31冒険者ギルドの登録完了
化け物のように強いのをA級冒険者以上というように修正しました。
「何をしてるんですか!」
え?俺が怒られるの?それは予想外です。
さっき話をしてくれていた受付嬢さんが鍛錬場に飛び込んできた後、状況を把握し、オッサンを運ぶように手配した後に俺に向かっての一言目がこれだった。
やむなく事情の説明を余儀なくされる。正直なところ鍛錬場の入り口で覗いていたのだから少しは証言してくれると思っていた。
中身はともかく見た目は10歳の子どもが酔っ払いに絡まれて暴力を振るわれようとしているのだ。
便乗して騒ぐなら楽しい目にあってもらうつもりだったし、助けてくれるなら色々と話を聞こうと思っていた。しかし逃亡か呆然のどちらかだった。
受付前で見ていた連中はオッサンと必死に目を合わせないようにしてきた。鍛錬場にいたお兄さんは全く反応が返ってこなかったから、そのままにしてきた。
そうなると自分で説明するしかなかった。酒場で声をかけてくれたお兄さんは見ていた間のことは証言してくれたし、鍛錬場のことは顎の腫れが証拠だった。
オッサンを叩きのめしたことについて、もう少し疑われるかと思ったがそういうことは無かった。職員さんたちならそういう対応にも慣れているのだろう。
「いくら問題無くても、自分で危険なことをしてはいけません!」
怒るというよりは、心配して大きな声を出していたみたいだ。だったら言うことは1つだ。
「あのオッサンに負けるなんてありえないです。酔っぱらってなくても一撃で終わると思います」
しばし考えて、何かブツブツ言っている。それはそう…、良い薬…とだけ聞こえた。黙ってじっと見つめられたあとに最初の説明時の雰囲気に戻した。
「今回の登録中に起こった件については、こちらでも確認の上でまたご連絡させていただきます。この街で滞在される予定はありますか?」
「すぐに王都に向かって出発するつもりだったけど…」
「2~3日で構いません」
どうしようか考えていると、実は受付嬢さんと同じタイミングで鍛錬場に来ていたバラガさんが提案してくれた。
「泊まる場所ならうちに来いよ。ゲストルームくらいは空いてるよ。どうせ晩ご飯は奢るつもりだったんだ。宿代が気になるってんならクーロイが料理を作ってくれたらそれで構わないぞ。どうする?」
「じゃあお願いするよ。でもそれだと俺に料理させるつもりで提案してるよね」
「おっし!話は決まりだ。ギルド証の説明をちゃんと聞いてくるんだぞ。俺は知らせに戻るから~」
逃げていった。さすが草食獣だ。逃げ足が速い。この2年で作れるようになったメニューがあるからそれを作ってあげよう。
「では、馬鹿果報のパーティハウスに連絡させていただきます。またこの件についてはギルドまでお越しください」
「わかりました」
「コホン。では、ギルド証の発行が出来ましたので詳しい説明をさせていただきますね」
仕切り直して冒険者ギルドについて説明された。
まずは登録の続きだ。出来たばかりの冒険者証に血を一滴たらすことで、個人登録を行った。魔力なのか遺伝子なのか分からないが、これで個人の証明となる。
初めての街に行った時はこれを見せることで証明になる。街もしくは貴族で変わる場合もあるので、万能ではないので指示に従うこと。そういったところは余所者に厳しいので移動前に調べること。
冒険者ギルドは基本的にはクエストの斡旋を主な業務にしている。冒険者全体を保護する目的で作られたので国境・海を超えたシステムになっている。現地の人が職員なので少し現地贔屓になるところもある。主に田舎だ。
狩猟・採取・護衛などクエストの種類はあるが、依頼主の希望に応えているかで報酬が変わる。
クエストになくても狩猟や採取で得た素材を持ち込んでも引き取ってくれる。クエストをこなしつつ金になるものを持ち帰ってくるのが基本となる。
何が必要とされているかは依頼書が貼り出されているところに掲示されている。常設クエストと呼ばれている。どのランクの者もチェックしていくのが通例だそうだ。
素材を貯め込んでいる俺にとってはここで放出するか悩ましいところだ。今日はしないけど。
クラスはF級からSS級まで存在している。F級はギルドのある町中だけの依頼を行うものを指す。本業の休みの日に出来るお手伝いや子どもの小遣い稼ぎなんかで出来る仕事だ。登録料もかからない。
