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36間違った信頼の仕方

とりあえず冒険者ギルドまで戻ってきた。俺の引き連れている面々を見て不思議そうな顔をした受付嬢は一旦奥に引っ込んだ後、応接室へと案内してくれた。3階なんてあったんだ。ロープぐるぐる巻きにした犯罪者は俺が引きずって階段を上がった。


副リーダーさんの名前はボクジで、元のパーティ名は美食の奇跡だそうだ。気絶させた魔法使い3人のうちの2人が料理がめちゃくちゃ上手らしい。美味しいものを食べることに意気投合した男7人パーティだそうだ…。リーダーの剣士、前衛の戦士と剣士、魔法使いが3人、斥候が1人だそうだ。

この人、というかパーティには攻撃されそうにはなったが事情が事情のためこれ以上は責めないことにした。パーティの目的に心惹かれたのは否めない。ボクジさんの名前もなんか同情を禁じ得ない名前をしているし。

それよりも、無様に転がる元凶の方が優先事項だ。見張りを掻い潜って逃げられた、と説明されたがそんなわけない。


犯罪者がこの図体で宿に戻って、ボクジさんパーティを完全武装で引き連れて街を出るなんて無理だ。確実に2回は見逃されないと襲撃は叶わない。

冒険者ギルドにいる誰が手助けをしたか分からない以上は自分で見張ることにした。


目の前のテーブルの前には折った大剣を置いている。目の前には、如何にも筋肉質でガタイの良い中年まではいかない眼帯を付けた男性と冒険者とは思えない貧相なちょび髭オヤジが座っている。

一応俺も座り心地の良いソファに座っている。後ろには目を覚ました人も含めて美食の奇跡が全員立っている。


眼帯はギルドマスターのガンドさん、ちょび髭はサブマスターでネイスというらしい。まあネイスが悪意満載なのは分かっているのだが。

言い訳を聞いた上で詰めようではないか。問答無用で襲うなんてことは、人目があるときはしない。


「ディースが襲ったと主張しているのなら、冒険者ギルドを預かる者として形式として一応詫びておこう」


そうは言うが、全く気持ちが入ってない。面倒そうでもある。サブマスターに関しては明らかに面倒だと顔に出ている。


「謝罪は受け入れます。そんなことよりも僕にとってはこの犯罪者がユーシル村を狙っているということの方が重大です」


指で誰のことかを示すと、ガンドさんは目を鋭くし、ネイスは鼻で笑う。


「それは確かなのか」

「はい。不当な奴隷契約を結ばされているこちらの美食の奇跡全員が証人になります」


「しかし、それはこちらのパーティが奴隷を脱するために嘘を吐いているのではないですか?」

「いいえ、ネイスさん。彼らがここに生きて立っているのは結果論です。僕への攻め方を間違えていたら彼らは今ここにはいません」

「はぁ?」


なぜこんなにも高圧的なんだ。そして、後ろの美食の奇跡の緊張が伝わってくる。


「彼らは投降した時に僕に対して嘘を吐かないようにと脅しました。他のメンバーが何を言っているか分からない状態で聞いた人もいます。その上で意見が一致したんです」

「バラバラに聞いて同じ話をしたのなら状況としては正直に話しているだろうな。ギルドマスターとしても確認するが、美食の奇跡は嘘はつかないな?」

「脅したのならどこまで本当か怪しいものですけどね」


ガンドさんはただ聞いている人の圧ではない。後衛は特にビビってるよ。ネイスは揚げ足を取る。けど確かに正直に言わない方が良かったな。代表してボクジさんが話す。


「我々は以前ダシャボマの町にてギルドを通さない闇クエストを受けました。そのクエストに失敗し、違約金だけでなく賠償金を上乗せされサンドバ家の指示でディースと奴隷契約を結ばされることになりました」」

「自業自得とはいえ、迂闊だったな」

「申し訳ありません。次からは必ずギルドを通すことを誓います」

「それぞれのランクにも影響があると思え。どうなるかは改めて伝える。……続きを」


ギルドマスターはこういう時に厳しいことを言わないといけないね。


「はい。それからディースに従うことになってからはまっすぐにこの町まで来ました。ディースの言う必要な荷物が届かず、2か月ほど滞在しています。つい3日前の晩に届きました」

「ちなみにその荷物はどこに?」

「ここに来る前に宿に行ったのですが、無くなっていました」

「は~。残念ですねぇ」


イチイチ腹立つな、ネイス。


「それで目的は分かりませんが、目的地がユーシル村であることはホーグラッドにいることからも間違いありません」

「今日の件については?」

「先日ギルドにて拘束されたディースがいきなり帰ってきました。すぐに街を出ると急かされ、クーロイくんを尾行することになりました。山中にて襲撃しましたが、返り討ちに会い、あとはご覧の通りです」

「わかった」


ボクジさんが下がってまた一列に並び直す。


「それでクーロイ君、キミには2日前の事件についても確認したい。」

「はい」

「聞いたところによると、君がいきなりディースに襲い掛かったと聞いているが…」

「はぁ??」


ネイスがガンドから分からないように笑っている。お前隠す気あるか?


「どこでどう捻じ曲げたんでしょうか」

「受付からの報告でそう上がってきている」


報告書を見せてもらうと、登録待ちをしていた少年が『優しく教えようとした』ディースを鍛錬場に連れていき、ボコボコにしたとされている。

それを見て呆けていると、ガンドさんが続ける。この人ヤバイ。身内の言うことしか信用しないタイプか?受付の人の話すら聞き取りしてないのか?


「これは誰が書いたものですか?」

「受付の責任者が作成する。そのあと上役のチェックが入り、問題のあるものは私のところに回ってくる」

「紙の上での報告はこうなんですね。失礼ですがギルドマスターは2日前には冒険者ギルドにはいなかったのですか?」

「ああ。昨日まで出張でな。現場にはいなかった」

「受付の方たちに聞き取り調査をしてください。これに書いてあるのはデタラメです」


こちらの不機嫌さに気が付かずにガンドは話していく。


「そんなものは必要ない。冒険者ギルドに勤めている者が嘘などつかない。ネイスも報告が上がった時点で調査を行った上での報告書がこれだ。小さい君でも分かると思うが、教えようとした人は殴ってはいかん。また、ディースは危険なところに行こうと君を助けに行こうとしたと聞いている。危害を加えるなど以ての外だ」


うん。我慢の限界かな?


「クーロイ君はE級での登録を一時停止して、F級としての無料奉仕を。不服なら登録の永久不可だ」

「納得できません。美食の奇跡の証言はどうなるのですか」

「闇クエスト引き受けるようなものなら信用は一段落ちる。私が信頼できる者の報告と合わせて判断する。その判断を私は許されている」


ダメだ。冒険者ギルド腐ってた。もう良いや。暴れてしまおうかな。


応接室の扉がガン!!と開き、見知らぬセンスある服を着たおじさんが入ってきた。


「ユーシル村から来ている少年はどこだ!!!」

お読みいただきありがとうございました。

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