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51流されるまま王都

誤字報告を頂きました。気をつけたつもりでしたが、お手数かけました。ありがとうございます。

「すごく迷惑をかけてしまったと思っているの。けどまず私の話を聞いてほしいの」

「聞きません。消えてください」


村を出てから一番強い奴と戦って、生きてきた中で一番の衝撃を受けた日なんだ。もう今日はゆっくり寝かせてくれ。


「お嬢様。クーロイ様もお疲れのご様子です。そんな状態ではいくら何でも話など聞いてもらえるわけがありません。また――」

「私だって、すごく苦しいんだから!もう少しだと思ったの!!」


ヒステリーを起こすからだよ。取り合わずに放っておいたら、メイドさんに抱き着いて泣いていた。でもその声のおかげでおじいさんが駆けつけてきた。


「お嬢様。少し落ち着きましょう」

「…………っふぐ…っふ……」


俺に謝罪の言葉を告げると泣いているお嬢様を連れて出ていった。メイドさんも頭を下げた後で、二人を追いかけていく。

どんな話であろうと二度と近づかないように伝えておかないといけないな。というかあのおじいさんはセバスさんなのか。執事の鑑みたいな名前だな。


少し目が冴えてしまったが、そのまま横になって目を閉じていたらいつのまにか眠っていた。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


翌朝はいつもよりも少し遅い時間に起きた。食事の支度はお姉さんとイートさん、フーズさんで用意してくれていた。

メニューそのものは昨日とあまり変わらないが、誰かが作ってくれた料理はおいしい。感謝して頂いた。


食事後の片付けも全員で行った後は昨日決めたとおりに行動開始だ。馬車は二台に分かれて乗り込む。俺が乗る馬車は獣人村からの6人と一緒だ。もう一つの馬車には人族のグループで乗ってもらった。

馬車を操縦する技術はこの1か月で教えてもらってはいたものの、それほど上手いわけではない。セバスさんが操縦する馬車に先に進んでもらい、その後についていくことになった。


改めておじいさんとメイドさんとは自己紹介した。

おじいさんは、セリアン・バストレックという名前で、職業はお嬢様の執事兼護衛だそうだ。盗賊には多勢に無勢でメイドさんに咄嗟に男装するように指示し、その時間稼ぎだけで精一杯だったそうだ。セバスと呼んでくださいと言われたのでそうすることにした。

メイドさんは、リタさんというそうだ。防御魔法を買われてお嬢様付きに、メイドさんの作法なんかもある程度覚えたが、セバスさんもフォローしているそうだ。男装していたのは下手にそのままだと盗賊にひどい目に遭わされるかもしれないと考えたからだそうだ。その心配は無かったので良かったね。

あと、俺の外見のことで気を使ってぼかしてくれてるね。中身はもっと年齢いってるけどそんなことは言わない。この二人は良い人なんだろう。貧乏くじ引いてる辺りは某パーティのリーダーと共通点がある。


その後ろでお嬢様もいたが、自己紹介になる前にこちらから二人とは話すがお嬢様とは話はしたいと思えないことを伝えた。人の命を危険にさらしたことと、人の迷惑を考えられない人とは交渉の余地がないことを伝えた。セバスさんとリタさんが間に入って止めてほしいことを伝えた。

二人は大人だから引き下がってくれたよ。馬車は違うにしても、休憩や野営で話す機会があればまだ懐柔できるだろうと計算できるからね。出来ないお子様がどうにか話しかけようとしたけどセバスさんが説得して連れていかれました。リタさんのお辞儀までがテンプレです。

戦闘をメインで出来る人間が俺とプルしかいないんだから余計な気苦労はかけないでほしい。


プルには分裂を駆使してもらって両方の馬車に待機してもらっている。子どものお世話メイン、お嬢様の邪魔も任務に入っている。

移動中は特に魔物に出会うことも無かった。一日に一回出会うくらいだし、今はプルが全力の警戒と危険が近づいてきたら俺も魔力弾丸を遠距離狙撃で対応している。今回に限っては素材は拾いに行かない。


