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61かわいがる孫の扱いと同じですか

「声かけたのに、イマイチ繋がりが良くなかったからさ」

「あれは創造神様だったんですね」

「がんばるって決めてから色々やってくれたよね。世界樹のところで魔物を多めに倒してくれたり、でも僕のリクエストである笑顔も増やしてくれた。だからご褒美をあげようと思ってね」

「わざわざありがとうございます。でもあんまり特別待遇され過ぎても、公開できなくて辛くなるんですけど」

「そんなことを言ってしまうのかい?入りたいんだろう?お、ふ、ろ」

「なっ!?」


この創造神、ちゃんと仕事しているのか?俺のピンポイントを狙ってきやがる。


「ちゃんとしているからテンションも普通だろう?笑顔を見て癒されているよ」


うん、まあなら良かったかな。


「世界全体で見たらまだまだだけどね。たかが1つの国の都で少し活動しただけだから」

「まだまだこれからがんばっていくよ。方針が間違っていないことが分かっただけでも良かった」

「そうだねぇ。今日あげようと思ったのは、他の神様からルウネちゃんやフーちゃんからも感謝が届いたって聞いたからね」

「ルウネは分かるけど、フーちゃんって誰?」


ルウネも律儀に神様と話というか報告をしているんだな。というか、そんな名前の人とは会った覚えがないぞ。フーズさん?


「フーちゃんはね、今嵐竜王をしている竜だよ。名前の由来は、元は風竜だったから。長い時間をかけて存在進化したけど呼び方はそのままだね」

「会った覚えはあるけど出来たら忘れたい思い出!」

「人族で出会うとびっくりするんだね」

「当たり前ですよ。完全に死んだと思いましたよ」


思い出しただけで体温が下がるほどの恐怖を思い出す。世界の理を支える存在とちっぽけな一つの生命の違いを感じた経験だった。協力関係になっていくのだとは思うけど、気づかれずに殺される可能性もあると思い知らされた一件だった。


「自分の子どもを人族でも割と生命力の高そうなのに預けられて良かったって言ってたらしいよ。」

「あ、喜んでくれてはいるんですね」

「贈り物の相談をされたらしいけど、人族の価値観が分からなくて、珍しいと思うものをあげたらって言ったらしいね」

「嵐竜王が珍しいって思うもの!?」


もう一回会うことが確定しているだけでも怖いと思ってるのに、何を渡されてしまうの?


「子どもを託したんだからそれくらいするのは普通でしょ?」

「なんでそこだけ一般感覚を持ってるんですかね」


無理矢理納得させられた。ルウネも創造神様とは違うみたいだけど神様と繋がりがあったのか。


「というか、もらい過ぎではないですかね。何かもらわないといけないんですか?」

「ん~。感覚的にはがんばってる孫に親戚一同がお小遣いをあげてる気分かな?」

「だから!なんで!そこだけ一般感覚!?っていうか俺は孫ですか?」

「いや~、今までアホほどがんばっていたところに、ほんの少しだけでも癒しをくれた生物への感謝だよね。他の神もなんか和んだって言ってたよ。黒髪黒目の少年でスライムを連れている人族はいきなり襲わないようにって連絡が回ってるよ。ビビらせたら頼み事も聞いてくれるって話もセットで」

「それは都合の良いパシリ扱いですね」


まだ何かやらされるかもしれないらしい。じゃあ遠慮なくもらっておいた方が良さそうだ。


「何くれるんですか?」

「とりあえずはコレクションルームからコレクションハウスにバージョンアップだね。これで浴室を決めて持ち込めばいつでもお風呂に入れるし、キチンと扉を閉めておけば素材の劣化も防げるよ」

「つまり、コレクションルームがたくさんあるって感じですか?」

「そんなイメージだね。玄関から入る感じにしてあるから、部屋の中身はコレクションブックで仕分けてよ。食材と木と素材でとりあえず3部屋使ってるから。あと1部屋余ってるよ。部屋を増やしたかったら魔石を供給してね。保存してあった分を使ってバージョンアップしてるからさ」


聞き捨てならないことを言ってる。


「勝手に使ったんですか?」

「うん。お年玉を勝手に使った親の気分だね」

「悪いと思ってます?使われた子どもは最悪だと思ってますよ」

「あれ?しない方が良かった?」

「いえ。これはありがとうございます」


しかし、怒るものがいた。


「おっと、魔石を勝手に使ったことを怒っているのかい。プルくん」

「えっ、プルいるの!?」


プルが赤くなって怒っていた。プルからしたら大好物だものな。


「仕方ないじゃないか。クーロイの希望を考えるとこうなるんだ。それに魔石なんてすぐに確保してくれるよ。プルも協力すればすぐさ」


プルだまされるな。今の言葉に悪いなと思っている言葉は入っていないぞ。余計なことは言うなと、チラッと目線だけ来た。自分は心を読んでるのにね。

しかし、感性が子どもに近いプルは気づかなかった。明日魔物狩りに専念して魔石の確保を行うことにしよう。俺ばかりが食材を確保していても仕方ないしな。魔牛がいたらうれしいな。