家事代行や失せ物探し、子守なんかも依頼されるらしい。町中の互助活動になるが、報酬が安い分町を渡り歩く冒険者はあまり受けない。あくまでその町の中で解決を望むらしい。
ギルドを身近に感じてもらうための方針だそうだ。依頼主と請負人が一緒に来ることの方が多いらしい。仕事内容と賃金でもめなくて済むからそれが良い人は良いのだろう。
あとはエネルギーの有り余っている男子のコントロールに良いらしい。冒険者の仮登録みたいなものだから喜んで家の手伝いをするそうだ。考えた人は凄いと思う。
正式に外に出て狩りをするのはE級以上だ。依頼の受領件数や難易度によって決まる。ギルドマスターの権限で飛び級も出来るらしいが、稀だそうだ。
E級~D級は日帰りのクエストが多く、町を中心に活動して経験を積んでいく。
C級は経験を積んできたこともあり、遠征の依頼も多くなってくる。野営をする長さの護衛依頼はこのランクからだ。
基準と目安は分からなければ聞いても良いとのことだ。商人の中には安く済ませるために冒険者ギルドを通さずに直接話を付ける者がいる。
護衛期間と距離を考えればどのランクの依頼かが分かり、現在のランクを考慮して適正かは分かる。
分不相応な依頼は何かあったときに見捨てるために囮にされる場合がある。分かった時点で商人も即刻指名手配だが冒険者ギルドを通さないため発覚しにくい。冒険者ギルドを必ず通すように言われた。
A級で十分化け物のように強いため、S級以上となると強さの評価が一般人からは説明しても分からないそうだ。
ただ、過去1人で1万の兵士を叩き潰したS級がいたらしい。
クエストの難度は今までの依頼と比較して決められる。死んでしまっては意味が無いので、自分のランクと同じか1つ上の依頼までしか受けられない。
過去に無い新しい依頼の場合は安全マージンを取って高めのランク設定に注意書きがなされるそうだ。貴族が根こそぎ素材を集めるときが該当する。
依頼に失敗した場合は違約金が発生する。また、何度も失敗する場合はランクの降格もありえる。
仮に失敗しても依頼に不備があれば冒険者の証言を検討して失敗にならないときもある。ただし稀だ。そういった依頼は指名依頼が多いので下っ端にはあまり縁が無い。
あとは常識の範囲内だ。殺人・強盗などの犯罪を犯せば資格は即刻剥奪。冒険者は強いものが多いので賞金首として手配されるそうだ。
冒険者ギルドが直接依頼した場合も含んで、依頼遂行中に怪我や死亡してもギルドは責任を持たない。依頼を受ける時点で自分で判断するように、と強く念を押された。
理不尽な依頼人がいた場合は冒険者ギルドも仲裁に入るが、そうでもない限りは冒険者ギルドも庇わない。
子どもにするには長い説明だったが、あとで聞いたら理解しているようだったから説明できるところは説明したそうだ。別に構わないけど。
考えておくこととしては、変な貴族に絡まれたくないから低級に留まるか、完全に無視して上げていくか。地位のために冒険者するのではないし、流れに任せるでも良いかもしれない。
理不尽な依頼は直接であれば悪意感知があるから大丈夫。依頼書の時点ではギルドのチェックが入ってくるからおそらくこれも大丈夫だろう。
ということで手元に残ったのはE級の冒険者証と魔物契約の証であるバッジだった。E級の冒険者証は鉄でC級に上がったときに銅になる。
バッジはスライムだから小さめだが、大きい魔物だともっと大きいらしい。首飾りに加工しても良いし、ブレスレットにしても良いが、プルには首も何も無いので、そのまま体にバッジを埋め込んだ。
魔物登録はしていても、街の中では出来る限り一緒にいるようにと言われた。
思ったよりも長かったが、登録が終了した時にはクエストを終えた冒険者が報告に訪れていた。
その場で報酬をもらったり、後日にするなどがあるようだ。受付も4人が揃って準備している。今は念のためテーブル席で話を聞いているがこれ以上は邪魔になる。
「質問はありますか?」
「今は思いつかないので、出てきたときにまた聞きます」
「では、またお願いしますね」
「ありがとうございました」
受付嬢さんは急いで受付業務に回るべく戻っていった。ずっと待ってくれていたバラガさんが肩を抱いてきた。
「よっし!まずはこの街のお勧めの店に連れて行ってやるよ」
「楽しみにしてました。行きましょう!」
お読みいただきありがとうございました。




