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46侵入と遭遇、逆恨みは怖い

盗賊のアジト襲撃が始まった。あまり時間をかけすぎるのも悪いので、早いところ済ましてしまおう。

物見台から階段を下りて進む。入り口に全員行っても、5人なら大丈夫だとは思うが、減らせるときは減らしておこう。


今いる3階は個人部屋が配置されているようだ。休憩中だったみたいで部屋の中で慌てて動いている気配がする。出てくるところを待ち構えて、顔面に魔力弾を当てる。


ゴン!


一人当てると、倒れた拍子に派手目に音がしたため警戒度を上げてしまった。


「侵入者が既にいるぞ!」

「簡単に顔を出すな!」


情報共有は良いけど、俺にも聞こえたら意味がないよ。気配察知で6人いるのは分かっていたので、これで声を出した2人のいる部屋が分かった。魔力弾を入り口前まで飛ばして、部屋の前で曲げて入室させる。


「ふがっ!」


話そうとしていたのだろうか。変な声が響いた。いつまでもここでにらめっこしているわけにもいかないので、廊下を走って発見次第顔面を狙って気絶させていく。とりあえず3階はは片付いたと判断しよう。

2階はもう既に人が見当たらず。1階の食堂らしきところには食べかけの食事が放置されていた。あまり時間をかけたつもりも無かったのだが、なんだかんだここの盗賊たちは行動は素早いらしい。

台所には食事担当がまだ残っていたので、問答無用で叩き伏せておく。


地下へと続く階段のある部屋に向かいたいが、入り口近くを経由するか広めのホールを通らなくてはならい。


今のこの状況で入り口近くに行くのは意味がない。分裂したプルによると『美食の奇跡』の5人は多少の手傷は負っているが、問題無い程度のダメージで済んでいるようだ。

時間をかけて少しずつ減らしていけそうなので、こっちはこっちで進める方が良いだろう。建物内部にはもうほとんど人の気配がないし、これ以上敵が増えることも無いだろう。


これからの動きを確認しておくと、盗賊の確保と使っている人たちの解放。地下に既に向かわれていれば厄介なので、このホールにいる奴らを潰しておくのが重要だろう。


呼吸を整えるとホールに入る。と、同時に魔力弾丸を放つ。不意を突いたおかげで中に残っていた約半数の6人を昏倒させた。吹っ飛ばされた男の体に押し倒されたものが情けない声を上げている。


「子ネズミがいやがったか」


この状況なのに、階段状に高い場所に玉座みたいな椅子に肘を付いて座っている男がいる。中肉中背だが目も髪も濃い青色をしており、短剣を両腰に付けている。成人は過ぎてるけどオッサンでもない。俺が言うのも変だけど若い。体には黒色の皮で作った鎧を着込んでいる。

その横には一人段違いの闘気を纏っている男が立っていた。くすんだ短い金髪を立てた髪型にし、赤い目が鋭くこちらを睨んでいる。体は鍛えてあって、しっかりと筋肉が付いている。実力を身に付けるまで相当な時間をかけたのだろう。渋い年の取り方をしたオジサンだ。近接を好むのか両腕に指の先から肘辺りまでを覆った手甲を付けていた。余計な重りを付けたくないのか、普通の服を着ているようだ。


「今回は時間も無いんで、すぐに黙らせるよ」


魔力集中を使い、両手に留めた状態でまだ立っている男たちに向かって走っていく。二人の男以外も幹部なんだろうけど、ほとんど他の男たちと差はない。この盗賊団の時流を読んで最初から参加したから今の地位があるだけだろう。

一人一発ずつ、腹や顎に入れていく。壁まで吹っ飛ばして、足元の邪魔にならないようにしていく。偉そうに座っている男と傍に控えていた男の2人だけは動かずに動きを観察している。見られていることは分かっているが、急ぎだから見られても気にしない。


「で、邪魔しないなら見逃してあげるよ」

「動きは大したものだが、そんなもので我々に勝てるつもりか」

「勝てるから言ってる。人攫い程度がプライドあるみたいな話し方しないでよ。お前らはただのクズなんだから」


座ってる方は、転がってる男に多少毛が生えて装備が良いだけ。やろうと思えばすぐに終わる。ただ立ってる方はそこそこ強い。この1か月鍛えたボクジさんとニケンさんの2人がタッグで戦うよりは強い。

