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37権力に頼ってしまった

「「領主様!」」


誰かな?と思ったら領主様だそうだ。叫んだ内容からいって俺を探しているんだろう。


「ユーシル村出身は俺ですが…」


と手を挙げた。なんか勢いで思わず立ってしまったぞ。ヅカヅカとほぼ走って近づいてきた。


「そうか。君か!クーロイ君という名前で合っているかな。何やら面倒な事件に巻き込まれているようだな。君はユーシル村でも、将来に希望が持てる有能な少年だとの噂をあちこちから聞いているぞ。ぜひ私とも友好関係を築きたいと思っていたんだよ!」

「そ、そうですか。ご期待に応えられるように精進してまいります…」


領主様の息切れが激しい。顔が近いから圧もすごい。イライラを吹き飛ばされてしまったよ…。


「うむ。幼いのに良い返事だ」

「ありがとうございます」


領主の登場で場の雰囲気が変わった。


「領主様、この子はそれほどの子どもなのですか?」


ガンドが不思議そうに聞く。ネイスはユーシル村と聞いてから冷や汗をかきだしてるよ。


「馬鹿者!お前は何度言えば物事を覚えるのだ!3年前のユーシル村の事件解決に貢献した少年の話を忘れたのか。その時に名前は公表されてなかったが、現在10歳のユーシル村出身で唯一人族の少年!これだけ条件が一致すればクーロイ君はその当人だ!そうだね?」

「いや、当人ですけど。俺のことってそんなに広まってるんですか?」


何を言うのかって顔になった領主様が説明を続けてくれる。


「それはそうだ!その時にでた話と『馬鹿果報』から聞いた話を繋げれば誰でも分かる。『馬鹿果報』はすごいぞ。彼らは移動が速いから、情報を早く広めるのにも一役買っている。彼らは動くたびに過去の事件について広めているから国の重鎮はほぼ知っているぞ。個人名は私が独自に調べたがな。全体像を知らないのは情報に疎いマヌケだけだ」


ガンドの顔色が悪くなった。もう一段顔色悪い奴は口が、こいつが、ばかな…って動いてる。


「それと聞いておきたいのだが、君を育てたのは獣人の英雄や獣人の英知と呼ばれた方々で間違いないかね?」

「じいちゃんとばあちゃんのことですか?そんな呼ばれ方をしていたのは2人から聞いたことがないので何とも言えませんが…。今度連絡を取ることがあれば聞いてみます」

「知らないのか。お二人とも黒豹の獣人と聞いているが。」

「それは合ってます」

「ならば間違いないだろう」


あの二人は過去に何をやったんだ。旅立って3日でもう帰りたくなってきたぞ。手紙書いても教えてくれなさそうだな。ばあちゃんですら直接聞いても教えてくれない気がする。これについてはを村長にお土産と引き換えに交渉しよう。

でもユーシル村ってことがばれるとこういう扱いになるわけだ。あまり言わない方が良さそうだ。


「さて、準備があるので先に聞くが。クーロイ君を今日の晩餐に招きたいのだが、来てくれるかね」

「えっと…」


これって行かないとダメなのか迷う。貴族とは関わりあいたくないのだが。領主様とは逆側からボクジさんが話しかけてくる。


「こういうお誘いは受けるのが基本ですよ」


マジかよ!でも領主さんの目もマジだよ。行きたくないけど…仕方ないか。


「わかりました。行きま…、お伺いします。ついでにこの美食の奇跡も良いですか?」

「よし!すぐに手配しておこう」


領主様と一緒にいた執事らしき人が素早く部屋から出ていった。あの人はいつからいたんだ?気が付かなかったぞ。

美食の奇跡が声なき抗議をしているが、無視する。犯罪の容疑者から一転、貴族の家で食事だもんね。振れ幅がすごい。


「では現在はどういう状況かな?」

「あ~。説明するとですね――」


再度実際の出来事と冒険者ギルドの報告書との違いがあること、冒険者ギルドの報告書を理由に一方的に結論を出されそうになったこと、おまけにディースの行動が歪められてギルドマスターに伝えられていることを話した。途中でボクジさんもフォローしてくれた。


