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35領主の苦悩

短いですが1話にさせていただきました。

私はホーグラッドの街を管理しているオビール・フォン・パントベンだ。このアキゼレン王国で子爵の地位を頂いている。領主の会議で街を空けていた私は緊急の連絡を受けた。今は急いで我がホーグラッドの街に戻っているところだ。


原因は3年前に遡る。ミルズの町を任せていた町長と商人がよりにもよってユーシルの村に手を出した。やつらは人族至上主義だった。ちゃんと身元を調べておけばこんなことにはならなかったと後悔した。

その村には獣人の英雄と同じく獣人の英知と呼ばれた夫婦が住んでいる。我が国が数十年前に獣人族に交渉して住んでもらうことになった村だ。

武力的にも外交的にも手を出してはいけない村だ。あの村の南には世界樹の伝説があるのだ。しかし、調査隊を送っても全く見つけることが出来ない。しかし、蔑ろにするわけにはいかない。人族よりも感覚が鋭く自然を敬う獣人たちに住んでもらうことになった。当時王が自ら交渉に当たられたことから、貴族なら知っていて当然のことだ。それを王国からも念を押されて地位についているはずなのに、やらかしやがった。


よりにもよって井戸に毒を入れるという完全に敵対行動を取った。もしかしたら獣人に一帯の街は全て滅ぼされるかもって思った。もうダメだと…。

しかし、首謀者やその協力者が行方不明になっただけで済んだ。一応捜査したけど、痕跡が何もなかった。獣人という証拠が見つかってしまえばややこしいことになったが、そんなものすら見つからなかった。

あくまで被害者という立場からもう一回キチンと過去の約束を守るように念押しされた。

安心したさ。これでもう大丈夫だと思っていた。


あ、あとでもう一つ要求が来た。その事件を解決に導いた少年がいたらしい。毒を使った犯人を捕らえ、村人の解毒に貢献したそうだ。獣人の村なのにその子は人族らしい。

その人族の子は当時は7歳、今10歳だな。冒険者になりたいそうで、村を出たら寄るのはホーグラッドだ。

今や国中に轟く『馬鹿果報』のパーティもハウスをホーグラッドに置いている。これは以前の事件抜きにしても会っておくことはしたいと考えていた。それなのに、それなのに!


たまたまとはいえ街に滞在していた悪名高きサンドバ家のものがその少年を襲ったらしいのだ。まだ登録途中であったために一般人の少年を、だ。

非常にまずい。3年前でユーシル村の国に対する印象は最悪になったはずだ。それから色々なものやアイディアがユーシルの村からもたらされた。

普通ならばもう少しふっかける貴族や商人も下手なことをすると消されると尻込みして対等なやり取りとして受け入れた。質が高い品に眼の色はすぐに変わったが。ブランド品として出回るようになったので、今では喜んで取引をしている。


その少年に関しては『馬鹿果報』のものからも絶対に手を出すなと言われている。英雄と英知が育てたからだ。

もうまずい予感しかしない。何とか害意が無いことだけでも伝えなくてはならない。


「オビール様!街が見えました!」

「急げ!」


何とか間に合ってくれ、という願いは叶ったかって?

サンドバ家の者がギルドの見張りをなぜか解かれ、少年を再度襲い返り討ちにあったと報告を受けた。馬車の天井が見えたところまでは覚えている。

お読みいただきありがとうございました。

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