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41同行者改造計画(中衛・後衛編1)

まず確認したのはどんなスキルを持っているのかだが、神殿にて鑑定してもらわなければならない、という常識を俺は知らなかった。

結構な大金を寄付しなければならず、そんな金を払うくらいならその町の名物を食う、が方針のパーティは自分たちのスキルを長らく把握していなかった。


「大きくは問題ないんだぜ。スキルなんて1年に1個新しく身に付けば天才の領域だし、スキルが成長したかなんて自分の手ごたえで分かるからな」

「じゃあ最後に鑑定をしたのはいつですか?」


ボクジさんに向かって聞いたが、すぐに目をそらし、見られたマチェルもすっと目をそらす。順々に目をそらし一周してボクジに返ってきた。


「4年前かな?」

「5年は前だと思うぞ」

「イヤ、俺らが6年前に加入したときのが最後じゃないか?」

「俺らはそうだと思うけど」


自分たちのステータスよりも美味しいものを追い求めるあたり、パーティ名に恥じない集まりだとは思う。思うが俺とは思考が違いすぎる。


「まあ常識とは成人するまでに身に付けた偏見とも言いますから、良しとしましょう」

「そんな言葉あったか?」

「昔読んだことのある本に書いてありました」

「難しい本を読んでるんだな」

「というか、クーロイ君はまだ成人まで5年あるじゃないか」


細かいところはツッコまないでください。というかイチイチ騒ぐな!小学生か!


「分からないなら、分かってる範囲か必須のスキルから確認していきましょうか」

「「「「「お願いします!」」」」」


急に怯えながら素直になられても困る。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「前衛は体術と纏気、後衛は魔力操作と魔力集中、中衛のヤシタさんは斥候と弓使いという役割から個別にまず相談しましょうか」

「既に持っているスキルの場合はどうするんだ?」

「ひたすら上がるように使ってください。毎日の積み重ねです。個別相談はあとでやりますからまずは基本の徹底です。1か月で伸びることなんて無いですから、とにかく毎日やるんです」

「常にやっているのか。そりゃあ強くなるよな」

「規格外すぎるがな」

「さっさとやれ」

「「了解です!」」


なんか初対面の時に比べるとこの人たちのキャラが違いすぎないだろうか。奴隷契約って何か精神的なところにも作用するのだろうか。それは後で良いや。


「では、ヤシタさんはどういった方向で強くなりたいですか?」


同じポジションがいないゆえに唯一の力を伸ばした方が良いだろうとと最初に話をしてみる。


「弓だけでは決定力に欠けるのでね、何か決定力のある技術が欲しいと思っている。もちろん斥候という役割も伸ばしていきたいが」

「なるほど、だったらこのあたりの察知系のスキルは持ってますか?」

「斥候の基本だな」

「う~ん。ひとまずそれはコツコツ鍛えましょう。プルは俺よりも察知高いので参考になると思いますが、言ってることは分かりますか?」


ばあちゃんは意思疎通できていたけれどヤシタさんはどうだろうか。


「断片的に、単語なら通じる感じだな」

「なら良かった。ではそれでいきましょう。これを進呈しますので使ってください」

「この枝は、世界樹!?」

「見ただけで分かるんですね?」

「む」


しまったという顔でしかめるヤシタさん。踏み込んだ話はあとにするとして、少し話をずらす。


「何となく感じたことない気がしたので、ならあとは、属性魔法って使えたりします?」

「あぁ、それなら…」


あれこれと話をして、良さそうな落としどころを決める。


「しかし、こんな貴重なものをポンと渡すのか…」

「偶然手に入れたもので、使い道が思いつかなかったんですよ。使わずに置いておくよりも必要な方に譲ります」

「ヒントも得られた。感謝する」


声を小さくして聞く。


「お互いに秘密を抱えた感じですし」

「よく気づいたね。隠しているつもりだったんだが」

「話にしか聞いたことがなかったんで驚きです」

「パーティにもバレてはいなかったんだが」

「たまたまですよ」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「後衛組の魔法の威力は以前に見ています。魔力集中が上がればそれだけ威力も増すのでがんばりましょう」

