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55幼い冒険者がギルドにいるときに声かけてくるやつは裏がある

特別Bランクとは討伐やスタンピードが起きたときなど武力がものをいうクエストは受注して良いというランクである。

平たく言えば、強いんだからチマチマせずに力に物をいわせろ、ということだ。Aランク以上は王都のギルドマスターでも勝手に任じることが出来ないので一番上のランクだそうだ。


王都のギルドマスターはライアードさんというそうで、ウォルさんと同じくらい体格をしているが、人の良い笑顔を浮かべている。かつてはAランクまで上り詰めたそうで、現役冒険者からも慕われている人格者と絵にかいたような有力者だそうだ。

なぜかボクジさんは知り合いで、闇クエストの件について頭をはたかれていた。纏っている雰囲気から考えると今の俺でも勝てない。というよりもザンガンよりは強いのではないだろうか。飛び回って仕事をするにはもう若くないというように見た目からは見えないが42歳だそうだ。30代前半でも通じる。


俺の年齢があまりにも幼いため、公式にBランクにまで上げられないため特別な時のみBランクと同じ扱いにしてくれるそうだ。現状はEランクで活動して、昇級を目指すように言われた。

今回の件でDランクに上げることも出来るが、10歳でDランクも異例なほど早いので、特別扱いはやめてもらった。それでもエルンハート家のクエストあるので、別のクエストを少しこなせば上がるそうだ。


権力者との繋がりをあまり作りすぎると何か事件に巻き込まれそうなため、雲隠れしたいが既にお嬢様のクエストの受注も先程終えている。

才能が無くて暴走するような人を放置するのも悪い気がするし、あれだけ周りに良い人がいることに気が付かず病まれても良い気がしない。

しばらくは我慢して過ごすとしよう。そして、ギルドマスターからはアドバイスを1つ頂戴した。


「今日は『美食の奇跡』がいるから大丈夫だろうが、一人でギルドに来るときは気を付けろ。ギルド登録初心者に声をかけまわるアホがいる」


そのセリフの時点でフラグが立ってますよ!


「俺からもその都度指導をしているが、やめようとしない。悪い奴ではないんだが、今は冷静ではなくてな。初心者にはその場にいたベテランが対応してくれているが、君には付ける必要を感じない。もし絡まれたら鍛錬場を貸すから完膚なきまでにのしてくれ。そうでもないと話を聞かないだろう」


フラグ立てじゃなくて、フラグを回収の上で折る許可か!展開がはやい。


「本当に絡まれたらそうします」


言ったことは覚えておきます。


「特徴と目的を伝えておこう。本当にマヌケな話で申し訳ないのだが…」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


今日からは宿暮らしで探す必要があるが、冒険者ギルドがお勧めの宿を紹介してもらえることになったので焦る必要がなくなった。ギルドから連絡を入れて、夕食前に宿に行けば良いように手配してくれた。

ギルドに来た用事は本来ならこれで終わりだった。どんな依頼があるか見ておいた方が良いと勧められたので、久しぶりだからと『美食の奇跡』と並んで掲示板を見ることになった。ランクが違うから必然的に彼らとは距離は開くことになる。


今日ギルドに入るときも一緒だった、応接室の方から一般スペースに来たのも一緒だった、掲示板も一緒に見ていた時間もあった。


それなのにおじさんは絡んできた。30分ほど前の話を思い出す。そのときに俺は絶望した表情で見ていたのだろう。自分の何かの引きの強さに自分でドン引きしていたのを、強面を見てドン引きしていると勘違いしたようだ。

