22世界樹の指輪
時間が無いとは言いつつ、お互いにある程度は腹を割って話すことになった。
クーロイとしては既に牙丸とクロエミに話しているので特に抵抗なく話をした。そしてルウネは散々勿体付けてから大樹の精霊であることを打ち明けた。
「あ、予想済みなんで」
「可愛くない!!」
人と話して感情が出るのは嬉しかったのだろう。表情をいそがしそうに動かしていた。
身の上話は次回来た時にゆっくりと話すことにして、持ってきた桶5個全てに世界樹の樹液を入れてもらった。
「こんなにもらって大丈夫なのか?」
「なに。この姿は友好関係を見せるために可愛らしい幼い姿にしたが、この世界樹の樹齢は1万年を超えるのだぞ。人族の桶などいくらでも満たすことができるわ!はっはっは!」
見かけによらない太っ腹だ。お見事である。胸を張ってふんぞり返っているが、平面である。そっちの情が湧くのはまだ先の俺は目線すら動かない。
「私は植物だから性別は無いが、表情に出るのは直しておけよ」
なんかバレてた。
「お前精霊のくせに俗世にまみれてないか?」
「気にするでない。あとは久々に私のところまで到達したクーロイには良いものをやろう。手を出せ」
そう言われて出して手の平に置かれたのは木でできた指輪だった。厚みが1センチあるかないかくらいだろうか。本当にただの木の指輪にしか見えない。
「お前の首飾りに付いているのは賢者の石だろう?それだけだと魔力などは扱いやすくなっても所詮は人工物。祝福は乗っていないだろう」
「賢者の石って人工なの!?」
「そうだぞ。何万人かの命の犠牲で出来ている」
「…思った以上に重い」
「お前が使うのなら無念も晴れるというものだろう。それはともかくこの指輪の話だ」
指に付けるように言われたので、左手の人差し指に付けた。右手は剣を持つから避けた。握っても特に邪魔にはならなさそうだ。左手で殴るときとか壊れたらイヤだな。
「それは世界樹の枝を圧縮して作った指輪だ」
「あっしゅく」
「そうだ。大体10本分くらいを使ったから、簡単には壊れない。世界樹は生命と植物の象徴だ。身に付けている限り生命と植物の魔法が使えるだろう。簡単ではないがな」
何言ってるんだこいつ。
「何言ってるんだこいつ」
「思ったことをそのまま言うのはやめろと先程も言っただろう」
「いや。ほんとのことだと受け入れられると思う?」
溜息をついてから顔をあげたルウネの表情は先程までと違い凛々しく威厳に満ちていた。
「自分の村を救わんがため、自らを差し出してまでの行動に出た勇気に敬意を示したまでだ。久方ぶりにここを訪れた客人であり、また創造神様の使徒ともいうべき存在だ。出来る限りの祝福を込めるのは世界の理たる精霊として至極当然だ」
「……いきなりキャラ変えるのってずるくない?」
「照れ隠しで茶化そうとするな」
感情の機微を読めるらしい。すぐに表情が元に戻って得意げな顔を見せつけられる。
「ありがたく頂戴します。必ずこの世界の神へと御恩をお返し致します」
「それでいい」
真面目に返したのに、受け流されてしまった。余裕の持ち方が違うわ。
☆ ★ ☆ ★ ☆
毒がどんなものか分からないので、村が落ち着き次第改めて訪れることを約束した。
「次に来るときはすぐにここに来ることが出来るようにしておいてくれよ」
「それはクーロイの今からの行い次第だろう」
「そうだろうけど。まあ負ける気しないし大丈夫だよ」
「せっかくだ。色々と力の使い方も教えてやるから楽しみにしておけ」
再会の約束に談笑を交えながら、一時別れの挨拶をして世界樹を離れていく。来るときには白い霧が充満していたが、今は全くそんなことはない。
歩きながら念のためにステータスを確認しておく。
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名前:クーロイ 年齢:6
種族:人族 性別:男
才能:気ままなコレクター
HP :30/30
MP :534/534
STR:22
VIT:34
AGI:13
DEX:12
MAG:45
MND:54
LUC:8
スキル
平常心(3)ストレス耐性(2)教導(2)話術(1)魔力感知(5)魔力操作(5)魔力放出(5)体術(4)魔力集中(4)気配察知(4)採取(4)視力強化(3)剣術(4)身体強化(3)悪意感知(3)按摩(2)回避(2)敏捷(3)平衡感覚(2)解体(1)料理(1)自然治癒力上昇(2)頑強(1)生命魔法(1)植物魔法(1)
<スキル>
神託 コレクションブック コレクションルーム
称号
御人好し 【元】不幸体質 我慢バカ 転生者 世界樹の祝福者
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色々と増えてる。スキルも増えてきたな。これって整理できないのかなと触ってみると、指に合わせて文字が一緒に付いてきた。
タッチパネルみたいなことが可能になってる…。最初に確かめたときはそんなことは無かった。いつの間に出来るようになったのか。今はそんな場合でもないから落ち着いてからにしよう。
そんなことを考えながら歩いていると、空気が変わったことを感じた。澄んだ魔力が薄れ、代わりに3日間さまよった森の匂いが濃くなった。
後ろを振り返るとまだ見えるはずの世界樹がどこにもなかった。まあ何でも有りなんだと思うことにした。
さてと、お待ちのようだし声をかけよう。
「そこにいるのは誰ですか?」
ガサガサと茂みをかき分けて出来てた男は、ニコニコした表情を浮かべていた。
お読みいただきありがとうございました。




