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68ヨウキがリッチになった理由

【クーロイ視点】


公爵家の門を出てから路地裏で水筒から水を飲む動作をしながら、陰でコレクションハウスからヨウキと分裂プルを出した。ヨウキはピアスに入り、分裂プルは本体に合流した。


「急ぎの仕事が入ったから、移動しながらでも良い?」

「ええ、構いまセン。長くなる話はまた今度にシマス。差し当たってワイのことを正確に知ってもらうためデス」


心当たりが無いわけでは無いが、このタイミングで何かは分からない。


「実は…、記憶が無い言うてたのは、嘘デス」

「あぁ、そのこと。それなら分かってるよ」


そう言うと黙ってしまった。もう一度呼んでみると、驚いた声色が聞こえてくる。


「気づいてはったんですカ!?ナンデ?」

「記憶無いっていう割には、魔法陣とか罠のこととか知ってたし。記憶無いなら解体も出来ないと思うよ。ちょっと無理があったねぇ。騙そうって感じはしなかったから、見張る意味も込めて連れてきてたんだけどさ」

「最初っからですヤン。恐れ入るワ、ホンマニ」

「それとリッチってなろうと思ってなるものじゃないよね。死ぬ前に死にきれない妄執とも呼べるものがあって、現世に留まるものだからさ。記憶が無いってことは執着するものが無いのに、現世に留まるっておかしいでしょう?」

「なんや、それならちゃんと話しといたら良かったデスネ」


せっかく気ぃ使ったのに…、とか言っている声も聞こえているが。しかし。


「記憶がありますってだけじゃ、話を急ぐ理由にならないよね。何かあったの?」

「そうですね。ご主人、コレクションハウスの中にあった、魔力の放出を遮る巾着袋はあれはどこで手に入れたものですカ?」

「巾着袋?あれは…」


そんなのあったかなと思ったが、プルが思い出させてくれた。


「あぁ、ケイトが持ってたんだったな。どさくさに紛れて俺が持ってたのか。返した方が良いかな」

「返す返さんは、ご主人とお嬢で相談してくだサイ。あれ、作ったんワイデス」

「え?作った人だったんだ」

「はい。そんでワイが死んでリッチになったことで、込めていた魔力が狂ってしまったんデショウ。ご主人の話にあった混乱の状態異常がほんの少しだけ付与されたんやと思いマス」


さすがに話が飛び過ぎて、先を急ぐよりも聞くことに気を遣うことにした。普通に歩くペースへと変える。


「いきなりで驚きますヨネ。ワイがしたんは理論を組み立てたことデス。途中までは付与魔法を乗せるための術式作製でシタ。それだけでも革新的技術ですカラ。あの巾着袋は最後に作ったもんデスネ。あれは特別魔力が必要でしたから、おかしなったんはあれだけやと思いマス」

「ケイトも少し混乱の状態異常が出てたのか。それは気づかなかった。とりあえず、しばらくは聞きに徹する。話したいことを話してよ」


「ありがとうございマス。巾着袋作った後で、あの地下に閉じ込められました。そこからは付与魔法というよりは呪いを定着させるために術式の書き換えをさせられマシタ。呪いだろうと関係なしに積極的に取り組むやつがおって、そいつがサンドバ家がバックについてるって自慢するから誰も逆らえんかったんデス。術式の誤魔化しもできずに完成させてしまいまシタ。」


「呪いも安定して定着させられるようになったときに、これはやっぱり広めたらあかん技術やと思い直してやめるように言うたんデス。そしたら、別の日に襲い掛かって来られまシタ。必死で抵抗もしまシタ。けど多勢に無勢、殺されました。そのあとはよう分かりまセン。ただ、心残りやったんです。自分の作ったもんが人様に迷惑をかけるってコトガ。」


「地下でしたから、時間の経過なんて分かりません。この体でも魔力線に触れたらスタンピードが起こるんで、簡単には動かれヘンシ。というかあの部屋から出られへんはずやったんですケドネ。ご主人がなんかしたんですカネ」


