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59ケイト

【ケイトお嬢様視点】


私の名前はキャトリアーナ・フォン・エルンハート。エルンハート家の次女で9歳。あと3年したら貴族学校に入学する。15歳の卒業と同時に成人となる。

学校に通っている間に婚約者が決まるかどうかは分からないわ。私が望めばお父様はすぐに話をまとめて来るだろう。私は卒業までに自分の進む道を決めて良いと言われている。


上兄様はお父様と同じ回復の才能を授かったから次期当主なのは決定している。上兄様もそのつもりだし、継ぐに足りるだけの努力をしているし、お父様からいくつか仕事を任されている。

上兄様はいつでも優しい。私がもっと小さい子どものときから上兄様は大きかった。身長の話ではないわ。私の最初の憧れの人は上兄様。それを本人にお伝えしたらお父様に言ってはいけないと言われた。小さいときはなぜ言ってはいけないか分からなかったけど、今は分かる。

上兄様はお姉様と剣術の勝負で負けてもニコニコしていたけど、お姉様が一番逆らえない人だということはみんな知っている。


お姉様は学校に行ってお兄様の友人に一目惚れをした。お相手の方の家で支えることを第一の目標として勉強をがんばった。それまではお母様と同じ冒険者になると言って屋敷から脱走しかけたこともあった。お母様がいつもと違う雰囲気で捕まえていた。見たことがなかった。

でも、一目惚れしてからは苦手だった令嬢教育もがんばった。もう少しで卒業だけど、同時に結婚する。一度帰ってくるとは言われているけど、少し寂しい。

すごく綺麗で、いつも笑顔が素敵なお姉様。才能はうらやましくないけど、私の理想と言える人の一人。もう一人はお母様。


下兄様は今年の春に貴族学校に入学した。元からすごく頭の良い下兄様はお姉様よりも本を読んで知識も多かった。長期休みで帰ってきたときにお姉様を口喧嘩をして言い負かしていた。

貴族学校に入学したお姉様が何を勉強すれば良いのかを聞かれて答えていたくらいだ。下兄様は入学前なのに。そういった部分で支えることが自分には合っていると言っていた。

私にも何か困ったことは下兄様をいくらでも頼るように言われている。


皆がすごく大事にしてくれる。どれだけわがままを言っても許してくれる。困った顔をしているのに。困ることを言っている私は嫌い。困ったことでも許してくれる家族はもっと嫌い。でもそんな私をずっと続けている私はもっともっと嫌い。

私も皆に何かをしてあげたい。でも私は才能を授からなかった。貴族のお友達でも持っていない人が多かったし、気にすることは無いよと言われた。

でも、家族で食事しているときに自分だけないことを考えるとすごく悲しくなった。私も何か欲しかった。だから下兄様が学校に入学したのを機にリタにお願いすることにした。


お付きのリタも才能を持っている。家族でない限り使用人でも聞かないのがマナーだ。何が出来るか分かったら無理強いさせてしまうから。そんな風に考えているのはエルンハート家くらいらしいけど、私もそれで良いと思った。だから、基本中の基本だけ教えてほしいとお願いした。

リタは教えるのは苦手のようで、チンプンカンプンだったわ。ブワッとかガッとかギューッだけでは私には分からなかった。

でもすごくがんばってくれているのは分かったし、そんなリタはかわいかったわ。いつもみたいに無表情でいると男の子に見えることもあるけど、慌てているリタはかわいらしい女の子だった。


困ったリタはお父様に相談することを薦めてきた。その通りにしたらセバスが私のお付きになった。それまではお兄様に付いていたけどもうセバスも卒業するって。

セバスはリタよりも分かりやすく基本的なことを教えてくれたけど、私には中々出来なかった。魔力操作も出来ないままだった。たぶん私には何もできないんだと思った。

またキツイ言葉が出てしまっていた。セバスにも困った表情をさせてしまった。


そんなとき、魔物を使役するという手段があることを知った。魔物が現れるにはいくつかパターンがあることを思い出した。

1つ目は何もない所から出現する。でも、森とか山とか人があまり立ち入らないところだけらしい。しかもそう言われているだけで信ぴょう性は低いと聞いた

2つ目は動物だったものが何らかの魔石を食べてしまって変異すること。だから魔物を討伐したら出来る限り魔石の回収が推奨されている。どうしても無理な時は仕方ない。強くはなるがそれまでには年単位で魔石を食べさせないといけない。そんなことを行う人など滅多にいない。

魔石が大きくなると価値が高くなると言ってそんな危険なことをする人もいないだろう。強くなった魔物が理性をなくしたら大惨事だ。暴れないとしたらランクの高い魔物だけだ。


話が逸れた。3つ目は動物の様に繁殖で増えることだ。魔物同士でも増えるし、系統が似ているなら動物と魔物でも子どもが生まれる。恐ろしいことを考えた人がいるものだ。

禁忌の研究に近いそうで、それを取り締まるのも公爵家の役目だと言われて教えられた。友達も知らないだろうことを教えらえたけれど、それは誇りに思うべきことだと感じた。


でも、そのときに思ったのだ。子どものときから育てれば私に懐いてくれるのではないかしらって。


だから魔物の卵か子どもが欲しいと思った。でも簡単には許可してもらえるものではないことくらい私でも分かる。

少しでもチャンスが欲しくて王都から外を少し見てみたいとわがままを言った。セバスとリタが馬車を手配してくれて、少し遠乗りをすることになった。朝に出発して夕方までには帰るはずだった。


