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20南の森へ

翌日、まずは馬と鹿の獣人コンビが街へと走ることになり、夜明け前に出発していた。村長から手紙と正式な使いである証になるメダルを預かったときは緊張で震えていた。

手紙にはクロエミが記した毒の症状も記されており、厳重に封をしたサンプルの毒水も同封した。何かの魔法で封印したそうで専門の道具がないと開封できないそうだ。


準備を整えクーロイは世界樹へ向かうことになる。奇襲してくる相手に対して暗いうちから向かうのは無謀だったからだ。

一見いつもと変わらない荷物にしたが、コレクションルームには一週間くらいなら野宿できるだけの物資が収納されている。

植物系魔物に対して秘策もコレクションルームの中に仕込んである。


動きが制限されるし、村でも必要だろうからと村人からはあまり受け取らなかった。

逆に滋養のためにと保存していた赤色の奇跡や果実などを置いてきた。病人にもいつもと違う村の様子に怯える子どもたちに食べさせてほしいとお願いしてきた。


戻ってくる目安は五日間だ。それ以上はクーロイが遭難と判断されてしまう。満を持して南の森へと向かう。見送りは断った。みんなで生き残るために行くのだ。

装備もプルの位置もいつも通りだ。いつもと違うのは本気の解禁を決めていること。恐らくこうなるだろうなという予感がある。

区切りとしてはちょうど良いだろう。創造神との約束もある。お願いされたからではなく自分で決めた生き方だ。最後までやりきろうと決めた。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


森に入って1時間ほどしたとき、プルが頭を叩いてきた。魔物が近づいてきているから気を付けるようにという合図だ。いつもなら俺が気づくまで合図を送らないようにしてもらっているが、今日は急ぎだ。


「魔力弾」


魔力の塊を10個ほど発生させてその場でストックする。合図するまでは背後に控えて狙いまで追尾する性能を組み込んだ。木なら同じところに全弾命中させればブチ折ることが可能な威力になっている。

右奥の方に何となく魔物がいる気配はするが、見える範囲にはいないようだ。陰に隠れているのだろうかと思い、左から回ろうとする木だと思っていた幹に顔が付いていることに気が付いた。


「初めて見た。あれがトレントか」


声に出したことで相手も気づき、近づこうとしてくるが目だと思われる部分の間を中心に魔力弾を全弾叩き込む。さすがに魔物の体だったようで折れることはなかった。

大股で近づき、腕の攻撃をバックステップで距離を取る。もう一度同じ攻撃を叩きこむと今度は折ることが出来た。


地響きを立てながら倒れたことで、遠くから鳥の声や動物が動く音がした。


「さすがにこれは獲物が来たとバレたようなもんだよね。急いで回収しよう」


トレントも倒してしまえば魔力を含んだ木材だ。プルにも手伝ってもらって急いでコレクションルームに収納を急ぐ。

ここから先は散発的にやってくる魔物を倒しながら無理矢理通っていくことになる。こんなに魔物が襲ってくるのも珍しい。


魔力弾を当てた感じでは、トレントは今の俺では切れない。かと言って打撃では倒せなさそう。遠くから魔力弾が良さそう。

他に出てくる魔物は、強くてウッドウルフと嘴鳥、弱ければいつも通りの狩りの獲物が出てくるそうだ。

注意点は目の前に見えてきた通りなぜか種類の違う魔物が徒党を組んで襲ってくる。


目的地がどれくらい先にあるか分からないので、体力は温存しておきたい。でも無理に進んでしまったら周囲を囲まれて襲い掛かられそうだ。


「最悪の場合はコレクションルームに逃げ込めば良いや。とりあえずプル、向かってくる間は全部打ち取るぞ!」


大口を開けてツッコんできたウッドウルフを躱して胴を一薙ぎ、左手で魔力壁を展開して嘴鳥3匹の突撃を防ぐ。

止まった嘴鳥はプルが触手で首を絡めて地面に叩きつけると同時に首を刃状にして切り裂く。

同じく突撃してきた角うさぎは魔力弾を頭の上から叩きつける。念のため換金額が大きい角は傷つけないように気を付ける余裕がある。

トレントが先の尖った枝を無数に伸ばしてきたが、プルが巨大化した上で触手の数で対抗する。


その場で襲い掛かってくる魔物を連携しながら倒していった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「あっつい。なんとか倒せたかな。プルはダメージ受けてる?無さそうだね。じゃあとどめの確認と持ち帰れるように片付けていこうか」


コレクションルームの入り口を開けてプルに運んでもらう。同じだけ動いているはずなのに疲れた様子もなく働き始めている。


「スライムって凄いな。それともお前だけなのかな。出会えた俺は運が良いよ」


水分が欲しいと水筒を呷り、息を整えながら感謝を伝える。なんてことないさ~と動いているのをみると休憩を取るのが申し訳なく感じる。

さっさと回収して先に進むべく、自分でも集めだした。手がかりとしては何も無い状態では血の匂いをいつまでも残しておくわけにはいかない。

少なくとも別のウッドウルフの群れが辿ってきたとしたら背後からだ。痕跡を少なくしながら進んでいきたい。


「清浄の魔法が俺も使えたら、もう少し便利なのにな。属性魔法は本当に結局使えないし」


愚痴をこぼしているうちにプルの片づけは終わった。血の染み込んだ地面には魔力で土を掘り起こして埋めておいた。


「本命は出てこなかったな。もう少し奥に進んでいこうか」


先に進めるようにもう一度装備を整えて、方角を確認して再度出発した。

お読みいただきありがとうございました。

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