「時間もあんまり経過してないことにも驚きマシタ。人と意思疎通できるようになるにはもっと時間かかると思ってタンデ。ご主人来るまではもっと低級の存在やったはずなんデス。…それはイイトシテ。それで、厚かましいお願いなんですケド。」


「呪いの定着術式とか、付けられた品とか、この世から消滅させてくれませんカネ。そんで、今回の件が済んだら、出来たらですケドネ。迷惑かけた人らに謝罪して回りたいんデス。幸いワイはリッチになりましタ。気の済むまで叩き壊してもらっても構わない体になったんデス」


「巾着袋の具合見て、そんなに時間経ってないって分かったんデス。そうしたらまだあきらめんでもええんちゃうかって思いマシテ。ご主人に言わんと腰抜けな気ぃしたから、今言わしてもらいマシタ」


終始暗いトーンで話していたが、終わったのかな。


「それで全部言った?」

「ハイ」

「今回の件で一番大きな事件はオステンタさんの事件みたいだよ。ちなみにヨウキに会う前に店巡りした以外に、事件の捜査確認も一緒にしたけど特には見当たらなかったよ。マキシ様もまだ油断はできないとは言ってたけどね」

「まだ大きな被害は出てなかったいうことデスネ。心残りが1つ無くなった気がしマス」


謝るために化けて出てきたってのはすごい根性だと思う。


「終わったらオステンタさんのところに一緒に行こう。拾い主としては一緒に下げる頭くらいはあるよ」

「ご主人…、ホンマニ申し訳ないデス」

「人は見かけに寄らないを体現してるね」

「恐ろしい姿ですからネ」


少し考えて、聞いてみたいことを聞くことにした。


「ねぇ。呪いではなくて付与魔法はまだ実現できてないの?」

「研究次第ですネ。今はまだ何とも言えまセン」

「ふ~ん。じゃあもう1つ。実現可能な呪いって何があったの?」


なぜそんなことを聞くのか、もしかして話してはいけないことを話したのではと迷いながらも応えてくれる。


「実現可能…デスカ?他の連中も混乱に魅了なら出来てまシタ。人の精神にはたらきかけるものから優先されてたんで。ワイは全てに対応するように定着術式を作ってたんで、研究すれば毒と麻痺、石化に鈍化…。凡そ魔物が起こす状態異常は出来ます」

「ほほぅ。よし、決まりだ。ヨウキ、君は俺と一緒に商売をしよう。儲かるぞ」

「ダメですよ!ご主人!呪いは人にとって手を出したらアカンもんなんデス!」

「よく聞け!あのな…」


以前に考えていた使い方に加えて、今回の件を受けて思いついたことを話してみる。


「それは…使い方としてどうかとは思いますが、できるとは思います。ご主人が思いつくことはネジが吹き飛んでますね」

「ん~?酒を造るときに発酵っていうだろ?あれと、モノが腐るときの腐敗は同じなんだよ。役に立ったら発酵、立たないなら腐敗。見る立場によって変わるってやつさ」

「ハ…」


顔を見なくても鳩が豆鉄砲を食らった顔をしているのが分かる。唖然ってやつだね。しばらくしら爆笑が続いている。本当に明るいリッチだわ。笑いが治まってきたくらいで問いかける。


「どうしたのさ」

「ハハッ。あ~、ワロタ。いや、呪いが役に立つこともあり得るんですカネ」

「時間はかかるし、スキルがあるからこそだけどな。俺の前世でもスキルは無かったけど似たようなものはあったよ」

「ありがとうございマス。誠心誠意使えさせていただきマス。御身の前で誓えず申し訳ございまセン」

「こんな町中で出てきたらものすごいことになるよ。また今度ね」

「ハイ。でもご主人、手に大人抱えてるからみんな避けてますヨ」


話している間に目的地に着いた。サンドバ家の邸宅の前だ。名目は無粋な尾行者の返却と武力での苦情の訴えだ。


「改めてヤル気出て来たよ」

「物騒な字が当たってませんカ?」

「正解。それにお礼状にヤル気になってるのがいるでしょ?」

「プルの兄貴まで」

「さ~て、掃除を始めましょうか」

お読みいただきありがとうございました。

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