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2村の一日(3歳)①

みなさん、こんにちは。清々しい太陽の光が部屋の中に入ってきております。ついに始まった異世界転生は成功したようです。とりあえずは良かった。


今生の名前はクーロイ。黒髪黒目が理由だ。ザ・安直。前世とあまり変わらない外見に落ち着いたらしい。周りの言葉を聞いた感じでは、先日3歳の誕生日を祝ってもらった。ただ、正確ではないらしい。


うっすらと意識が持てたのは1年前ほどからだ。積極的に体を鍛えるつもりで動きつつ、ようやく思うとおりに動くようになってきた。

死にやすい世界って言われたし意識が持てるようになるまで生きられただけで感謝ものなのだと思いたい。


ただ、困っていることがある。


俺の周りにいる方々の頭に獣耳がある。俺には無い。俺は人なのだが、なぜか獣人族の村にいる。こうなった経緯は育ての親が教えてくれるまでは知らないふりをしていようと思っている。


とりあえず今日は一日の流れを紹介しよう。


まだ3歳だからそれほど何かがあるわけでもない。普通の子どもと言って良いだろう。生まれる前の記憶がある以外は。


何が出来るわけでもない暮らしにも慣れた。大人の話を聞いたところ、やはりスキルや魔法は存在するらしく、一日も早く取得するためて体を鍛える毎日を過ごしている。まずは死なないために強くなることにした。楽しく暮らしていてもいきなり害されることは絶対にある。そのときになって無力を嘆くのはイヤだ。


「今日も体をうごかしていくぞ」


早くスキルを眺めてニヤニヤしたいものだ。


とりあえずは朝だ。寝室は朝日を感じられる部屋だ。東に窓が付いている。朝ごはんの準備は既に済んでいるらしい。良い香りがしている。食卓へ向かおう。


自分の寝床から起き上がり、食卓へと向かう。


「じいちゃん、おはよう」

「おはよう」


鋭い眼光に真っ黒の体毛、人と同じ顔の作りで渋い顔をお持ちのわりに頭にも動物の耳がくっついていらっしゃる。

育ててくれているのは黒豹の獣人である牙丸さん。じいちゃんと呼んでいる。御年60歳だ。ただ、体つきはとんでもなく良い。しなやかな筋肉ってこういうことを言うんだろうなと思わされる。


意識がハッキリしてから初めて見たときは思わず触りに行ったもんな。そんなことをされたことがなかったようで、驚いた顔をした牙丸さんの表情はあれ以来見たことが無いが。


「はやく顔を洗ってきなさい」

「は、は~い」


ぼーっと見ていたら声をかけられた。まだ寝ぼけていると思われたらしい。顔を洗いたいのも本当だ。外の井戸まで行って来よう。

桶に水を残してくれていたので顔を洗ってさっぱりする。ついでにぐっと体を伸ばす。朝日がきれいだ。


「よし!」


家に戻ってきたら朝ごはんの準備は完了している。2人が座って俺を待ってくれていた。


「おはよう。さあ、朝ごはん食べましょう。」

「ばあちゃん、おはよう!いただきます!」

「よく噛んで食べるんですよ」

「うん!」


作ってくれたのは同じく黒豹の獣人であるクロエミさん。ばあちゃんと呼んでいる。じいちゃんとは同じ年の夫婦だ。幼馴染であることをクロエミさんからこっそりと教えてもらった。

とても柔和な笑顔を向けてくれる。笑うと浮かぶ皺が朝から心を和ませてくれる。


二人に子どもはいるが、独り立ちをして村からは旅立っていったらしい。孫もいるが、顔は幼いころにしか見たことは無いらしい。

クロエミさんが手紙のやり取りをしているのを見た。


食卓は一緒に囲んでいるが、食事だが人と獣人では食べるものが違う。というのに生きてこれたのは偏にクロエミさんのおかげだ。

そう。肉食動物の種族だからか二人は割と肉食中心だ。同じものも食べるが人である俺はバランスが必要だ。


晩は引っ張られて肉も多くなるが、3歳と朝という状況では2人が食べる量を見るだけでおなかが苦しくなる。


自分の食事である蒸かした芋と野菜と肉の入ったスープを美味しくいただく。

マヨネーズがほしい。くそ、作り方を覚えていない。


「「「ごちそうさまでした」」」


食事を取ったあとは、俺にとっては訓練の時間になる。


夜明け前に既に狩りという仕事を終えたじいちゃんが、体力の底上げを兼ねて指導してくれる。

男の子は近くにいる男に憧れるということを理解してくれているのか、理由も聞かずに指導してくれる。

とは言っても、まだ子ども相手だから突きや蹴りの型を一通りの確認をしてから流れの中で発揮できるかの確認をする。


体力の底上げは別に行うし、ボコボコにするような大人げないことはされない。そのうちされるかもしれないが。


昼前まで相手をしてもらった後は、休憩も兼ねて俺だけ昼ごはんを食べる。獣人は昼ごはんをあまり食べない。年齢もあるのよとクロエミさんが教えてくれた。

これは開拓村の他の家でもそうだから本当なんだろう。2人の食料を奪っているなんてことだったら、俺も絶対に食べない。


昼を食べたらどうしても眠くなるため昼寝をする。そして大音量で起こされるのだ。


「クーロイ!起きろ!!」

「うるさいな…。今日も来たのか。アカヅメ兄ちゃん」


開拓村の村長の息子でガキ大将を兼任しているアカヅメだ。3つ年上だから彼は6歳だ。ライオンの獣人である。そして元気なだけで悪気はない。

アカヅメの他にも同じ目的の4人ほど一緒に来ている。良い奴らではあるのだ。もう少し優しく起こしてくれれば、心の底から褒められる。


さて、スキルは使うほどに発生しやすいということが分かっている。

昼からは狩りを生業とする家の子どもたちが集まって体力を鍛えるべく走り回っている。ただ、平地なんてない。村の大人が作った立っている木や切り倒した丸太を組み合わせて作ったアスレチックでの鬼ごっこだ。


身体能力で劣る俺が太刀打ちできるわけがない。

しかも一人だけの別種族だ。いじめ倒されてもおかしくない。というのに


「人でもスキルが身に付けば獣人と変わらない動きをするものもいると父さんが言っていた。だからお前もがんばるんだ!」

「クーロイは獲物の子ども役だ。子どもを守る動きをするんだ!」


将来立派なイケメンになりそうなセリフを言ってくれる。そして走り回るのだ。俺が獲物役になったときは完全に手加減してくれている。


子どもだったら分からないようにだ。中身大人だから気づいてしまう。でもがんばって走る。そして過去何度疲れて倒れたか記憶にない。


だから俺はとてつもなく気の良い友達にこの上なく感謝をしているのだ。

お読みいただきありがとうございました。

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