野営時も特に問題になることは起こらず、王都まで到着することが出来た。その頃にはお嬢様も諦めて静かになっていた。


セバスさんが御者をリタさんに代わり、門番のところへ行き交渉をしていた。すぐに兵士たちが5人ほど来て乗ってきた馬車の御者の代わりと先導をしてくれる。優先的に処理してくれることになったようだ。

門でのチェックも攫われ組は身分を証明するものがないからセバスさんが身元の保証をした。俺だけがギルドカードを出してのチェックだったので俺の方が時間がかかってしまった。


門の中に入ってからは俺だけ別行動だ。冒険者ギルドで盗賊討伐の報告をする。身柄自体は門番のところで引き渡している。改めて厳重な鎖で繋ぎ直されている。頭目の名前はナーベヌというのをそこで初めて聞いたけど、サンドバ家の一人だった。

こいつも以前に名前を抹消されているそうだが、碌なことしない家である。そこから兵士さんたちが動き始める気配がしていた。騎士団が行くとしても防衛関係で忙しくなるのだろう。


ギルドには兵士長さんが一緒に来てくれた。10歳児だからね。セバスさんの代理と言われた。書類なども持ってくれている。


「すまないが、責任者の方とお話させてもらいたい」

「はい!ただいま!」


受付嬢さんが急いで準備をしてくれた。俺は何も言わずに付いて行くだけだ。通された部屋で待っているとサブマスターと名乗る人が対応してくれた。この人はちゃんと強いみたいだ。


「はじめまして、サブマスターのエルンストと言います。ナーベヌの盗賊団を壊滅させていただいたと報告を聞きました。詳しくご説明頂いてもよろしいですか」


セバスさんから説明されたことを兵士長さんが説明してくれる。俺も最初の道を塞がれていたことや、補足は説明した。『美食の奇跡』からも今回の騒動について、正しいことを俺が報告することを証明するとの意味も込めてボクジさんのカードを預かっていたので渡した。

約束事として、嵐竜王のことは言わないことにしていたから、話のメインは盗賊のことだけだ。

説明し終わると、礼を言われた。盗賊団たちにはかなり大規模に動いていたし、調査のために派遣された冒険者も戻って来なかったそうだ。

盗賊の確保については騎士団任せだが、もう一度戻ってきたら『美食の奇跡』と一緒に来るようにお願いされた。


「ギルドからも報酬をお渡しさせてもらいたいですからね。必ずお越しください」


なんか笑顔が怖かった。


ギルドの応接室から出た後は兵士長さんと一緒に入り口まで出た。するとセバスさんから遣いという人が案内をすると声をかけてきたのでついて行くことになる。兵士長さんとはそこでお別れした。

馬車に乗せられると、店が多い通りから住宅街を通り、門番のいる門を通ると一軒が大きいエリアに入った。着いたのはどうやらお嬢様の屋敷らしい。途中で見たよりも大きい屋敷だ。これは自分の意地を捨てて、理を取りに行く方が良いかもしれない。


リタさんが出迎えてくれる。今回攫われた人たちも村の場所を把握次第、この家から送ることになったそうだ。獣人も友好的な付き合いをしているルートから送り届けてくれるらしい。

騎士団の準備のため、出発は明日になり今日は泊めてもらうことになった。断れない雰囲気なので泊まることになった。


色々と警戒していたが、子どもたちと一緒にいる間は特に何もされなかった。


食事では「おいしい!」

風呂では「広い!」


と、語彙を失ってはしゃぐ子どもたちの世話をした。肉体的には疲れていないが、精神的に疲れた。プルの方がタフだった。

寝るためにと離されたときに、俺だけ違う部屋に案内され、中に入ると40代くらいの気品があふれ出ている方が寛いでいる部屋に通された。


「娘が迷惑をかけたね。世話になったと聞いた。感謝の言葉を伝えようと思ってね」


お嬢様のお父様が登場されました。王都初日から起こるイベントですかね。

盗賊の人数が人数なので反応も大きくなると思ったんですよ。

お読みいただきありがとうございました。

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