ギルドマスターより怖くない、何ならウォルさんの方が怖い顔をしている。あの人は美味しいものを食べたときの表情がかわいい。現実逃避だ。


「おうおう。こんなところにちびっこが来ているなんてな。ここは怖いオジサンもいるからまだ早いんじゃないか~」


何度もギルドマスターに注意を受けてもやめないのは何なのだろうか。あることに囚われたとき人は盲目になるそうだ。意味が違うはずなんだが。


「怖くて声も出ないのかな。ならおじさんが冒険者として鍛えてあげよう。特別にタダで構わないよ。鍛錬場まで一緒においで」


体格はウォルさんよりも一回り大きいけど、見せかけだけっぽい感じがする。これでCランクって言ってたかな。もう少し状況把握の訓練をした方が良い気がしますね…。


「んん~?無視は良くないよ。依頼人と直接話すこともあるからね。誠実に話す必要が練習にも乗ってあげようか。……良いから早く来いよ!」


最後の声だけ低い声に変わった。元々声の大きさも周りにほとんど聞こえない音量だった。周りには知られたくないらしい。目的のことを考えたら情けないよね。


「分かりました」

「そうか。分かってくれたか。では鍛錬場で「格好悪いところを皆に見てもらいましょう」…面倒を見てやろうと思ったが、気が変わったぞ。口の利き方から教えよう」

「先に言っておくけど、あなたの言い分は何も通らないからね」

「訳の分からないことを言うな。俺が何年ここのギルドに出入りしていると思っているんだ」

「まだ2か月でしょ。年齢がいってるからって騙されないよ」

「あぁ!?ちっ…。来い!」


なぜ自分のことがバレているかは考えずに、鍛錬場の方に向かって歩きだす。

あのおじさんの名前はオステンタ。年齢はギルドマスターと同じ42歳。目的は目当ての受付嬢さんに良いところを見せたい。方法は後輩を指導している俺って格好良いでしょ?お付き合いしません?と言うためにがんばっているのだ。

そこまで詳細にバレているのは、他の冒険者からのリークだ。彼女が直接話せていないのは、話をしようとすると理由を色々付けておじさんが逃げてしまうからだ。冒険者が代わりに伝えないのかって?実害が出る前にそっとフォローに入るくらい面白い話と認識しているのだ。

新人からすれば、いきなり知らないオッサンに話しかけられて、他の親切な先輩と話すきっかけになるという、役に立っているといえば役に立っている。そのままでも良いという意見もギルド職員の中にはいるが、ギルドマスターと受付嬢、その婚約者は心が痛い。

そう。目当ての受付嬢さんには既に婚約者がいて、昨日ギルドマスターに結婚の報告も済ませている。婚約者は解体担当でおじさんとも何度も話をしているそうだよ。話を聞いた時はどんな顔をすれば良いか困ったそうだよ。


2人の婚約の話を聞いて状況を把握したギルドマスターの前に現れたのがクーロイだった。


おじさんの名前はオステンタさん。色々と拗らせたかわいそうなおじさんなのである。


先程のギルドマスターとの会話を思い出す。


何が悲しくてこんなおじさんの騒動に巻き込まれないといけないんだ!


「面白がってはいるが、いつまでもベテランをギルド内に置いておくわけにもいかない。オステンタは俺がギルドマスターになる前からの知り合いでな。いつまでも笑いの的にしておくのは忍びないのだ」


こんなことを言われて何もしないままでいるわけにはいかないでしょうが!


「見栄を張りたいから自分よりも経験の浅い者か弱そうな者にしか声をかけない。ベテランと一緒にいれば人見知りなので声をかけられない」


拗らせが過ぎる!!


「おそらく何回かギルドに来ていればオステンタの方から声をかけてくるはずだ。そのときはベテランたちには動かないように言っておくから挑発しつつ鍛錬場へ行ってくれ。指導稽古として返り討ちにして頭を冷やさせてくれ。負けたら少しは冷静になる。そこから先は俺が話をするから」


すぐに来たよ。動揺したけど言われたように俺やったよ。

ギルドマスターと受付嬢さんと婚約者は神妙な顔をしている。『美食の奇跡』はまたも声を殺して笑っている。ベテランと思われる冒険者は戸惑っている。他の冒険者も事情をほとんどが知っているので心配顔だ。

状況を知らないのはオステンタさんだけ!


ギルド全体の視線を受けながら鍛錬場へと入っていった。

お読みいただきありがとうございました。

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