


「魔石が一番好きなのか。じゃあ狩りをしないといけないな」


話を横で聞いていた牙丸の顔をクーロイが見る。一応青スライムも視線を送る。


「まだ狩りはダメだ」

「やっぱりね」

「ただ、身を守る術はもう少し教えていこう」

「っ! 分かった!」


認めてもらった。スライムに囲まれたときは死ぬのを覚悟したが、結局はプラスになったのでないかと思った。次の一言で幸せ気分から急降下させられる。


「鍛錬を一段階引き上げるぞ」

「え!?」

「スライムくらい仕留められんようでは困る」

「そ、そうかもしれないけど」

「いつまでも守ってもらえると思うな」

「ぐっ。でも4歳だと早くない?」

「イヤなら構わん」


そう言われると何も言えなくなる。命のお礼は命で返したい。そう言われるとやるしかなくなる。更に逆側からも声がくる。


「魔法もきちんと使いこなせるようになってもらわないといけないわね」

「はっ!?」

「まだはやいとは思っていたけど、必要そうなら覚えてもらいましょうか。魔力の扱いがうまくなれば武術にも活用できますし」

「ちょっ!?」


結局周りを囲まれたとき、切り抜ける実力を身に付けることになった。


「今回は助けてくれないのかよ、オマエ」


プルプル。


あと、名前を付けた。こいつの名前はプルにした。


プルー。


俺はどうせ単純だよ。

お読みいただきありがとうございました。

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