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49世間知らずのお嬢様って嫌い

呼吸を整える前に急いで纏気を解除する。この同時発動キツイ。何もしてなくてもHPもMPもガンガン削られる。MPは余裕あってもHPは死ぬ!

この状態で常時回復しながらとか理屈の上では出来るけどまだ出来ない。地道に鍛えていくしかないね。まだHPも半分は残ってるから急いで生命魔法で回復しておこう。HPは常時満タン主義です。


殴り飛ばしたザンガンの確認をする前に、転がっている男たちの武器防具の没収と動けないように縛るのをやっておこう。プルにも持ち上げるのを手伝ってもらい、さっさと仕上げる。

頭目らしき男を最後にしていたら、起きそうな気配がする。失禁しているので触りたくなかったんだ。どうしようか迷ってる場合ではなかった。


「ぐ……。く…、なにが、どうなった?」

「おはようさん」

「お前!ザンガン!どこにいった!?」


下半身よりも部下が気になるらしい。というか相手してやる必要も無いかなと考えていると、ニケンさんとマチェルさんが来た。


「クーロイ!無事か!?」

「大丈夫だよ~」

「中はもう安全か?こいつが最後か」


ニケンさんは俺を、マチェルさんは周囲に注意を向ける。じゃあこの場は2人に任せて地下の救出に向かおう。


「じゃあ、俺は地下へ行くから二人はこのおもらし男と周辺をよろしく!」

「え?クーロイ!?」

「こいつくさい!」


騒ぐ声を聴きつつ、忘れそうになったザンガンの様子を見に行く。プルはもう分裂は無理らしい。地下でどれだけ分裂しているんだ?仕方ない。

武器になりそうなものはもう持ってないようなので、気休めにもならないかもしれないけどロープで転がしておく。


地下への入り口の前で妙な魔力を感じる。何かが良く分からなかったので気にしないことにする。

ただ、地下へ降りるとその妙な魔力が少しだけ強くなる。原因となるものが地下にあるらしい。可能なら回収が必要だな。


地下へ降りるとさすがに雰囲気は落ち着いていた。見張りのまとめ役をしていたプルには交替でザンガンの見張りに向かってもらった。

子どもたちについていた、って数がすごいな。子ども一人ずつにつけていたのか。子どもの相手するの本当に好きだな。


「助けに来ました~。皆さん大丈夫ですか?」


突然現れた俺に表情を強張らせて警戒したが、プルが頭の上に乗っていることで安心した空気に変わる。


「あなたがこのスライムくんの主ですか?」

「そうです。プルが皆さんのお役に立てていれば嬉しいです」

「プルくんと言うのですね。とても助けてもらいました。ありがとうございます」


品の良さそうなおじいさんが代表して話を返してくれる。

プルは地下に来たら男二人を倒し、そのあと子どもの世話をしていたそうだ。男たちが緊張感を漂わせていたので、恐怖感が勝っていた空気をプルが和ませたそうだ。

話を聞きながら男二人も縛っておく。移動のことを考えていなかったからこれらは俺が運ばないといけないな。


地上の制圧は既に終了していることを伝えて、上に上がることを提案する。一旦おじいさんと獣人の女性1人を地上の確認をするために連れていく。荷物の2人も抱えていく。

ニケンさんは男たちを運んでいたが、マチェルさんは見張りをしていた。二人には状況の安全確認をしてもらい、一緒に地下へと戻る。荷物は捨ててきた。


再度地下に降りて、地上の安全を二人から話してもらう。地下での生活は長い人で今日で三日目だそうだ。短期で回していく話はその通りだったようだ。何とか間に合って良かった。

捕まえられていたのは、大きくは3つのグループに分かれていた。


獣人の隠れ里が近くにあるそうで、男の子が3人、女の子が2人、成人女性が1人の合計6人。

王都とは別の町から男の子が2人、女性が2人で合計4人。

王都に住んでいるというおじいさんと少女と青年の3人。


どのグループも町からそれぞれの事情で離れたときに囲まれ、ここに連れてこられたそうだ。子どもたちは遊びだったそうだが。

ようやく一息つける状態になっただろうか。MPも残りは3割くらい。今日中には王都に着くのかな。でもこの人数に盗賊どもも労働力にしたいから生かしたまま連れて帰らないといけないしな。

元のグループで一応固まってもらい、階段を上がっていく。子どもたちが目の前を通るときに、分裂プルたちを回収していく。抱き心地が良かったらしく放すのを惜しむが、一緒にいる大人たちが諭してくれる。

一番最後はおじいさんのいる3人組だ。ただ、おじいさんと一緒の少女が目の前を通るときに違和感を感じた。


「ねえ、きみ」

「な、何よ!」


キッと睨みつけられた。ただでさえ吊り目なのに更に鋭くなる。年下だろうに自分を上に見せようとする振舞いだけは出来てるな。なんか貴族っぽい。やっぱり関わり合いになるのはやめよう。


「やっぱり何でもないです」

「用事も無いのに声をかけないでくれる!」

「お嬢様。この方たちは私たちをお救いくださった方々です。命の恩人にそのような言葉は礼を失しています。ご訂正ください」


おじいさんがビシッと注意する。格好良いな。

それに引き換え、この少女には絶対近づかないでおこう。そして次にピンチになったら見捨てよう。

もう一人の青年は、二人を見てオロオロと慌てている。なんか男っぽくない…?


「ふん!平民なんてどうでも良いわ!そもそも助けに来るのが遅いのよ!……私は知らないわ!行くわよ!」

「お嬢様!!」


無視して進むお嬢様とやらは先に階段を上がっていく。おじいさんと青年は。申し訳ないと一言伝えて後を追いかけていった。

貴族のお嬢様とお付きの2人、執事さんとメイドさんかな。なんでメイドさんは男装してるんだろう?盗賊に捕まったから?もしかして趣味?


まあどうでも良いか。もう会わないだろうし。地下には特に何も残されていないことを確認する。引率の先生をするときってこういう最後の確認するよな~。


そう思いながら階段を上がりきる。荷物は既に運び済み、先に捕まっていた人たちも『美食の奇跡』のメンバーに先導されていく。

任務完了ってことで良いかな。さて、食べさせたくない奴は一名いるが、それ以外の方々には考えていた通り食事をご馳走したい。コレクションブックを出して作れそうなメニューを考えよう。



数歩進んだとき、プルが最大の警戒を伝えてきた。お嬢様の持ってる魔力を発する卵を取り上げろ!?


「おい!お嬢様!」


コレクションブックは消して、砦の入り口まで走って追いつく。


「あんた、何かの珍しい卵持ってる?」

「そ、そんなの持ってるわけないでしょ!?」

「イヤ、そんなはずは………!いいから!早く渡せ!!!」


俺にもやっと分かった。ずっと何か感じていた魔力が突然膨れ上がり急速に近づいてくる。ゾッとするほどの魔力量と圧力に圧し潰されそうになる。これは絶対に死ぬ!


「何か持ってるだろ!早くしないと皆死んじゃうから!早く渡せ!!」

「そんなこと言っても渡すわけにはいかないわ!これが無いと私…!」


周りが暗くなる。上空に光を遮る存在が現れたからだ。魔力を感じるかどうかは関係ない。もう見えてるから。『美食の奇跡』は何とか立ってるけど、何人かは腰を抜かして座り込んでしまった。


「Sランクの魔物、嵐竜だ…」


マチェルさんの呟く声が聞こえた。

お読みいただきありがとうございました。

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