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28冒険者ギルド登録時のテンプレ

おひねりは銅貨ばかりだったが、結構な重量になった。馬鹿果報のパーティハウス前だったのもあり、そのお客がほとんどだった。バラガが横にいてくれたのも大きい。関係者には優しくしておこうと考えてくれたようだ。

街の広場でやったら人気者になれるぞ、とのアドバイスも頂いた。どうしても街の外に出たくないときはそうしようと思う。よっぽどのことが無い限りはしないけど

銅貨は買い食いするときの資金にすると良いと言われて、自分の懐にしまっておくことにした。


「下手すると混雑する時間になるから冒険者ギルドの登録を急ぐぞ」


バラガさんに案内されて冒険者ギルドへと来た道を戻る。見えているからすぐだった。


「クーロイは文字の読み書きは大丈夫だったな」

「大丈夫だよ。ちゃんとばあちゃんから教えられてるよ」

「はぁ~。読んだり計算だけでも大したもんなんだけどな。お前が将来何になるかおもしろそうだな」


感嘆半分、呆れ半分で言われているようだった。自分でも何になるかなんて分かっていないので、楽しみにしといてよと軽く流しておいた。


冒険者の中には文字の読み書きは最低限のものも多いらしい。自分の名前を書けるようにすることと、魔物などの目的の名前、報酬としての数字、この辺りがあれば経験と結び合わせて内容と報酬についての交渉や契約のサインが出来る。

パーティの人数が増えてくれば自然と役割分担がなされることになるので、最低限のものは低ランクに多いそうだ。頭も使わないとどこかで壁に当たるのはどこでも同じだ。

刹那的なお金の使い方をする者も多いらしい。


入り口近くまで戻ってきたときに小さな声で忠告される。


「ガラの悪い奴はいるが、あんまり気にするなよ。というか反撃するな。ボコボコにするなって意味だからな」

「よっぽどのことをしてない限りは大丈夫だよ」


クーロイが強いことはさすがに村のメンバーには知れ渡っていた。規格外の子どもが余計な騒動に巻き込まれないようにはしたいと思ってくれているのは分かっていたので、笑顔で返事しておく。バラガの顔が引きつっていることには文句を付けたい。


「まあ、お前は大丈夫だろうな。じゃあ入るぞ」


大人4人が横一列になっても通れそうな入り口をくぐる。扉は開けっ放しで夜は閉めるらしく、内側で閉まらないように止められていた。

イメージとしては前世での銀行や郵便局に似ていた。入り口の正面には依頼を処理するための受付が4つほど並んでいるが、今は受付には二人しかいなかった。遠目から見ても美人とかわいいって感じだろう。忙しい時間は全てを開けることになるのだろう。

入り口の右側のスペースにはパーティでの相談をするためか、立ちながら話すためのテーブルが複数置いてあるスペースも設置されていた。どの依頼を受けるのかを相談したり、酒無しの反省会をするのに使われるそうだ。

テーブルスペースの壁には、ランクごとに依頼が貼り出されていた。依頼の受注ルールはあとで説明を聞け、と言われた。

奥には鍛錬場に続いており、喧嘩が始まったら周りの冒険者に連行されるそうだ。純粋に上級の冒険者に鍛錬を付けてもらうこともあるらしい。


逆の左側にはクエストで収集してきた各種素材を引き取るところになっているそうだ。荷物を置くスペースがあり、手で運べる量や大きさのものはこちらで依頼の報告をする。

奥には解体を行うための専門の建物に続く道があるそうで、大物があるときは別の入り口からそちらに向かい、帰ってくるときにそこから出てくることになるぞ、と教えられた。

二階に続く階段もあるが、上級者用の談話スペースとのこと。個室もあるそうで、指名依頼など依頼に関して説明があるときはそちらを使うことになるらしい。


冒険者として使えるスペースはそれくらいだそうだ。この街では酒場は同じ建物には無いそうだ。もう少し大きいところだとテーブルスペースが大きくなり、酒場機能のあるところが増える。

スペースというよりも、冒険者を満足させるだけの料理の腕がある人物を雇うのが難しいそうだ。一つの店として成功している店の方が選ばれる。持ちつ持たれつらしいので、何か協定があるのだと思う。


バラガさんからある程度の説明を聞いて、登録に行くかと受付に進んだ。

受付にいた二人のうち正面に近い美人さんの方にバラガさんが進んでいく。

下を見て作業をしていたが近づいてきた気配を感じて顔をあげて話を聞いてくれるようだ。


美人さんは茶髪で髪は後ろでくくっているようだ。どう結んでいるのかはこちらからは見えない。制服はギルド職員で共通の緑色のスーツを着ている。胸元のポケットのところは受付と奥にいる人で違っているので役職などで違うみたいだ。

