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25祭り本番から一気に回想してみた

祭りのあった日から半年以上が経過した。ちなみにやっと7歳を超えた。こんなに長くなるとは思わなかったとは誰の言葉か。


祭り当日のことは楽しかったという一言だった。昔から祭りは当日よりも準備の方が楽しいと感じるせいだったのもあるし、ずっとハンバーガーとフライドポテトを作っていて当日の雰囲気を味わう余裕があまり無かったこともある。

少しはいろんなもの取りおいてくれたケミィには感謝しようと思ったが、お姉ちゃん呼びを強要されたので感謝の心よりも微笑ましくなってしまった。呼ばない方が面白いのでそれ以来呼んでいない。


出されていた料理はシンプルに肉を焼いただけで肉料理と呼べるほど複雑なものは多くなかった。元々魔物肉は素材で勝負できるくらいおいしいからね。香辛料が安定に供給されれば良いと思う。配合が各家庭によって違っていたり、バランスを見てスープ料理の準備をしていた家庭が褒められていたりと食べて回るだけでも楽しかった。

もう少し野菜や粉もの、香辛料を確保して焼き鳥などが出るようになればと思う。まずは見本を見せる機会を今後も作っていこうと思った。


ルウネは祭りをしている人たちが見える家の屋根の上で目立たないようにして眺めてもらった。久々に捧げられる感謝にそっと涙を流していた。気づかないふりはしておいた。

ついでにばあちゃんとじいちゃんと村長に顔合わせもしておいた。俺が旅立った後のための面通しだ。

神とて1つの個体である以上、他者との柔らかい心の触れ合いは必要だろう。


ちなみにルウネに食べさせた中での一番のヒットはカレーだった。


「こんな複雑で濃厚な味は初めてだぞ!これを更においしくするために植物魔法を学びたいだと!全力で鍛えてやろう!!」


大精霊の本気をなめてはいけない。本気出された後は2週間ほどルウネには会いに行かずにほっといてやった。加減を覚える前だったからひどい目にあった。


祭り自体は良かったとは思う。みんながおいしそうに食事をしていたし、生きられたことを改めて実感して泣いていた人もいた。もらい泣きしている人もいた。

太鼓の音が響く中、篝火の周りに輪を作って踊ることで感謝を示し、これからも皆と共にいられることに感謝を捧げていた。

用意した食事がなくなってからはずっと音楽と舞踏を眺めていたが、感謝を神に伝えることの意味を少しは理解できた気がした。俺もなぜか涙が出てきたのは内緒だ。何の感情の涙か自分でも分からなかったし。

でも神への感謝の気持ちは分かった気がした。自分たちにできることを果たした上で生き残れたとき、自分たちより上位の存在の慈悲を感じるのだろう。前世では無神論だったのにな。実際に会ってしまうと存在してること分かってるし、恩のある友達みたいに思ってしまってる気がする。


俺が生き残れたのだって、創造神様とルウネのおかげだ。自分の努力も少しは影響あっただろうが、決してそれだけではないことは分かっている。

日々感謝はきっと必要なのだろう。他の生物に比べてスキルも習得しやすく、才能がチートな俺はきっと謙虚さを忘れてしまうと一気に落ちぶれてしまうように思う。

謙遜し過ぎは良くないが、感謝を常に持つようにしようと思えた。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


井戸毒事件からどんなことがあったかを紹介しておこう。


ハーゲンさん一家は正式に村に移住することになった。最初に来たときは何もできなかったことが悔しかったそうだ。それぞれ学びが多いようで非常に充実しているようだ。ばあちゃんも久々に出来た弟子に喜んでいた。毒が砂漠の方で取れる植物やサソリからのものであると特定してくれて、村人の関与が薄いことの証明にも力を貸してくれた。

ルウネは祭りの後は特にクロエミばあちゃんと仲良くなった。傍目からは祖母と生意気な孫のような感じに見える。当然ばあちゃんの口調は丁寧なんだが。少なくともルウネが寂しい思いをしなくても済みそうで良かった。

ちなみにケミィは精神年齢が近かったのかルウネと仲良くなった。無理に薬師にならなくても構わないというのが両親の希望だが、希望を大きく外した方向になるかもしれない。

牙丸じいちゃんの変化は一番予想外だったかもしれない肉食獣の癖に野菜にはまった。食べ合わせとしてではなく、単品で食べるようになった。今後の目標はハンバーガーに挟んでも負けないトマトを栽培することだそうだ。

俺の中でのイメージが音とを立てて崩れ去ったことは言うまでもない。それから俺は初めて知ったが思ったよりもじいちゃんは口数が多いらしい。孫の前では緊張していたそうだ。衝撃が大きすぎてめまいがした俺はプルに優しくなでられたことも報告しておく。


ハーゲンさんが前に住んでいた街(ホーグラッドという名前)へは馬と鹿のコンビが届けに行ったが、往復6日はかかる距離を1日半で完走していたそうだ。原理は分からないが二人はコンビであることを明確に意識して走ると今までにない力を発揮して走ることが出来るようだ。

帰りは馬車を二人で曳いて戻って来たそうだが、ハーゲンさん一家曰く『二度と乗りたくない』そうなので、馬車の方にも技術のテコ入れが必要だと思われる。

ただ、超スピードで走れることは二人に何かをもたらしたそうで、コンビはこれからも組んでいくことになったそうだ。差し当たって村長から手紙の届役として走っている。

運送業としてこれから活躍してくれたら良いとは思う。ちなみにコンビ名は『ホース&ディアー』にするらしい。誰かアドバイス出来る人材を見つけないと騙される気がしてならない。


