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48前置きが長いけど倒すよ

【ザンガン視点】


憎きコクソウと初めて会ったのはある武闘会だった。既に私は武術の使い手として国の武術指南役という地位と名声を得ていた。その地位に辿りつくまで様々な苦労があった。頂点を取るということはそれなりの苦労が必要になるというものだ。しかし、コクソウとの初めての試合で一瞬で負けた。何が起こったのかも分からなかった。気が付いた時には武闘会が終わって一週間経過した後で、コクソウは既にその地から旅立っていた。

一瞬で負けた私の名声が消えてなくなるのも一瞬だった。既に目を覚ました時には無くなっていたのだから。古くからいた弟子は残っていたが、他流派の言葉に一人二人といなくなっていった。しかし、まだ返り咲くことはできると思っていた。


落ちていく途中にも武闘会はあったが、なぜか私は全く勝てなくなっていた。かつて互角だった同門の相手にも。かつての弟子にさえ。


何だこれは?なぜ私が?何が悪かった?負けた私か!?私は……決して悪くない。かつて頂点に上り詰めた私が悪いなどありえない!私の邪魔をする者たちこそが悪なのだ!!!!


そして、気が付けば誰も周りにいなくなっていた。酒を大量に飲むようになり、そのための金など無い。私の拳を脅しにして酒場の主人から奪っていた。


そんな私に声をかける者がいた。


「あなたがザンガンさんですか?」

「………………誰だ、貴様は?私に構おうとするな」

「栄光を取り戻したくはありませんか?」

「………………続けろ」


顔を上げて見ると黒い燕尾服のような服を着ている。モノクルのため右目しか見えていないが、何が楽しいのか愉快そうに笑っている。


「いえ、あなたの力になりたいと思いまして。こちらの薬は新たに作り出された新薬でして、お年を召した方が飲めば全盛期の力をもう一度得ることが出来るものです。あなたにピッタリかと。いかがですか?」


そのように囁いた口は三日月のように変わっていく。あたかも私の次の言葉が分かっているかのように。


「………寄越せ」


気が付けば、かつて弟子と呼んだ者たちの顔が足元に転んでいることが多くなった。他流派として争っていた者たちの顔が転んでいることもあった。かつての同門も、弟子も。思い出せる限りの顔が転がったあとで、一番の原因を思い出した。


私が一番踏みにじりたいのはお前だ。……コクソウ………。


そう考えた私は今でも薬を渡してくる男に取り引きを持ち掛けた。男の仕事を手伝えば、コクソウの行方を捜し私に教えるということ。

取引は成立した。指示された組織の用心棒をすることになった。久しぶりに見る鏡に映った私の顔は逆に若返っていた。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


【クーロイ視点】


さっきプルが慌てた様子で教えてくれたことに俺は怒っているのだ。村で子守をしていて良かったとプルが言っている。


現在の地下では捕らえられていた子どもたちを慰めるべく、プルが子どもの人数に分裂数を増やして慰めている最中だそうだ。

詳しい話を聞かなければ分からないが、恐怖から解放されたことによる涙らしい。一緒に捕らえられていた大人たちも手分けして落ち着かせてるのに協力してくれているらしい。


家族と理不尽に離れ離れにされ、暗闇に押し込められ、怖かっただろうと思う。状況から食べ物もあまり与えらえていなかったようだ。

鍛錬が少し厳しいくらいしか体験していない俺に比べたら、なんて辛い経験を味わったのか。泣いている子たちの気持ちを俺は想像もできない。その心情は察して余りある。助け出したら存分におなかを満たしてあげたい。制限無しで放出しようと思う。それまでプル。全力で子守を頼む。


そのためにも俺は今やるべきことをやろう。


恐怖の原因を作ったのは誰か?――――――目の前のこいつらだ


元凶を潰すのに躊躇う必要はあるのか?――――――躊躇なんて必要ない


人攫いに大きな理由があるだろうか。考えてみるが思いつかない。この組織は潰す。ザンガンも、気絶しているボスらしき若い奴も心の底から後悔させる。

お前らは地下に閉じ込められていた人たちの心を踏みにじった。そんな踏みにじった奴ら完膚なきまでに叩きのめす。


とはいえ、ザンガンは強い。手を抜いていたら負けるかもってくらいには強い。じゃあルウネのところで鍛えた力を出す。


まず、ルウネには秘密があった。世界樹は植物系や森に棲む魔物を生み出すことが出来た。魔物の生まれ方にはいくつか種類があるが、そのうちの1つで精霊なら持っている権能だそうだ。創造神様の役に立つからと乗せられて魔物殲滅を手伝った。

才能を伸ばすには魔物を倒すのが一番というのは魔物を倒したあとに、魔力を少しずつ吸収して魂の強化が行われる。ステータスの強化にも影響があるため、倒せば倒すだけ強くなっていく。