目の色は青っぽいみたいだ。獣人の美人、かわいいは村でも見慣れたが、化粧までした女性は久々に見た。この世界にも化粧品はあるらしい。口紅とかあるんだ。

じっと見ていると微笑みかけられた。見すぎたらしい。それには気づいているがバラガさんは受付嬢さんに声をかけた。


「すまないが、この子の新規登録を頼む」

「かしこまりました。こちらの用紙に記入をすることになりますが、代筆は必要ですか」

「自分で書けるので大丈夫です」

「失礼しました。ではお願いしますね」


新規登録が子どもであることから固さのない優しめの声をかけて用紙とペンを差し出してくれた。

書くのは名前と年齢、どんな仕事をメインにするのか、公開しても良いスキルか。


「メインの仕事とスキルに関しては、指名依頼を出す時などにどの冒険者がふさわしいのかの基準に使用します。珍しいスキルの場合は詐称でないか確認をさせてもらうことになるので、割と誰でも持っているスキルを書くことが多いですよ」


ギルドの方で仕分けするのに使うわけか。資料から探すときにも使うわけだな。

自分で納得したので、記入を進めていく。依頼は何でも受ける、スキルは体術、剣術、気配察知、採取くらいにしておくか。レベルは聞かれてないから書かなくても良いだろう。

書いて渡すと登録料を言われたので出そうとすると、バラガさんが止めてきた。


「ここは俺が持つから、これからの旅先でうちのパーティを宣伝して回ってくれよ」

「知らないうちに商売人らしくなったんですね。分かりました。お世話になります」

「俺からすれば、こんな金額で恩を売れて宣伝できるなら安いもんだよ。というか年齢が半分以下の奴に言われたくないよ」


そう言って銀貨1枚をポンと出してくれた。銅貨1枚でパンが買えるので大体前世の100円くらいの価値だ。銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚、つまり1万円くらいだ。

たしかに安いのかもしれないが、断る理由も無いのでありがたく頂戴する。


「テイムはスキルには無いですが、そちらのスライムは違うのですか?」

「テイムは無いけどこいつとは友達ですね」

「暴れ出したりはしないんですよね?」

「絶対ないです!」


村とは違って多くの人が生活しているんだから、それは気を付けないといけないところだった。どう説明すれば良いか悩んでいると受付のお姉さんが提案してくれた。


「テイムが無くても契約できる場合は今までもありますので大丈夫ですよ。スライムちゃんの魔物契約の登録だけしてしまいましょう。お名前だけ教えてください」

「プルって言います」

「ふふ。可愛い名前ですね」


そう言って、メモを取った。


「では登録の方をしてまいりますので少々お待ちください。それとバラガさん、新しく荷運びの依頼が馬鹿果報に来ているのですが少しよろしいですか?」

「今日はこいつと夕飯を奢る予定だから依頼書だけくれるか?」

「受注前の検討事項に説明があるので、少しだけでもお時間も頂ければと思います。発行している間に終わりますので」


なんとか、ということをお願いされている。冒険者業は男が多いからこういった時のために受付嬢は女性が多いのだろう。見た目に騙される男は高ランクには上がれないのだろうな、と思う。

申し訳なさそうに受付嬢が言ってくるので、バラガさんも折れることにしたようだ。


「わかった。待ち時間の間に終わるのなら構わないよ。クーロイすまないが待っていてくれるか」

「大丈夫だよ。いってらっしゃい」


大人二人がそれぞれの目的でいなくなった。隣にいた受付嬢さんも作業を見学するらしく付いていった。魔物登録って滅多にないらしく作業を見学するらしい。

冒険者ギルドの研修制度が整っていることに、驚きを隠せない。異世界だからどうこうって感覚は無くしていった方が良いかもしれないなと考えていると、下品な笑い声が聞こえた。


「あっはっは~!ガキがこんなところで何をしているんだぁ?」


無視。


「あぁん?受付に誰もいないじゃねえか。おい、ガキ!貴様か?」


虫は無視。


「この野郎!てめぇ!!」


手が伸びてくる気配がする。テンプレだなぁ。

お読みいただきありがとうございました。

評価していただいた方が増えて、ポイントが多くなったからか、PVも増えました。ありがとうございます。励みにがんばります。毎日続けていきますので、お楽しみください。

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