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42同行者改造計画(後衛編2・前衛)

「炎が青くなるのか?」


初めて聞いたことだとイートさんをはじめ、皆が驚いた表情を見せる。原子分子の話って割と近代だったはずだ。自分では確かめたことは無いが温度を上げるつもりでイメージすれば良いはずだ。

違うかもしれないと前置きした上で空気の組成から、燃えるという仕組みの話をする。信じてくれるならより強く空気を集めるつもりで火を出してみるように伝えてみた。

一人で出来ないなら最初はマチェルさんも空気を集める練習がてらサポートすると言ってくれてた。


ざっと覚えているだけの化学の知識を話した後に、イートさんが挑戦してみる。


「我が魔力を糧に顕現せよ、炎よ!」


詠唱に関しては長くなるから省略。ちょっと恥ずかしいなと思ったけど本題はそこじゃない。出した炎は青ではなく黄色から白色だった。

十分に温度は高くなっている証拠だ。試しにとフーズさんに水魔法を使ってもらう。


「MPは10程度で試すぞ」


お互いに当てないように、横並びになる。しばらく飛ばした後で当たるような角度で打ち出した。


バヂュッ!!


音を立てて蒸発させ、イートさんの火球だけが残ってまっすぐ進んでいく。そのままは危なかったので、魔力弾を慌てて速度重視で飛ばして霧散させる。

ほっと胸をなでおろしてイートさんを見ると、涙を流して感謝された。


「ありがとう!これで俺はもっと強くなれる」

「俺たちからも感謝を伝えたい」

「イートはクエスト失敗は俺のせいだってめちゃくちゃ落ち込んでたからさ。これで立ち直ってくれるなら頭を下げた甲斐があるわ」

「それは目の前で言ってやるなよ」


口々に喜んでいる。おそらくこれがイートさんの本来の表情で、この雰囲気が『美食の奇跡』のいつも通りの空気感なのだろう。


「仲良いですね」

「じゃなければ何年間もパーティ組めないからな。男だらけでやっていくのにもコツが必要なんだぜ。」

「そうだよ。パーティを長く続けるコツは晩飯のときにでも話そう。もう今日は微妙な時間になったし、この水場で野宿にしよう」


ニケンさんとボクジさんの言葉にイートさんが反応する。


「今日は久々に俺が本気で飯を作るぞ」

「ようやくいつも通りになったな」

「本当だよ」


色々といじられながらも調理準備に入るようだ。せっかくなので野営の準備についても教えてもらいながら野宿の一日目を迎えることになった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


後衛組が料理をしてくれるので、御者をしていたガッドーさんとニケンさんには悪いがそのまま前衛の鍛錬をすることになった。

食料は時間短縮のため、コレクションルームから提供した。途中で補充する時間さえ確保できれば、提供するのは気にならない。


「前衛はとにかく体術です。体が動けばなんとかなります。全員持ってますか?」

「それは問題無い」

「じゃあとりあえず手合わせです」


ニケンさんはまだ身長が低いから良かったが、ボクジさんにウォルさんはさすがに身長が違いすぎる。2組に分かれて行った。

軽く30分ほど行ったが、大きい2人はまだ余裕があるも。ニケンさんは俺の相手がしんどかったようで大の字に転がって息切れを何とか整えようとしている。


「ニケンさんは身軽だけあってスピードはありますね」

「10歳児の、癖に、力と、体力が、ありすぎ…」

「どうやってそこまで練り上げたのか」


ウォルさんの言葉にボクジさんも頷く。


「体術は3歳から仕込まれてますから。村の友達と2~3時間走り回るとかもしてましたし」

「スキルの大成は3歳から、というやつだな」

「ことわざ通りに仕込む親はあんまりいないと思ってたけどねぇ」


いい加減何かするたびに引かれるのはイヤだなぁと思いつつ、じいちゃんとばあちゃんの教育は最先端であることも誇らしい。


「じゃあニケンさんは聞くだけで構わないので、どんな前衛になるかですね」

「俺はダメージを如何に与えるかだ」


ボクジさんは大剣使い、対象にダメージを与えるのが役割だ。


「だったら、このスキル持ってます?」


おススメのスキル2つを聞いてみる。


「いや持ってないが、それにそれは攻撃に使えるスキルとは思っていなかったのだが…」

「ものすごく使えますよ。出会ったことのある魔物なら経験によって、出会ったことがない魔物でも経験を積めば直感が働きます。俺も可能なら身に付けたいくらいですし。何よりも既にパーティ内に持っている方がいるので、長期的に見て育てましょう」

「あとは基本を徹底的に身に付けるのか。纏気など苦手で使っていなかったな…」


纏気は魔力とは違って、どちらかというとHPを消費するようなスキルだ。長期で活動できなくなるし、鍛錬するにしても一人でやるのは危険なので人気が無い。


「普段使いにするための方法もちゃんとやりますから。まずは勘を取り戻してください。で、ウォルさんには提案なんですけど」


ニケンさんは呼吸は落ち着いて座る体制にはなったが、水分を補給してまだ話したくないらしい。目が一番最後で良いと言っている。それならばと考えていたことを伝える。


「もっと大きい盾を装備してタンクをやることにしませんか?」


他人の一生を変える発言のため真面目に行う。その気持ちは伝わったようだ。口ではなく目で語る男、ウォルである。


「理由は前に戦った時です。前衛が3人とも攻撃役だったために、簡単に後衛に遠距離攻撃を叩き込めました。最初からこのパーティは防ぐ意思が無いと分かったので」

「昔から攻撃だけで何とかなっていたからだな」

「そうだと思います。俺も戦ったことはなく、聞いた話ですが。B以上の魔物になると体も大きく、一撃も重いです。攻撃を引き付ける役割があった方が安定すると言われました」


ここまで言って、ボクジさんとニケンさんが苦い表情になっていることに気づく。ウォルさんは、受け入れてくれそうな表情をしている。


「ウォル、本当に変えるのか?」

「ああ。どこかで言おうと思っていた。このタイミングが良いだろう」

「何か…ありました?」


正に『美食の奇跡』が失敗した例の依頼がBランクの討伐だったそうだ。ワイバーンが単独なら討伐できると思ったが、番だった。攻撃を抑えることが出来ずに失敗になってしまった。

仕留める威力不足をイートさんが自分を責めていた。それとは別に守ることが出来なかったことを前衛、中でも一番体格の良いウォルさんも自分に出来なかったことを悔いていた。


結局は次の街でタンク用に使える両手盾を調達することになり、それまでは盾術を育てるべく扱うことになった。間に合わせとして木材を提供して大きめの盾を自作してもらうことになった。


「俺は躱しつつ手数で攻める今のスタイルを維持するぞ」


体力が復活したニケンさんはいつも通りの高いテンションで言ってきた。


「なら、ボクジさんと最初はやることが同じで良さそうです。方向性が決まったので、二人も木はあげますから自分の鍛錬用の剣を作成してください。出来上がったら1対2でやりましょう」


タンクを育てるには攻め手が多い方が良いだろう。タンクはそんなに詳しくないけどやれるだけやってみよう。

お読みいただきありがとうございました。

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