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3村の一日(3歳)②

遊び場所の紹介を忘れていた。森を開拓して作った広場に木工職人の才能を持つ村人たちでアスレチックを作ってくれている。

走って跳んでを繰り返していないと獣人として必要な筋力が身に付かないからだそうだ。人族と違って立って歩くことが早く出来る獣人は遊びだすのも早い。


この子どものころから遊びつつの鍛錬を考案したのが、誰であろう我が祖父である牙丸さんだ。それだけでアカヅメたちの誘いにも乗ろうというものである。


遊び方は単純だ。実際の狩りを想定している。

獲物組と狩人組に分かれての捕まったらアウトの本気の鬼ごっこだ。


獲物側は襲い掛かられた瞬間からスタートしてアスレチック広場から一定距離を離れれば逃げ切ったとしてクリア。

狩人側はその逆で捕まえることが出来たのかが勝負。作戦を立てて狙いを定めることもある。むしろ狙いを持って動くように年長や大人たちから言われている。


捕まった獲物は次は狩人だ。狩人は捕まえることが出来たものが獲物に回る。遊べるからだ。意図して追い込み役を引き受けることで狩人を続ける子どももいる。年長者の役割だ。とどめを刺すだけが狩りではない。


ポイントは獲物はアスレチックで遊んでいられることだ。狩人が変に焦っても逃げられてしまったらまた狩人をすることになる。

獲物も油断して遊びすぎると捕まって終わりだ。つまり常に周囲に気を配っていろ、という教訓である。


前世の印象から狩りは遠距離からの飛び道具だと思っていたが、肉食獣人の狩りは肉食獣に近いらしい。


ちなみに周りに高い木も茂みもいくつか残してくれているため、そこから奇襲されることもある。


しかし、たまに木工職人たちはアスレチックに新作・改修を加えてくれるのだ。夢中で遊べと言われているような気になる。上り棒が並んでいるところにロープが追加されていたときは、ブランコが揺れるかのような感覚で多くの子どもの心を鷲掴みにした。少し高い位置に丸太の一本橋が作られたときは、渡るだけなのにテンションが上がっていた。


繰り返すが狩りの訓練なのでただ遊んでいてはいけない。ここで怪我しそうになっても大体は自分たちで止まるし、高いところで足を踏み外したくらいで着地をミスするものもいない。そんなことをしながら体の使い方を覚えていくのだ。


こんな風に全力で遊び回るのが午後の風景である。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


夕方に近くなると帰宅時間だ。アカヅメの肩から家の前に下ろされた。


「牙丸さん、クロエミさん。連れて帰ってきたよ!」

「はいはい。今日もありがとうね」


家の玄関で俺のやり取りが行われている。走りすぎて体力の回復が間に合っていないのだ。


「友達だからね!」

「また明日ね」

「はい!クロエミさん、さようなら!」

「クーロイも言いなさい」

「また明日な~」「じゃあね~」

「う…。バイバイ、また明日…」


アカヅメたち年長組が俺を家まで送り届けて帰っていく。他のメンバーもまだ余裕がある。年齢が同じやつもいるのに種族の差は埋めがたい。

夕ごはんの前には体をしっかりと拭く。クロエミさんは魔法でお湯が出せる。手をしっかりと洗うことが大事だと教えられた。異世界なのに衛生観念がしっかりしている。


夕ごはんはあまり変わり映えするものでもないが、パンと朝よりも少し肉の多いスープだ。二人はパンの代わりに肉とスープである。


食べた終わった後は、片付けなどを少し手伝う。早く終わらせる必要があるのだ。

早く終わったらクロエミさんから薬草などの勉強や魔力操作の練習の時間を取ってくれる。今日は魔力を流す感覚を体験させてくれる。狩りの勉強だけに限らないのは俺が人族だからだろう。何が向いているのか分からないから色々と体験させているようだ。

現在の俺では自分だけで魔力の流れを感じることすら出来ないため、クロエミさんから魔力を流してもらい、その感覚を体験しながら自分でも試してみる。


二人で向かい合って座り、円を作るように手を結ぶ。目を閉じていると右側の手の方から温かいものが流れてくる。胴体のところまでくると腹の中心で溜まり、ある程度すると左側に流れていく。


「なんか体が温かい」

「魔力を感じられているということね。いつかは使えるようになるわ。自分だけでその感覚が出来るかどうかもやってみましょうか」


自分の両手を合わせて感覚を忘れないうちに温かい流れを作り出してみるが、すぐには上手くいかない。そのたびにもう一度手を繋いで感覚を体験していく。何度も繰り返していくが今日は上手くいかないなとイライラしだしてきたとき。


「じゃあ今日はこれくらいで終わりにしましょう」

「え~?もう終わり?」

「終わりですよ。寝る時間ですから」

「ヒッ!」


クロエミさんが少し名前の通りになる。向こうを向いて早朝の狩りの準備をしていた牙丸さんの尻尾が逆立っている。引き際を見誤るとマズイようだ。


「寝ます!おやすみなさい!」

「おやすみなさい」

「…おやすみ」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


寝床でこっそりと呟く。

「ステータス」


>>>>>

名前:クーロイ 年齢:3 

種族:人族 性別:男

才能:気ままなコレクター


HP :5/6

MP :3/3

STR:2

VIT:3

AGI:2

DEX:2

MAG:1

MND:3

LUC:1


スキル

平常心(2)ストレス耐性(2)教導(2)話術(1)


称号

御人好し 【元】不幸体質 我慢バカ 転生者 


>>>>>


一日では変わらないなと確認しつつ、寝る前には一応確認しておく。毎日確認して何がコレクションできるのかを確かめていくのが正しいコレクター魂だろう。

ステータスを見ていて考えるのは、スキルや称号も集める甲斐のあるものではないだろうか。称号であれば、御人好しとか性格的なもののコンプは難しいだろう。しかし、行動でもらえるのであれば集めやすい。当然ながらスキルは自分の行動の幅も広がるから根こそぎ集めたい。


あとは前世の経験がスキルに反映されているだよね。俺の前の人生ってこんな感じか。持ち込めただけ良しとしよう。あんまり思い出したくないし。

使えるかどうかはともかく。料理は上手くなりたい。ご飯がおいしいだけで生きていける。


「ステータスが見れるだけでも生きやすくはなるんだろうけどね」


ステータスはほかの人には見えないので、出しっぱなしでも怪しまれないが消しておく。地力を付けることには変わらない生活が明日も待っている。

寝よ。


「おやすみなさ~い」


誰に言うでもなく一言呟いて、目を閉じる。

そんな生活を過ごしている。

お読みいただきありがとうございました。

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