まあ2人と戦うにしてもお互いに稽古のつもりでやるから、本気は出さないけど。でも本気でやるくらいの強さはありそうだ。


「ザンガン!!その小僧を殺せ!!!」


言い終わる前にザンガンが襲い掛かってきた。予想通り体術中心に攻めてくる。右拳の突きが顔を狙ってくるので、左腕で受けてで外に流す。お返しに右の蹴りで脇腹を狙うがバックステップで躱される。体重をいつの間に後ろに寄せたのだろうか。とにかく動きが速い。


まあ、じいちゃんほどでもないけど。殺す気で来るから両手両足の攻めは出来る限り流そう。変に受けると衝撃で動かなくなりそうだ。ある程度の実力をお互いに確かめて仕切り直しだ。


突き、蹴り、押して、引いてと体術の応酬を繰り返す。最初は無表情だったが、ザンガンの顔が少しずつ高揚しているのが分かる。今まで鍛えてきた技術を発揮できる機会が作れてうれしいんだね。こっちもじいちゃん以外に体術だけで打ち合える人がいるなんて思ってなかったよ。


改めて距離を置いた時、座っていた男は焦りの表情を浮かべて叫ぶ。


「ザンガン!何をしている!小僧を殺したら、入り口で暴れているという奴らも始末しなくてはいけないんだぞ!さっさと片付けるんだ!」


変なことされないように先に黙らせようと魔力を練ろうとすると、ザンガンが話しかけてきた。


「小僧、名は何と言う。師はいるのか」


あんまり話す気にはならないが、表の方が制圧まで秒読み段階らしい。地下に先行した分裂プルにより、人質として連れ出されそうになっていた人たちの安全も確保済み。プルが何か分からなくて大騒ぎ状態になってるらしいが、今はどうしようもないから放置しておこう。


つまりあとはこの2人、実質目の前にいる渋いオジサンを抑えれば終了になる。ならば少しくらいは話す時間を取っても良いか。


「初めまして。名前はクーロイ。師匠と呼んだことは無いけど、鍛え上げてくれた人ならいるよ。でも勝手に名前をばらまくのは好まないかな」


プライバシーって言っても通用しないと思うけど、わざわざ個人情報をばら撒く必要はないと思うのです。


「そうか。かつて戦った男に似た動きをしていると思ったのだがな。コクソウという名前に聞き覚えはないか?」


あ~。なるほど。聞き覚えはある。旅に出たら一度は会ってみたいと思っている。一度も会ったことがない家族だ。


「会ったことはない。けど、その人が勝ったことない人に育ててもらった」


予想を超えた返答だったのだろう。目を見開いて笑いの三段活用して笑い出した。どんなのかって?

クックック。クハハハハ。アーハッハッハッハってやつです。

まだ笑ってるし。


笑い終わったら、上半身の服を破り捨てる。右胸には皮膚が焼け爛れたけども何とか治った、という傷跡がついていた。ちゃんと筋肉がついてるから皮膚だけにしか痕跡はないな。

目が血走り、先程よりも殺気が濃くなる。あなたのボスが気絶寸前まで怯えてますよ。そして思ったよりもオジサン強いわ。一人で『美食の奇跡』の7人と戦えるかも。


「この傷はコクソウから受けたものだ。あいつに苦汁を舐めさせられてから、流れに流れてこんな小物の盗賊団にいる。獣人に被害を及ぼせば憎きコクソウと相見えるかと期待していたが、奴の父親に師事する小僧をこの手で引き裂けるとは!何たる僥倖か!!」


なんか語りが始まってしまった。このオジサンすごく怖い人だった!


「獣人ではないというのに、ヤツを思わせる黒髪黒目。良い!良いぞ!ヤツを引き裂いているかのような気持ちを味わうことが出来る。気分を落ち着かせることが出来そうだ…」


既に段々が落ち着いてきているよ。そのまま戦いを終わらせるってわけにはいきませんかね。爆発的に上がった闘志を沈めることで冷静に全力で叩き潰したいんだね。

何の前振りもないけど、どうやら育ての祖父の息子、一度も会ったことがない義理の父(?)である黒爪さんの代理として戦うことになるそうです。


でも、オジサンが笑ったり、ブツブツ言ってる間にこっちも戦う理由出来た。元からのやる気が更に増してしまったよ。

お読みいただきありがとうございました。

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