「魔力集中って身に付けるだけで5年はかかるはずなのに…」

「10歳児が出来るんです。21歳が出来ないはずはない!」

「年齢ごまかしてない?」


やたらと絡んでくるのは水魔法使いフーズさんだ。盛り上げるのが決して上手ではないが、何か無理してがんばってる印象を受ける。


「ステータスの偽装って出来るんですか?」

「そういうスキルがあればね」

「あるんですね」(スキル一覧でもう一度探しておこうかな)


学ぶことに貪欲なのは風魔法が得意なマチェルさんだ。土魔法も使えるので、3人いれば基本4属性が揃うというお得なトリオとなる。


「基礎を固める以外に何か出来ることはないだろうか」

「属性魔法は使えないので、何とも言えないですね」

「魔力の形を変えてたのは何だったんだ?ディースに当てたときは形が違っていたじゃないか」

「そんなことできるのか!?」


横からボクジさんが言ってくる。後衛組は気絶させたから見てなかったな。


「魔力弾丸のことですね。ただの球形と違って飛ぶスピードが速くなるんです。見てみます?」


魔法使い3人に加えて、先程の提案を受けて別の練習をしていたヤシタさんも激しく頷いている。一旦水場を見つけたため、休憩がてら見本を見せることになった。

身長と同じくらいの岩に向かって、魔力玉・魔力弾・魔力弾丸を一発ずつ当てて威力の違いを見せた。詠唱してないって驚かれたけどここでは割愛する。


「凄いな。一番最後の魔力弾丸とやらが速いのは込める魔力の違いか?」

「それもありますけど、螺旋状に回転もさせています」

「ラセン?」


見本で形を変えただけの魔力玉と出して、目の前で実演しながら説明する。


「こういう感じでグルグル~と回転しながら前に進んでいるんです」

「なんか無駄のように感じるけどな」

「イメージの違いですね。この方が安定して飛んでいくイメージなので。試しにやってみたら効果あったので、確立するまで練習しました」

「発想といい、確立させたことをさらっというあたりおかしな奴だ…」


フーズさんの呟きに、ニケンさんが食いつく。


「そんなにすごいことなのか?」

「魔法学校主席卒業レベルだよ。俺たちも自分なりに確立できたのは卒業してからだ」

「そういえば、お祝いでいつもより良い店に行ったな」


ニケンさんの覚え方もどうかとは思うが、ツッコむ気にならないくらいにはショックを受けているフーズさん。できたものはあきらめてください。

そう思っていると、火魔法使いのイートさんが真剣な顔で目の前に正座する。


「火魔法を強くするために何か良い方法を教えてくれ。頼む」

「そんなことしなくてちゃんと教えますから!顔上げてくださいよ!」


10歳への土下座はやめてほしい。


「いや、ボクジはさっき代表してお願いしていたが、本当は俺が一番最初に言わなくてはいけなかったんだ。奴隷契約を結ぶきっかけになったのは俺の失敗だから…!」


ミスした原因はイートさんだったのか。知らなかったことで言葉に詰まるが、付き合いの長いメンバーが気にするなと声をかける。それを遮ってもう一度訴える。


「さっきの話を聞いて、チャンスだと思ったんだ。さっき『安定して飛ぶイメージ』って言ってたよな。俺が火魔法が得意なのはそれが関係しているかもしれないんだ」

「イートの研究テーマだな」


何のことかという顔をする俺と前衛組にフーズさんが説明する。


「魔法学校では実技以外にも理論を学ぶ。理論を学ぶ奴は冒険者になったりしないんだが、イートは変わり種でな火魔法の威力調節がテーマだったんだ」

「料理のときに火を使っていて疑問だったんだ。火の大きさは様々あるのに、火魔法の威力が一定なのはなぜかって」

「それで弱くは出来たんだ。料理の火を思い浮かべれば良かったから、それは今までも実現した者はいた。」


イートさん、フーズさんと続けて説明してくれる。


「それで、強くは出来なかったってことですか?」


俺の質問に頷きで返す3人。山火事とかを連想して大きな炎が出せてもそれはまた違うのだろう。それであれば持つイメージとは。


「青い炎とかって知ってます?」

お読みいただきありがとうございました。

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