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66モノづくりには最高の環境

同行者ができたところで、この部屋にはもう特に他に何もなさそうだ。出るとしよう。


「ご主人、扉から出えへんノ?」

「扉を下手に開けるとスタンピードみたいな状態になったんだよ」


地上の倉庫で起きたことを説明する。骸骨でもリッチになると固さが変わるのか表情が分かる。今の表情は何かおかしいぞって顔をしている。


「ワイは記憶が怪しいって言うたから、信じられんかもしれんけどナ。たぶんこっちから見て外開きに開けて、ご主人が屈んで通れば大丈夫ヤデ。その扉の魔力の線見えへんカ?」

「もう一度目を凝らして見るが、何も見えない」

「ワイしか見えんのかナ。ご主人の胸から腹あたりまでの太さで通ってるんヤ。これを阻害したらなんか起こるんやろうナ。何が起こるかまではワイも分からんデ」


特別なスキルが必要なのだと判断して、外に向けて声をかける。


「エルンストさん!聞こえますか!」

「クーロイ君ですか?やはり聞こえていた話し声は君ですね」

「すいません。抜け道を見つけたのでそこから入り込んでいました。こちらから扉を開けるので離れてもらって良いですか?」

「開けても大丈夫なんですか?」


不安が声に現れている。地上では物量で押し切ったけど、地下だと方向が一つだから、何か間違えば一瞬で押しつぶされてしまうものな。


「こちらにあるものは粗方回収してあります。こちらから押して開ければ大丈夫そうだという意見もあるので」

「そうですか。それなら……意見って誰のですか?」

「細かい話は扉を開けてからするので、一旦離れてもらって良いですか?」


見てもらわないと信じてもらえないと思うことが起こりましたんで。


「ご主人って結構偉い人なんカ?そのナリで年上に意見通すなんてやるナァ」


俺がずれてるのか?ヨウキがずれてるのか?当事者では判断が付かないな。とりあえず高さを確認して扉を屈んで開ける。


ズズズと音を立てながら開けた扉はスタンピードを起こすことも無く開くことが出来た。


扉から出て説明を始める前に、耳からヨウキが出てきてしまったため、特大の悲鳴が上がった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「エルンストさんは驚かないんですね」

「驚いてますよ。クーロイ君が何をしても驚かないでいようと決めただけですけどね」

「人外認定してませんか?」

「何かあるんだろうなとは思っていますよ。聞きませんけどね」


そうしてもらえる方がありがたい。簡単には話せないことが多すぎる。

一緒にいた魔法使いさんが悲鳴を上げて気を失ってしまったため、二人で入り口の両側からヨウキにしか見えない魔力線に触れないように、木の板で保護している。

前後から触れないように壁から覆った上で、なぜこういったカバーをしているか、これを破ればどうなるかを書いた看板を立てる。


「ここまでやって私の名前もここに書いておきます。正式に冒険者ギルドからも発表しますので、それで触る奴はいないでしょう。触ったら本当に死にます」

「いつまでも残しておくわけにはいかないので、この件が終われば俺が発動させて効果を消しておきますよ」

「もうこの際驚きはしませんが、危険な真似はしないでくださいね」


封鎖が終わったので、魔法使いさんをエルンストさんが担いで元来た道を戻っていく。話題はヨウキの扱いだ。


「まずは魔物契約を登録しましょう。帰ったら応接室に案内しますから、私が手続します。ギルドマスターにも報告するのは良いですね?あとは、町中では決して姿を見せないこと。魔物契約の証があっても攻撃される可能性が高いです」

「「わかりました」」


俺とヨウキが同時に返事をする。


「こうやって意思疎通が出来る時点でただのリッチでも無さそうなんですけどね。普通は精神に異常をきたしてますから」

「ん~、まあ細かいことはええんチャウ?シュッとした顔がいがんでるデ」

「いがんでる?」

「あ~、ゆがんでるっていう方が伝わるんかナ」


エルンストさんとも普通に話をしている。地上に上がる階段が見えてきた。


「ヨウキのことは反響が広がりかねませんから、我々だけの秘密です。扉の魔力線に関してはクーロイ君が分かったということにしてください」

「バレたりしませんかね?」

「クーロイ君ですから問題ないでしょう」


なんかディスられた気がするぞ。騎士隊の大きな声が聞こえてきたので話はここで終わりだ。

地下道での話は全てエルンストさんが騎士隊を始め、全体への説明を変わってくれた。スタンピードが起こりかねないトラップがあるので、解除するまでは騎士隊が入り口を警備することになった。