目的にしていた花畑に着いた。ここはすごく強い魔物がいるらしくて逆に安全らしい。近くにはセバスとリタしかいない。今はお昼ご飯の準備をしている。

今しかないと思って探検してみた。しばらく探したけど何も見つからなかった。残念だったけど戻ろうと思って岩に手を触れたときに自分の手が埋まった。びっくりして引っ込めたら手はまだ腕に付いていたわ。取れてしまったかと思ったの。

どうやら岩に見えるように魔法がかかっているらしかった。聞いたことがない魔法だ。原理は分からなかったけど、これは宝物が隠してあると直感したの。

意を決して中に入ったけど、特に何も無かった。私が両手で持てる大きさの石が大事そうに置いてあった。がっかりしたけどせっかくだからこれを持って帰ることにしたの。


思ったよりも遠くに来ていたみたいで戻ろうと歩いていると、荒々しい雰囲気の男たちが出てきた。セバスがまず駆けつけてくれた。盗賊だった。セバスも強いけど私がいるから反抗できなかった。

囲まれながら馬車まで戻るとリタがセバスの代わりの服を着て男装していた。女の子ってバレるとひどい目に遭うかもしれないからだ。リタがすぐに来なかった理由は分かった。

魔法を使わなかった理由を聞いたら逃げる間にMP切れになるし、抵抗するしない方が良いとセバスの勘が告げていたからだそうだ。セバスはすごく勘が良い。言うことに従った。

馬車の中に3人とも入って、御者席には盗賊が座った。そのまま盗賊が潜んでいるところまで連れていかれた。


移動は一日かかったから家の方でも分かっているはず。すごく不安だったけど、助かる見込みはあるとセバスが言った。このまま地下に閉じ込められているのが一番良いって。何となく石を握っていると温かい気がした。持っていると安心できたからこれは私の宝物にしようと思った。


そうしていたら、スライムが現れた。襲いに来た魔物ではなかった。見張りの盗賊をすぐに倒してくれたから。

動きがすごくかわいかった。一緒に捕まっていた子どもたちも慰めてくれた。私にも一緒にいてくれた。

スライムさんが来てから、石がはっきりとわかるほどに温かくなった。この石はもしかしたら私が探していた魔物の卵かもしれない。本当だとしたら奇跡だ。絶対に誰にも渡さない。

この子が生まれて私の力になってくれたら、誰にも言えなかった私の目標を言うんだ。このスライムくんみたいに人族の友達になってくれる魔物もいるはずだ。


助けに来たと一番に来たのは黒髪黒目の男の子だった。地下だからそう見えるのかと思ったけど、日の光の下でも黒髪黒目だった。

話しかけられたときに絶対に卵を渡したくなかったから今まで自分が使ったことがないくらい厳しい言葉を使ってしまった。セバスの言うように悪いことをした。

あとで謝ろう。スライムくんと契約しているなら、魔物と仲良くなる方法も聞いてみようと思った。


でも、すぐにはできなかった。竜が現れたからだ。魔物の卵は竜の卵だった。すぐに渡せなかった。怖かったし、渡したらまた私は何も無い子に逆戻りになってしまう。

すごく苦しかったけど、男の子の剣幕に圧されてしまった。殺すって言われた。


そうよね。家族が攫われたら誰だってそう。私の家族だってきっと同じように怒るし、心配する。すごく悪いことをしてしまった。この人は竜の気持ちが分かったのね。


でも、男の子、クーロイ様に話を聞いてもらえなかった。あとからセバスに説明されたけど、あの竜は嵐竜王。私が知っている中で一番強いお母様でも10秒と持たずに殺されてしまうほど強いそうだ。本気で襲われたら王都でも殲滅されかねないですって。

そんな竜が王都からすぐにいたこと自体がおかしいけど、いたんだから仕方ない。それよりもすぐに渡さずに大勢の命を危険にさらしたことを怒っているのだと言われた。

たしかに私のはワガママだ。それで死にそうになったのだから怒られるのは当たり前だ。私はなんてことをしてしまったのだろう。すごく後悔した。


あのあとクーロイ様は嵐竜王から正式に卵を受け取っていた。もう欲しいとは思わない。私より少し年上なだけなのに、あんなに堂々としている。

この人は私の何かを変えてくれるかもしれない。まず謝りたかったけどそれすらも許されなかった。悲しかった。でも、こういう状況を招いたのは私自身だ。

何とか自らの手で解決したい。そうしたらリタがお嬢様が昔の表情をしてるって言ってくれた。何かに挑戦しようと何とかしようとしていた時期が私にもあったからだ。


お父様から2週間の謹慎を命じられた。当たり前だ。でもその間に皆に謝ろう。一緒に捕まっていた人たちにも、セバスにもリタにもお父様にもお母様にも屋敷の皆にも。


謝り終わったら、やっぱりクーロイ様は私を変えてくれる人なんだと思った。お姉様の言う一目惚れかは分からない。でも追いかけてみよう。

平民とか言ってしまってごめんなさいとか、危険な目に遭わせてごめんなさい、とかいろいろ言わなくてはいけないと思う。けど一番は助けてくれてありがとうって言おう。


そのためならお父様にお願いして伝える場を作ってもらおう。出来ることは何でもしよう。それが私らしいってことのようだから。


許してもらうのはこれから次第だと言われたわ。だったらがんばって認めてもらおう。でも、手を繋ぐと言われて顔が赤くなってしまったのは自分でもよく分からないわ。たぶん…。

本当は良い子だけど、すごく追い詰められていた子と伝わりますかね。矛盾が無いようにしたつもりです。今回は難産でした。

お読みいただきありがとうございました。

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[気になる点] 勉強えおがんばった は、EとWの打ち間違いなのは判るのですが、 この前の文章の、今なら-中略-今は、が判りません。 MAは共通ですがEとIは離れているし…
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