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32布教

ユーシル村からそこまで遠くに来たわけではないのでそこまで珍しいものは無かった。村で栽培するようになった野菜が使われていたのはいきなり懐かしくなった。段々とこの味に出会うことがなくなるのかもしれない。

コレクションルームに山ほど収納してあるからいつでも食べれることは一旦置いておく。不意打ちで出されることは少なくなるだろう。

それでも屋台で買った串焼き肉、店で食べたスープ料理、中には食べたことの無い美味しさを味わうことが出来た。

しっかりとごちそうになったあと、宿泊の代金代わりの食事作りをいつにするか相談された。

後払いになってもプレッシャーなので宿代のために食事を先に作ることにした。新たな食事をお望みのようなので食らわせてやろう。


翌日の昼過ぎから準備に取り掛かる。馬鹿果報の現在のメンバーが15人だが、そのうちの12人が滞在中とのことだ。人数が多くないか。

どうやら食べてみたいという理由で出発を明日に伸ばしたグループが1つあるそうだ。本気で走れば都合がつくらしい。そこまで期待されるとは…。がんばろう。


この2年で村で作られるようになったもので使い方が広めたいのはゴマだ。よってゴマ油での揚げ物に決めた。

焙煎せずに絞ったゴマ油なので、独特の香りは無いがスッキリしている。食材の味が活きることが特徴だ。焙煎の具合などは研究が必要だが時間が取れないので中々実現が難しい。

次に適当な大きさに切った魔物肉を色々と準備する。魔物肉に関してはコレクションルームから出した。見られてはいない。ルウネに協力して色々な魔物を狩ったのが役に立つ。

種類だけでなく部位ごとでも分けて用意した。走り鶏もムネとモモで違うからな。走ってるだけあってかモモの方が俺は好きだが、ムネが好きとの評価もある。今日は両方だ。


下味はしっかりと付けておきたい。醤油が無いので塩やショウガ、酒で付けている。調味料は高いのだ。料理スキルが高ければ再現も可能だが、材料や作成方法を知らないと出来ない。

割と秘伝になるが、味の記憶はあるし調理法も何となく分かるので問題は時間と材料だ。これも何とかしたいことの1つだ。

小麦粉と片栗粉は両方あるが、作る手間がまだ少なくて済む小麦粉を使う。色も良いから初めて見せるにはインパクトも大きいだろう。布教してやる。


揚げたてを食べさせるため、準備は下ごしらえくらいだがこれだけの用意をするのは祭り以来だ。大人の12人分は多い。

肉だけでなく、一緒に食べても挟んでも良いパンやサラダ、卵スープも作っておいた。お試しで揚げて美味しい野菜も準備してみようか。

芋があったので、スティック状と輪切りにチップスと切り方を変えて準備した。

ちなみに草食の獣人でも揚げ物を食べても問題ないのは村で実験済みだ。


ということで、晩ご飯の時間になったので揚げるところからスタートした。パチパチと揚がっていく音は初めて聞いたそうだが、話には聞いたことがあったそうだ。

もっと栄えているところだとあるものらしい。既に存在していたのか。とはいえ初めて食べるのは確かで、楽しみにされた。

布教失敗か。いや揚げたては初めてだ。調理法を秘匿する意味で今ある店も見せてはいないのだろう。調理技術なんて広めてこそだと思って涙を飲んでいただこう。


まずはインパクトを与えたかったので肉から揚げていった。揚げるのはあるスキル獲得のために鍋は3つを同時に使用している。

揚げたては熱いと伝えたが、皆早速かぶりついていった。熱い、旨いと言いながらどんどん食べていってくれた。ただ焼くだけではない肉汁の味は想像以上だよね。


「このぶわっと広がる肉汁は~~!!」

「美味いぞ!止まらないぞ!」

「…………」

「お前黙々と食べてるな。……人の皿から取ろうとしてんじゃねぇ!」

「酒!これは絶対酒に合うぞ!」

「よし!とっておきの奴をあけるぞ!取ってくる!」


落ち着いてきたらパンに挟ませてみたり、塩だけをかけてみたり、レモンを絞ってみた。

箸休めになるかは分からないが肉以外も揚げていく。

少しすると剣呑な雰囲気がテーブルの1つから漂ってくる。


「お前は何にも分かってないな。塩でシンプルに活かして食べるのが良いんじゃないか!」

「お前の方こそ味が分かってねぇ!レモンで加えた酸味が更に肉汁を引きたてるんじゃねぇか!」

「「……やるか!この野郎!」」

「お前らやめろ!」


「パンに挟むと油が少なくなったように感じて美味しいわね」

「ハンバーガーも美味しいと思ったけどクーロイ君が広めたのね。パンに挟むのって色々使えるわね。他にも考えてみようかしら」

「一応言っておきますけど、油で揚げたものを食べすぎると太りやすくなるのでそこだけ気を付けてくださいね」

「クーロイ君それはもっと早くに言ってよ!」

「私食べすぎたかも…」

「お芋がおいしすぎるの!こんなの止まらないよ!?」


唐揚げや芋の味付けで色々な派閥を作ってしまった。抗争の火種を仕込んでしまったが、料理をすることの多いメンバーさんにレシピを教えつつ準備した分を全て揚げていった。

自分で作ると揚げ物は食欲がなくなるところが注意点であることも伝えながら、自分は唐揚げバーガーと芋を摘んで済ませた。


色々と騒ぎながら食べてくれたのを見て満足した。これも俺なりの笑顔の増やし方だ。食事がうまければ笑顔は絶対に増える。

明日は日帰りの仕事を受けることにしよう。

創造神様は笑顔をご所望ですので。唐揚げ食べたい。


お読みいただきありがとうございました。

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