魔力線の詳しい話はしなかったが、俺が見破ったという話は歓声は上がりつつも、誰も疑っていなかった。


いかん。変に目立っているぞ。ここまで目立つつもりは無かったのに。今のところ実害も無いから良しとするか。いざとなったら逃げよう。


そんなことがありながら王都に向けての帰り道だ。扱いに困ったのが回収してきた本の扱いだ。ピアスからも様子を伺うことが出来るので、付けたままでは内容の確認が出来ない。


「回収してきた本の相談をしている間は、見えないようにピアスを外しておいても良いか?」

「構わへんデ」


思ったよりもあっさりと言ってきた返事に少し戸惑う。


「気ィ使ってくれてるんヤロ。記憶が戻る前に少しゆっくりしたいしナ」

「分かった。話をするときはピアスを置いていくことになるけど勝手な行動はしないでくれよ」

「プルの兄貴に誓ってせんよ」

「そのプルへの配慮はなんだよ」

「ん?ワイもなんや、わからんナ」


帰りは一人で採取しながら走ると言って、冒険者や一旦帰る組になった騎士隊などの集団からもお互いが見える範囲でついて行っている。独り言を言っているように見えるが、その声も聞こえない距離なので問題無いだろう。


「それよりご主人。ご主人がその本の内容を確認してる間にやりたいことあるんやけド」

「何?やりたいこと?」

「そうヤ。ワイ何となくやけど、モノづくりに興味があった気がするんヤ。採取している草とか果実見てるとポーションやら薬やらの調合レシピを思い出してる気がスル」

「待ち時間の間にやりたいのか。記憶が変に戻ったりしないか?」


記憶戻らなくても良いっていう割には、この行動は積極的だな。


「ん~。戻ったら戻ったでその時ヤ。それまでは好きにやらしてくれんカ?」

「ポーションが自前で作成できるのはありがたいしな。調合の道具とか揃えようか」

「最初は簡単なものでエエデ。専用の道具とか揃えだしたらキリがないからナ。あ~、好きなものを好きなように作れることはなんか嬉しいデ~」


楽観的な返事をするかと思えば、嬉しいという感情もストレートに返してくる。変わったリッチがついてくるようになったものだ。


「専門的な道具も揃えたいんだよな?」

「じゃあ、ゆくゆくにはなるけど、一部屋専用のものを作ってあげるよ」

「一部屋?どういうコトヤ?」

「それは宿に戻ってから見せてあげるよ」


宿に帰ってからコレクションハウスに入らせてみたら、とんでもない能力であることに驚きを示していた。

よく考えれば木材が多いからと一部屋使っていたが、素材部屋と一まとめにすれば空き部屋を増やせるので移動させることにした。これで、食材と素材と風呂部屋と空き部屋だ。


空き部屋はヨウキの作成部屋したので、そこに道具を購入すれば置いていくことになった。感謝の印として、今まで狩っただけで放置していた魔物の死骸を解体から始めることになった。


「使い魔というよりも人手として働くことにするワ。こんなエエ物件は先に家賃払わんとアカンデ。お安い御用ヤ」


本棚には布をかぶせて背表紙も見えないようにして、触らないことで確認した。

ヨウキはしばらく解体作業をするそうだが、まずやりたいと言っていた調合や皮や毛の加工に使う道具を集めて渡しておいた。

売っている場所は、王都の店回りをしていたときに見つけていたので優良店から購入した。ケイトの鍛錬でもらっているお金が貯まるばかりで使えていなかったので良い消費だった。


「俺も少し出来るから、詳しいなら教えてくれな」

「ワイもたぶん久々やから自信は無いナ。疲れへんから時間関係なく行うけど、しばらく時間かかると思うデ。ようもこんなにため込んだもんやデ」

「いや~。お金には困ってなかったけど、もったいないと思って回収してたから」


見立てでは一か月解体に専念しても終わらないだろうとのこと。

ヨウキだけがコレクションハウスにいるときの時間経過は俺に都合の良いようになっていた。実験の結果で言うと素材は劣化しないが、時間は経過しているようだった。

俺がコレクションハウスから出て、ヨウキは中にいるとお互い時間が経過していることは感じるが、ヨウキの目の前にある素材は劣化しない。新鮮なまま素材の解体や加工が行えるようだ。


「モノづくりには最高の環境とちゃうやろカ」


ヨウキはそう言っているが、俺が同じ素材部屋にいると時間経過は起こる。ヨウキは魔物だがアンデッドで死んでいるからバグっているのかもしれない。

創造神様からは特に何も言われないから大丈夫なのだろう。都合の良い状態を受け入れて行うこととさせてもらおう。


戻ってから2日は状況を整えることに費やした。エルンストさんからも今回の件を必要なところに報告するからと言われていた。回収した本は帰ってきた当日にエルンストさんに渡している。

それが終わったと連絡が来たので、回収してきた本の中身を教えてもらうことになった。

お読みいただきありがとうございました。

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