そうそう。ルウネから世界樹の樹液をもらって直後に襲ってきた男は井戸に毒を入れた犯人だった。ここらでは無名だが暗殺を生業にする集団から逃げ出した奴だったそうだ。どおりで二流以下だと思った。

そこからミルズの町の町長、管理していた貴族、町の商人の何人かがユーシル村を潰そうとして動いていたことが分かった。

理由は『人間様よりも下等な分際で生きていることが烏滸がましい』という理解不能な言い分だった。

ホーグラッドから改めて派遣されてきた役人に事情を説明し、確認のためにミルズの町へと行った時にはおおよそ主犯格のものは町にはいなくなっていた。

逃亡とも殺害とも言われているが、もう生きてはいないという説が有力だ。それぞれの部屋から当人のものと思われる右耳が発見されたからだ。


この右耳が残されていたことが恐怖を呼んでいる。通常右耳は、狩っても魔石以外の価値が無いゴブリンなどを狩った証明に使われる部位だ。

その右耳が残されていたということは、犯人からの殺害を示唆されているのではないかとされていた。

実際、侵入した形跡はあるが、彼らは同じ日に一斉にいなくなった。彼らが立場の違いはあれども、ユーシル村の獣人に対して攻撃的な立場を取っていたことが分かっている。

攫おうにも人数が多すぎて町から出るときに目立つはずだし、そうでないなら示し合わせて町を出ていったことになる。ただ、彼らは思想が似ていただけで組織を作っていたわけではない。

犯人の人数も手口も不明となっている。動機はユーシル村だと思われている。しかし、今のユーシル村には手出しをすることが出来ない。


今やユーシル村はただの獣人の村ではなく、庶民には新しい肉料理の発信地、害をなすものが消え去る村として知られることになった。

貴族には決して手を出してはいけないと国が厳命を発する村となっている。もし破れば計画しただけで問答無用で家の取り潰しを行うとされている。理由を探ろうとするだけで捕らえられた下級貴族もいることから魔境として扱われることになった。


いなくなった者たちがどうなったのか。探そうにも手がかりが全くないので手の打ちようがない。空中に消えたかのように痕跡が消えているらしい。

ホントウニナニガオコッタノダロウカ、シンパイダナァ。


俺ことクーロイは祭りの後はルウナと約束した通り、魔法や力の使い方、旅に出る前に耐性系スキルの習得を特に頑張っていた。特に回復系のスキルは練習相手に困らなかったので本当に助かった。思ったよりも伸びが良い。

あとは、村を出る前に再現可能なレシピのために料理の実験をかなり忙しく動いていた。調味料を作るのが難しい。マヨネーズは何とか再現できたが、油の状態によって味が全く違う。今後の課題として丸投げした。

大豆が無いので懐かしの日本食はまだまだ先が。植物魔法がどこまで使いこなせるようになるかにかかっている。気候的には問題ないと思うが、降水量と土が合うかが心配だ。


そうこうしているうちに、今回の件を聞いた外に出ていた者たちが帰ってきて村に定住したり、アカヅメやコウガなど俺の3つ上の世代は順に旅立っていった。いずれも順にパーティとしての役割分担と親たちからの旅立ち前のチェックを厳重に受けている。

獣人として旅に出て力試しや外の世界を見てくることは義務とはいえ、簡単に死なないようにできる限りの準備はされていた。

村から出ていく前に、心残りの無いようにと決闘を申し込まれたのには驚いた。魔法無しで戦うとなると結構勝負としては危ないものが多かった。

勝ち越しはしたが、アカヅメやコウガには勝てなかった。魔法は苦手なくせにあいつらのスピードは異常だった。目が全く追いつかなかった。自分の課題も見つかったので良かったと思いたい。


あとは、コレクションルームに保存していたトレントの素材を吐き出して、家の補強や村の外壁を作ることもしてもらった。俺自身はそんな技術が無いので丸投げだ。

下手に石壁を作るよりも強い魔物の素材を有効活用した方が良いと言われたからだ。残った木材でアスレチックも改築され、年下にお礼を言われたことは嬉しかった。

素材はいくらあっても損しないので、多めに保管してある。


7歳になった俺のステータスはこちらだ。


>>>>>

名前:クーロイ 年齢:7

種族:人族 性別:男

才能:気ままなコレクター


HP :65/65

MP :728/728

STR:29

VIT:42

AGI:21

DEX:19

MAG:55

MND:67

LUC:15


スキル

体術(5)剣術(5)短剣術(1)

身体強化(4)視力強化(4)頑強(2)回避(3)敏捷(3)平衡感覚(3)自然治癒力上昇(2)

魔力感知(5)魔力操作(5)魔力放出(5)魔力集中(5)

生命魔法(3)植物魔法(2)

気配察知(5)悪意感知(3)気配隠蔽(1)

平常心(3)ストレス耐性(3)苦痛耐性(1)

教導(2)話術(1)採取(4)按摩(2)解体(1)料理(2)


<スキル>

神託 コレクションブック コレクションルーム


称号

御人好し 【元】不幸体質 我慢バカ 転生者 世界樹の祝福者


備考

称号・断罪者はこれ以上やっても称号に反映されないようにしたよ♪


>>>>>


とりあえず、見かけが幼すぎると旅に出たところで面倒なことになりそうなので10歳くらいまでは村にいることにした。

今回の一件も収まりが付くだろうし、ルウネに学ぶことが予想以上に多かったからだ。

それまではまたしばらくがんばろうと思う。スキルやステータスが見える形でいることで努力を苦に感じない。

お読みいただきありがとうございました。

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