「あと聞いておきたいことがあったんだけど」

「何でしょうか」

「フーちゃんの卵を持ってた子に対しての態度が変わったよね。あれはどんな心境の変化だい?」

「あ~。それですか」


自分でも言葉にまとめるのは初めてだな。


「何となくですけどね。最初は羨ましくて気に食わなかったんですよ」

「ほうほう」

「第一印象は最悪です。自分のために卵を盗んだ奴だと思ってました。でも、ご両親とか従者の方に話を聞いたら、苦しかった行動の発露だったのかなと思えたんです」


頷いて話の先を促される。聞いてますよってことだけは分かる。


「前世の俺が覚えている範囲で言えば苦しかった時に助けてくれる人はいませんでした。いや、いたかもしれないけど気づかなかった。でも、ケイトは目に見えて周りにいた。それは何か体の中から掻き毟るほどの嫉妬を覚えたのは確かです。それで当たりが厳しかったのもあるでしょうね」


どこからか出してきた急須で茶を入れて、茶碗を目の前のちゃぶ台に置かれた。緑茶っぽい。熱そうなので、まだ置いておこう。


「正直、笑って引き受けましたけど滅茶苦茶に怒ってやろうと思ってました。叱るではなく。でももう一度出会った時に感謝と謝罪がきちんと出来た。殺意を向けた俺に向けてきた視線は自分のことを受け止めた人の視線でした。精神年齢で負けてるかなって思ったんです。そうしたら許さない俺が幼いなって。この子を鍛えることで俺も精神的に大人になろうと考えたんです」


「それで見てるうちに許した?」


「ま、そうなりますね。3か月も継続的に指導していれば分かります」


「わかった。聞きたいことは聞けたよ」


自分の分のお茶をぐいっと飲みきった創造神様は満足そうなかおをしている。


「あとねぇ。コレクションハウスにしたのはルウネちゃんとフーちゃんの分ね。他の神も含めて和んだ分はこれあげるよ」


飲める温度だったお茶を頂いていたら、また光の塊が創造神の手から飛んできて体に吸収される。


「何を頂いたのでしょうか?」

「飛翔ってスキルをあげたよ。最初はMPの消費が激しいから少しずつ慣らしていってよ」

「空を飛ぶんですか?それって凄いスキルなんでは?」

「そうかもね?移動は便利になるよ」


そう話していると創造神様の姿が薄くなっていく。


「あ、時間だね。バイバ~イ。…………あ、それとねぇ」


待って!扱いに難しいものを渡された気がするから!最後の一言もすごく、しんぱ…


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


起きて確認してみるとコレクションハウスへと変化していた。中の変化も言われた通りだ。扉を開けたら最初のコレクションルームのように空間があって、右と左に扉が2つずつあった。

食材と木と素材と何もない部屋だった。最初の空間にも物は置けそうだ。ハウスだし、何か持ち込んでも良いかもしれない。それはおいおい考えておこう。


コレクションブックを見ると飛翔は魔法扱いのようだった。1メートルほど浮いてみた。浮くだけですごいけれども。今は前後左右への移動もゆっくりだ。これも有効活用を考えていこう。


とりあえずは魔物狩りをしよう。本当に魔石が一つも無くなっていた。差し当たってプルに食べさせる魔石が無いのは困る。

元からクエストではなく、個人的に会いに行こうとしていただけだ。夕方か後日にしても大きく問題はないだろう。


とりあえず狩りに行こうと王都の外へと出た。しばらく街道を走って森へ入った後、上空へ上がった。上がっていく最中を見られないようにしたいだけだったので草原へと移動する。目視で遠くまで見ることが出来るのは気持ちがいい。

言われたようにMPの消費は激しい。1秒で1は消費している。簡単には使えない。緊急時に使うには移動速度が遅い。余っているMPの使用先として良さそうだ。


何かが群れで動いているのを見つけたので、こちらを見ている者がいないことを確認して地上に降りる。着地するとすぐに走って目を付けた獲物のところまで急ぐ。

見つけたのはマジックグラスシープの群れだ。魔石有、肉は食用OK、羊毛は素材として価値有り。最初に出会う獲物としては上等だ!



その後の狩りも特に何も問題無かった。今日は質よりも数が多いところを狙っている。普通の冒険者とは走る移動速度が違うのだ。競合しなくて済むし、多くの魔物が狩られずに生息している。稼ぎどころだった。

夕方前には魔石だけは取り出して別で保管。ギルドに解体を頼むのは最初に狩ったマジックグラスシープと運良く一頭だけ狩れた魔牛だ。これくらいならギルドに卸しても問題無い。マジックバッグの誤魔化している容量的にもちょうど良いくらいだろう。


途中で魔石をあげていたプルも数日分とはいえ魔石を確保できたので納得したようだ。取られなければ余裕で3年分は貯めてあったんだけどな。これから魔石は完全に自分で使うことになる。プルの食用ということで言い訳は通じるかな。そうなるとプルは食べすぎなことになるけど、解体に回さずにそのままにしているものがあるから同じか。置きっぱなしの素材についても考えないといけないな。


創造神様の最後の一言を思い出す。


「フーちゃんと会ったっていう建物の地下にも良いものがあるよ。コレクションハウスと相性がすごく良いよ」

お読みいただきありがとうございました。

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