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34とりあえずもう一度顎を狙う

まだ何とかなると思っているのは、―――名前忘れた、オッサンだけのようだ。副リーダーは若干あきらめ顔、残りの2人は怯えている。


「降参するなら後ろの荷物運びと正直な自供で許してあげるよ。あとの共犯者から何まですべて吐く約束ね。後ろに下がって倒した奴らの介抱してくれないかな」

「下がったらてめぇらから殺すぞ」


オッサンが指示を上乗せしてくる。そうなると残りの3人は動けない。手の届く範囲にいるのだ。オッサンの持つ両手大剣だと切られなくても重量で押しつぶされるだろう。

二撃目で一人が潰されたらそのまま全員切り倒されるだろう。顔が青くなって動けない。仕方ない。


「魔力弾丸」


今までの魔力弾を銃弾の形にして激しく回転させている。5発ほどあるが、狙いはひとまずオッサンだけだ。この世界にあるかどうか知らないが右手を銃に見立てて人差し指で狙いを付ける。


「ばん!」


ガン!!


一発だけ放つと魔力弾よりも速いスピードで飛ぶ。オッサンの胸当てに直撃した。壊すまではいかないものの、派手に吹っ飛ばして体勢を崩させる。


「動け!」


その声でハッとした3人は、オッサンの間合いには入らないように遠回りして後ろの4人の回収に向かう。


オッサンは体勢を立て直すと、こちらを見つつも怯えていた二人の方に攻撃を加えようと走ろうとする。直線で当てられないように木に隠れて移動しようとする。


甘い!それくらい当てられる!


顔面目掛けて二発目を放つ。今度は大剣で防がれた。そのまま残りを左肩と両膝を同時に狙って放つがこれは大きく横に飛ぶことで躱された。

元々オッサンの目をこちらに引き付けるためだからこれで良しとしよう。


「クソガキが」

「他に言葉知らないの?」

「殺す」

「同じことばっかり言ってたら芸が無いと思われるよ」


頭に血が上っていると行動は単純になる。ようやくこちらを襲うつもりになってくれたようだ。一対一の状況が作られた。今回も武器無しでいいか。


大きく息を吸うと今度は間違いなく俺を襲うために走ってきた。


「痛い目見て這いつくばりやがれぇえええ!」


思い切りは良いが、酔っていた時と同じ順番で攻撃を仕掛けてくるので同じように避ける。一回見てるから避けるのは楽だ。力だけであまり考えるのは得意ではなさそうだ。

その間に回収が終わった3人は、副リーダーの指示で離れたところから見ている。


「じゃあ終わらせようか」


こちらが攻めようとすると微かに記憶があったのか、攻撃が加えられないように大剣を防御に回す。特に顎の防御が手厚い気がする。なら顎を狙ってあげよう。

向こうとは違って攻撃はしない。まずは大剣の腹に踵で回し蹴りを入れる。妙な手ごたえがあった。あまり手入れをしていないのか、古いものを使っているのか。武器破壊が出来そうな気がする。先に折ってしまおう。

顎に向かうと見せかけながら大剣に衝撃を与えていく。何度か繰り返していくと十数回目の攻撃である右肘で打ったときに音を立てて割れた。


「鉄の大剣を割った…?」


副リーダーの呟きが聞こえた。全力で魔力関連スキルの強化をすると何とか出来るんですよ。


目の前の出来事が理解できずに固まったオッサンの手を蹴り上げて、大剣の残りを手放させる。

懐に飛び込んで、下からオッサンを見上げる。虚ろになった目に徐々に恐怖が濃くなっていく。にっこり笑った後、ガラ空きになった顎を右の掌底でかちあげた。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


カバンからと見せかけてコレクションルームから台車を出して、気絶した5人を運ばせる。オッサンだけは防具を全部剥がし、ロープで縛っている。

ほとんど血が出ていないのだから感謝してほしいものだ。


3人が台車を引っ張っている周りで、常設になっていたものを集めていく。


「薬草見っけ」

「この果実も集めるんだったな」

「この木も薪として使いたいってあったな」


大人の歩くスピードに離されないように、ちょこちょこ動きながら回収していく。川までの道が整備されている割に素材は放置されているようだ。

自分で探すだけではなく、プルがどこにあるかを教えてくれている。見回すことなく回収して移動してと繰り返すだけの作業だ。

ただ、3人の顔色は悪い。これからのことを考えて悲観しているのだろう。仕方ないと思ってくれ。そうこうしているうちに平地まで下りてきた。


「おじさん達さ、先に聞くだけ聞いておいても良いかな」


大げさに反応して副リーダーが口を開く。


「知っていることなら話す。聞きたいことは何だ?」

「じゃあまずは何が理由で襲われたの?」

「ディースが恥をかかされたから潰すと言っていた。あの大剣はあいつのお気に入りでな、借金してまで買ったものだ。あれで獲物を甚振るのが好きなクソ野郎だよ。だが、俺たちはあいつに逆らえない。例え気絶していたとしても、そいつにとって直接害になるようなことはできないんだ…」


怒りの表情でオッサン改めディースを睨みつける。ただの仲間ではないということかな?


「パーティ組んでる仲間じゃないの?」

「違う!俺たちはこいつに奴隷契約で縛られているんだ。」

「奴隷契約か~」


初めて会うのがおじさん・お兄さんの奴隷ってどういうことよ。歩きながら聞いてみると、元々は副リーダーのおじさんがリーダーのパーティだった。

ただ、依頼を失敗した時に違約金だけでなく、事前に説明がなかった法外な賠償金を要求されたそうだ。ギルドを通さなかったため、保護してもらうことが出来ず奴隷になるしかなかった。

借金奴隷の中でも軽微な命令の強制くらいで、全力で逆らうことも出来る。今までは体の良い使い走りやどんな時でも料理を作らされるくらいだったそうだ。なぜ俺を襲うことに逆らわなかったと問い詰めたかったが、おじさん達の表情がそれを許さなかった。ものすごく落ち込んでいたからだ。

ディースも強いが、サンドバ家とやらの目的を果たすためのお守り役としての契約だった。直接犯罪を強要されることの無い契約だったのでそれまでの我慢だと考えていた。

目的がもうすぐ達成できるとなり、前祝いとして昼間から酒盛りが始まった。飲んでたのはディースだけだが。

そこでディースが受付嬢として気に入ったフィリルさんに酒の酌をさせようとして冒険者ギルドに向かった。そして俺に絡んできたと。


これでここまでの話が繋がった。


「ディースの家の目的って何なの?」

「そこまでは聞いていない。だが、ディースが俺たちにも運ばせない荷物があることと、目的地だけは聞いている」


ひとつずつ聞くとしよう。


「荷物はどこにあるの?」

「宿に厳重に保管するように預けてある。」

「状況によっては没収だね。目的は何となくそれで分かりそうだ。じゃあ目的地はどこ?」

「ユーシル村という村だ。知っているか?」

「ん?」


知ってるも何も故郷ですけど。


「獣人だけの村と言われていたが、最近は人族との交易も盛んになってきた。獣人の割に美味い野菜を最近出荷している。香辛料となる植物も独自栽培しているらしいな。こんな状況でなければ一度行ってみたいと思っていた」


んん?切ない表情で話してらっしゃるけどそれどころではないぞ。一気にきな臭くなってきた。こんなマヌケ丸出しのことをやらかすクソ虫(※ディースとかもう名前で呼ぶ気がなくなった)がユーシル村に何の用だ?

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