ダンジョンなどにあるモンスターハウスを調節可能で安全に利用可能なのだ。ルウネにも限度があるので、2か月に1日くらいのものだったが、大いに活用させてもらった。


なぜかスキルレベルに限界があるのか5より上に上がらない。それならば取れるスキル・便利なスキルを取っていくべく習得を繰り返していった。


>>>>>

名前:クーロイ 年齢:10

種族:人族 性別:男

才能:気ままなコレクター


HP :182/182

MP :1749/2583

STR:82

VIT:91

AGI:106

DEX:58

MAG:129

MND:117

LUC:55


スキル

体術(5)剣術(5)短剣術(3)投擲術(4)弓術(1)

身体強化(5)視力強化(5)頑強(3)回避(5)敏捷(5)平衡感覚(5)跳躍(3)自然治癒力上昇(3)剛力(5)器用(2)

縮地(1)纏気(1)闘気操作(1)

魔力感知(5)魔力操作(5)魔力放出(5)魔力集中(5)

生命魔法(5)植物魔法(4)無魔法(5)

気配察知(5)悪意感知(3)気配隠蔽(4)

平常心(4)ストレス耐性(4)苦痛耐性(3)毒耐性(3)打撃耐性(2)斬撃耐性(1)

教導(3)話術(1)採取(5)按摩(4)解体(3)料理(4)調合(3)計算(2)木材加工(2)皮革加工(2)石材加工(1)目利き(1)


<スキル>

神託 コレクションブック コレクションルーム スキルコレクション (思考力強化)


称号

御人好し 【元】不幸体質 我慢バカ 転生者 世界樹の祝福者 修行者 魔物狩り 魔物の殲滅者


備考

称号・断罪者はこれ以上やっても称号に反映されないようにしたよ♪


>>>>>


本気になったザンガンと向かい合いながら、自分のステータスも確認しておく。HPもMPもまだ余裕がある。これなら闘気操作と魔力操作を同時発動しても問題無いことを確認する。

ステータス自体は『美食の奇跡』のみんなと同じくらいだ。強化しないという制限を付ければ、腕相撲をやっても前衛組には勝てない。魔力関連は後衛組に勝つけど。


『美食の奇跡』と鍛錬をしていて、ハッキリわかったことが1つある。他の人が不得手なのに俺は容易に出来ることがある。


それはスキルの同時使用の数がほぼ無制限であること。いつ身に付いたか覚えてないけどそれが新たに身に付いていた、スキルコレクションというスキル効果だろう。


纏気したままで体術や剣術のスキルの使用は誰でも出来る。前衛組も最初から出来た。同時に使えなければ意味がないというのもある。

魔力操作と魔力集中は同じ魔力系統だからかこれは併用できる。後衛組3人もできた。同時使用が可能なものは色々ある。


しかし、纏気を発動しながら体術スキルを使用しながら、魔力操作を行うことは非常に難しい。闘気はHP由来、魔力はMP由来で使用する。両方を同時に使用するというのは右手で絵を描きながら左手で文章を書くようなものと言われた。

時間をかければ出来るのかもしれないけど、それくらいなら自分の得意を極めてしまう方が普通は早いし楽だ。

実質誰も目指さないため、パーティを組んで、それぞれの役割を果たす。一人で何でも使えてしまうのは異質すぎる。


どんなスキルも高レベルで身に付けて、同時並行で使える者は存在自体がおかしい。なぜか身に付かないスキルはあるけど、そのうち身に付けられるだろう。

何となく創造神様が俺がどんな道を選んでも楽しめるようにいじったとしか思えない。簡単に公開できない才能を与えてくれたものだとは思う。ただ、今日はいつも以上に感謝しようと思う。


さあ、いこう!


「いくぞ!!」


闘気も魔力も纏気で体の周りで充分に纏う。ある程度安定したら、更に体の奥から捻りだす。この状態だと床を踏み抜いてしまうので、魔力で作った板を靴の下に発生させておく。


これで準備完了。


復讐に囚われていたザンガンは戸惑いこそ見せたものの、攻撃の意思を持って近づいてくる。


「があああぁぁぁーーーっ!!!」


「うるせぇ!!!」


攻撃に出してくる突きを真正面から受け止める。腕まで覆っていた手甲は逆に一撃で皹が入り、こちらが放つ一撃で粉々に粉砕する。逆の左も突き出してくるが、左の手甲も同じように皹を入れて一撃で粉砕する。

既に正気ではなくなったザンガンは蹴りを放とうとしてくるが、防ごうとしなくても纏った気で体に触れることも無い。


さすがの状況にザンガンの目にうっすらと戸惑いが映るが、もう知ったことではない。


「無駄な人生だったな!」


両拳にエネルギーを集中・圧縮させて顔面を何度も殴り抜く。壁際まで追い詰めると、最後に大きく振りかぶって右拳の一撃で吹っ飛ばすとザンガンは壁まで飛んで激突した。

そのまま突き抜けていく音がした。その後はしばらく衝撃音が建物内に響いていた。


「お前なんか黒爪さんにも、じいちゃんにも、一生かけても勝てねぇよ!!

お読みいただきありがとうございました。

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