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45盗賊のアジトは襲撃するためにある

まだ何かありそうな感じがするので『美食の奇跡』で一番鋭いであろうヤシタさんにも聞いてみたが。


「もう私は何も感じないがな」


ヤシタさんは何も感じないそうだ。となると俺の気のせいだろうか。俺一人ならともかく、プルも感じているなら間違いは無いはずだ。しかし、襲ってこないならわざわざ手を出すことも無いだろう。モヤモヤするな。


「危険を感じたら、改めて報告します」

「ありがとう。そうしてくれ」


俺が女性ならイチコロになりそうな微笑みでお礼を言われた。ヤシタさんって美形顔なんだよな。当然だけど。


「クーロイを差し出せ、と言ってたよな。ってことは、盗賊兼人攫いだろう?アジトを突き止めておいた方が良いと思うがどうだ?」

「それはやっておいた方が良いとは思うが、まずは情報を出させてからじゃないか?」


盗賊を一斉に捕まえきるかの相談が始まっていた。こういったときは話に加わらないニケンさんに聞いてみた。


「それって急ぐんですか?」

「この人数が潜んでいるなら大きなアジトだし、そう簡単には移動することも無い。ただ、攫われた人たちがいるのなら早く何とかしないと移動させられてしまう。違法奴隷としてどこかに売り払われてしまう。早く助けた方が良いだろう」

「なるほど…。じゃあ急ぎでもないですし、俺が本気を出すとしますね」

「え…、クーロイの本気?」


顔色が悪くなったニケンさんに向かって告げる。


「盗賊に優しく聞く必要は無いですよね♪」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


アジトの場所を吐かせて、襲撃のために移動してきた。襲撃されたところから30分ほど山道を逸れたところにあった。

周りを確かめると植物は切り開かれており、昔は道だったのではないかという痕跡もあった。わりと道幅があるので、大規模に使われていた建物のようだ。


ちなみに捕らえた盗賊の見張りということでウォルさんとイートさんを残してきた。ギセ…俺とお話したのは最初に馬車の扉を開けてフーズさんの氷の塊を顔面に食らった男だ。その様子を見せたせいか非常に大人しくなっており、2人でも大丈夫だろうと判断した。

プルにも分裂して念のため残ってもらっているが内緒だ。プルがあまりにも便利なスライムであることは内緒にしておけとルウネに言われている。


「あの老朽化した建物がアジトなんですね」

「王都から離れた場所にはあるが、騎士団の演習場所として使用されていた砦だ。壁がかなり頑強に作られているだろう?崩れたところは補強はしてあるが、素人の作業だな」

「ボクジさん詳しいですね」

「ま、まあな」


なぜここで動揺するんだ?分からないが、今は関係ないからまた今度思い出したら聞こう。中の状況などについては先程聞き出してきた。


捕まっている人は10人少しいるそうだ。明日には一度移動させる予定だから、すぐに動けば助けられる。残っているのは待機している部隊が2つと幹部の合計70名程度。

アジトの中での役割もあるので、各個撃破していけば大きくは問題ないだろう。あれだけしっかり聞いたのだから、嘘情報ということはないだろう。時間が無かったので急いだけれども。


情報をもう一度頭の中で反芻していた。ふとみんなを見ると何か言いたげな心配そうな顔をしている。どうしたのだろう。


「クーロイの本気に驚いたんですよ」


心配した表情のままでフーズさんが声をかけてくれた。


「生まれ育った村の井戸に毒を入れられたら分かりますよ。こういうやつらには一切の手加減をしてはいけない。やるなら徹底的にやらないと。心の底から反省するように仕向けてやらないといけないんです」


思い出してしまった。フーズさんの方を見るとどう声をかけて良いのか分からないという顔をしている。すぐさま謝って砦の方に目を向ける。

砦の方を見てみると、1つある物見台には一応見張りが二人、門のところにも門番が立っている。ただの盗賊を超えているような備えに見える。


「どんなふうに落としますか?」

「砦を攻めるにしても、まさかこことはな。人の手が足りないな」

「ボクジ、そうは言っても動かなければ。クーロイが一人で乗り込んでしまうぞ」


おっと一対一で話すことが多かったヤシタさんが鋭いぞ。まあ気にせずにいこう。

既に捕らわれている人がいることは確認済みだ。どこにいるのかというと地下室だと聞いている。実際に見てみないと分からないので、中へ侵入するのに手を打つ必要がある。


「いっそのこと俺が一人で行くんで、皆さんは出てきた盗賊を捕まえていってくれませんか?」

「いくら何でもそれは…」


フーズさんが止めようとするが、申し訳ないが反論する。


「俺がただの盗賊に止められると思います?」

「……ありえないね。……人質取られないようにだけ気を付けてね」

「了解です!」


そんな真似する奴がいたら生まれてきたことを後悔する地獄に叩き落としますんで、とは言わなかった。余計に心配させてしまいそうだ。


「せめて正面で敵を引き付けて、アジトで動きやすくした方が良いんじゃないか」


フーズさんがそれでも心配してくれているようで、案を出してくれた。


「それしかないな。まずは見えている範囲のやつから抑えよう。風魔法で音を増幅したものをお見舞いすれば、飛び出してくるだろう」


マチェルさんの案を採用して、段取りを決めて配置に付いた。実行前には物見台の上の見張りを俺が片付け、階段を上がった脇のスペースに転がしておく。見つかったところですぐには動けないように習ったばかりの身動きが取れないロープで縛っておく。そのまま待機だ。

入り口はフーズさんが氷の塊で気絶させておくことになっている。入り口からだけ出てくるわけではないだろうから、出てきそうなところに散らばって待機しているはずだ。

突入の合図はマチェルさんの風魔法。強めに圧縮して一気に解放することで衝撃でアジトを揺さぶる。


ッッッッパァァァァアアアアンンンン!!!!!


俺の隠れている壁も揺れた。耳をふさいでなかったしばらく聞こえなかっただろう大きさだ。属性魔法ホントにうらやましいな。これだけ大きな音が響いたならアジトにも何らかの影響は与えているだろう。


そのあとにボクジさんとニケンさんが声を低めに変えて叫ぶ手はずだ。


「「襲撃だ~~!!!」」


さて、忍び込むとしよう。

お読みいただきありがとうございました。

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