ガンドは何か状況が悪いことを察して固まっており、ネイスに至っては真っ青だ。ギルドマスターがいない間の好き勝手を握り潰すつもりが、外に漏れていたのが分かったからかな。

俺も3年前の荒い行動がこんなところに響いてくるとは思わなかった。証拠や痕跡残すと村に迷惑がかかるからってものすごく気を使ったからな。ユーシル村に手を出すと文字のごとく消されるってなったのか。本気で恐怖に思われたんだ。獣人を受け入れようってよく思ってもらえたな。目新しいものを村の名前で放出したのも良かったのかもしれないな。


話を聞き終わるころには領主様の表情は引き締まっていた。この顔が通常だよね。さっきのがレアなんだろうね。


「私のところに来た連絡はクーロイ君の話と一致しているね。先日の件も今日の件に関してもディースという不届き者がクーロイ君を襲撃したともこちらには報告が来ている。情報源は領主直属の人員であると言っておこう。冒険者ギルドの中で起こった件が正確でないとはな。一体どうなっているのか?」

「そ、それは……」


説明しようとするが、盲目的にあがってきた内容を信じていたガンドには何も言葉が出てこない。

しかし今日の襲撃のことまで把握しているとか領主様の情報収集力すごいな。え?プルは気づいてたの?教えろよ。察知系ではプルに勝てない!くやしい。


「ギルドマスターが説明できないのであれば、サブマスターから説明を求める。事務の統括は貴殿の方が管轄と聞いているが?」

「そ、それはですね…」


言い訳も思いつかないのだろう。内側の隠蔽工作はしていたけど、外に漏れるとは思っていなかったんだね。待つのが面倒だと領主がしびれを切らすのが早かった。


「では領主の名で冒険者ギルド本部に調査依頼をかけさせていただく」


ガンドの見過ごしてきたこと、ネイスのやっていたことも明らかになるだろう。それと、領主が調査するならついでにお願いをしておこう。


「お願いがあります。よろしいですか?」

「クーロイ君が?今回の件に関しては徹底的に調査するぞ?」


さっきまでふてぶてしかった二人が、ビクついていますよ。


「今回の件だけではなく、ネイスがサブマスターになってからとディースがこの街に来てからも調査してください。他の冒険者に暴行を加えても見過ごされていた可能性があります」

「何だと!?」


ギルドマスターのガンドが声をあげる。この人どれだけ把握できてないんだろう。


「ディースと鍛錬場での一件があったときに、ディースを見て異常に怯えていた方がいました。その件についてもネイスが隠蔽したのだと思います」

「そんな…まさか…」


項垂れているところ悪いけどギルドマスターの器じゃなかったんだろう。高名な冒険者だったんだろうけど必要な能力が違ったんだろうね。ある意味被害者です。


「2か月ほど前から遡って隠蔽を確定させた後に、より詳しく調査することになるだろうか。ネイスはなぜだ?」


いきなりの犯人扱いだから疑問なんだろう。


「勘です。納得できないかもしれませんが」

「………ふむ。良いだろう。一番の容疑者であることは間違いない」


領主様にじっと見られたけど、なんとか納得してくれた。あとで追及されたらどうしよう。

ガンドは浮上出来無さそうなくらいに落ち込んでいる。ネイスはこの世の終わりのような顔をしている。

結局じいちゃんとばあちゃんの威光を借りた気がする。まだまだダメだな。


「あとはお分かりだと思いますが、門の衛兵の中にも」

「そうだな。恐らく金でも掴まされた者がいるのだろう。そちらも調査する」

「ギルド内ですがこの二人と現場で働いている人に溝があります。調査は現場の方々から直接聞けば早いです」

「有益な情報をありがとう」

「いえいえこれくらいは」


あとはこっそり領主様に聞いておく。


「ついでにサンドバって家のことも教えてもらえますか?たぶん敵と認定することになりそうなんで」

「……サンドバか。この件に絡むと話が大きくなるぞ?」

「本当は目立つのはイヤですけど、故郷に手を出すなら磨り潰します。色々と面倒な相手だったりしますか?」

「ふむ。子どもらしからぬ言葉だが…良いだろう。ここでは何だ。改めて場を設けてお伝えしよう」

「ありがとうございます」

お読みいただきありがとうございました。

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