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29鍛錬場の一幕

悪意感知には反応あり、少し脅かしてからかってやろうくらいな感じかな。プルによると危険は全く感じないそうだ。

頭の上にいるプルに手を出されても嫌なので手で抱えて胸の前に持つ。


プルは震えながら、自分がするよと訴えてくるが、ここは俺にやらせてもらいたい。

万が一手を出されてまで黙っているつもりはない。だが、手を出されてから対処しよう。


「スライムをテイムしてやがるのかぁ?魔物に守ってもらうガキだぁ?冒険者なめてるんじゃねぇぞ!」


ガッと両肩に手を置かれる。そのまま持ち上げられてオッサンの目線と同じ高さになる。大人の目線だな。跳べばこれくらいは余裕だから何も感じない。

というか、このオッサン酔っぱらってる。息が酒臭い。まだ太陽も沈んでないから早いと思うんだが、冒険者はこれも自由かな。

肩も力入れてるんだろうけど全く痛くない。息が臭い分と思いつつ、目を合わせていた。危害加えられてないからそのまま流そうかなとか考えていると幾分気勢が削がれたようだ。

そこまで反応も無いとオッサンも慌てだす。


「なんだ、このガキ…」


絡み方がわからなくなってしまったらしく、何もせずに下におろされる。ただ周りの目がこちらに向いていたことに気づく。


「ごめんね、おじさん。登録作業で今いなくなっちゃったんだ。もう少し待ってたら戻ってくると思うよ。待っててね」


話したことで勢いを取り戻そうとして大声を出してきた。


「生意気なガキだ!根性を叩き直してやる!来い!!」


なんで~~~?何がそこまで腹が立ったのか不明すぎる。

今度は片手で持ち上げられて運ばれていく。さっき説明を聞いた鍛錬場に連れていかれるようだ。どうしようかな。受付中にいなくなってたら迷惑かかるよな。

オッサンが絡んできてから、テーブルでずっと話を聞いていたお兄さんと呼んでいい人に伝言を頼んだ。


「受付嬢さんか一緒にいた鹿の獣人さんが戻ってきたら、連れていかれたって言っておいてもらって良いですか?」

「坊主、余裕あるなぁ。それはいいぜ。やっといてやるよ」

「ありがとうございます」


了承してくれて良かった、と思っていたらオッサンとも知り合いだったようだ。


「ディースさんよ。どう考えても絡まない方が良い奴だと思うぜ!」

「うるせぇ!へらへらした若造が俺様に意見するんじゃねぇ!」

「あ~。それは悪かったね。怪我はなるべく軽く済ませてやれよ」


そのセリフ俺に言ってるよね。バッチリ目が合ってるもんね。軽く手をあげて、サインだけ送っておく。どう対応するのが正解かなぁ。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


鍛錬場に入って見て驚いた。思っていたよりも広かった。体育館くらいの広さはありそうだ。簡単な試合くらいならできそう。


「ビビるなよ。ガキが。ここのギルドに来たらこの俺様に挨拶に来るのが習わしなんだ」

「そんなことは知りません。知り合いが登録だけならすぐに出来るからと連れてきてくれただけなので」

「じゃあ、その知り合いを恨むんだな。常識を知らないやつには優しく教えてやるのが俺の役割なんだ。そこのお前!大太刀を持ってこい!」


下ろされた後に相手は一応木でできた大太刀を持って来させていた。持ってきたお兄さんがものすごくビクビクしていたぞ。脅されてでもいるんだろうか。

俺には何も渡されないがどうすれば良いのか。壁にある木刀が借りれるなら借りようとそちらに向かって歩こうとした。またオッサンががなり立てる。


「どこ行くんだ、ガキ!」

「木刀借りにですけど…」

「お前に持たせる木刀なんざねぇよ!!」

「は…?俺は無手でやるんですか?」


さすがにイライラしてきた。脅かしてビビる様子を見たかったのかな。想定通りの反応が無いから無理矢理引き出そうとしているようだ。

そろそろ付き合いきれなくなってきた。さっきの棒を持ってきた人が真っ青になってる。というかギルド内でこんなことになるって何でだ。


「ワカリマシタ。じゃあ俺が勝ったら、ギルドの前で土下座しろ。何をしたかはイチイチ説明しなくて済むように看板を付けてやるよ」


何を言われたのか分からなかったらしく、一瞬止まった後に顔を真っ赤に染める。


「もう謝ったところで許さんぞ!」

「売られたケンカを買うだけなんで。良い感じで鳴いてくださいね」


そう言ったのが合図となって始まることになった。


木の大太刀を振りかぶって頭めがけて振り落としてくるが、一応ギリギリで一歩右に移動して避ける。

それで決着をつけるつもりだったのか、地面に叩きつけられる。一瞬硬直した。これは手にも衝撃がいってるのではないだろうか。


今度は横薙ぎできたので当たらないように後ろに下がる。

そこからはひたすらに振ってきた。当たれば少しは違うのだろうが、一発も当てられないことにどんどんヒートアップしている。


「クソガキがぁああ!!」

「そんなに怒らせることはしてないと思うんだけどさ…」


ここまで怒られると自分が原因なのかと思えてくるが、初対面だし何もないはずだ。たっぷり5分ほど棒の振り回しに付き合ってあげた。

右上から叩き落されたら左下からすぐに返ってくる、突き連打と動きは割と多彩だ。酔っぱらってこれなら素面ならまだマシではないだろうか。

冒険者も結構強いと言えるんだなぁとしみじみ思う。そうやって躱し続けると、徐々に勢いがなくなってきた。


これ以上はオッサンの体調も危険だろう。しっかりと終えてあげよう。

突きが向かってきたので、大太刀の腹を左手で叩いて待てば勝手に懐に入れた。身長差から考えて軽く跳ぶとオッサンの顎めがけて右の掌底がクリーンヒットした。


オッサンはそのまま後ろに2、3歩よろめきながら下がったとき、入り口から飛び込んできた人がいた。


「何をしているんですか!!!」


さっきの受付嬢さんだ。すごく焦ってる。


「サンドバさん!次に騒ぎを起こしたら本気で怒ると伝え……」


ましたよねって言おうとしたんだけどそのころにはオッサンは地響きを立てて仰向けに倒れた。いい具合に入ったから記憶飛んでるかもしれないな。

酒で恥かくほど飲むっていうのはもっと早くに矯正しないといけないよね。さて、じゃあ俺の次のセリフは決まっている。


「看板作るんで材料あります?」


受付嬢さんは本当に意味が分からないって顔をしてた。

お読みいただきありがとうございました。

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