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17村と町の関係

帰りながら血の使い道は思いつかなかった。そのまま捨てて良いのだろうか。川に流す方が良いだろうから今度行ったときに捨てようと決めた。しばらく保存も出来るようだ。

スキルがある世界ならコレクションルームみたいな能力をもつものもあるかもしれない。夕食の話題に聞いてみた。


「聞いたことはあるが、かなり珍しい」

「誰にも知られない方が良いわね」

「分かった」


これで珍しいならコレクションブックのことは言わない方が良いだろう。2人とも気にしないでいてくれているようだ。


「じゃあさ、町に行きたいんだけど連れて行ってくれない?」


目的は備蓄を増やすことだ。いきなり買い占めなどを行ってしまうと周りに迷惑がかかる。それに今はまだ資金も多いわけではない。

市場を見れば金策の方針も立つだろう。スキルの取得方法も分かるようになったのならば、有効活用すべきだ。

旅に出る前に恩返しするためにも何か新しいことを始める必要がある。



町に行くにも売り物が少なかったため、数日後に町に行くことになった。その間は狩りと採取を遠慮なしで行うことにした。

持ち物の量を気にしなくて良くなった。とは言え、勝手にやりすぎてはいけないので牙丸にどこで行えばよいかを十分に確認した上で出かけていた。

既に一人前と言われるくらいには成果を残すことが出来るようになっていたのが幸いし、かなりを持ち帰ることが出来た。


持ち帰って牙丸に言われたことは、思った以上に魔物が多いことである。

角うさぎや走り鶏程度では狩りには問題ないが、それらを食料とする魔物が移ってきては村に危険が及ぶかもしれないと言われた。

クーロイに指示するだけではなく、村の狩人たちと相談して泊まり込みで遠くまで狩りを行うことにした。

そのおかげで町に行くのが10日ほど遅れることになったが、クーロイとしても在庫が増えることになったし、村からの売り物も増えたので良い方向になった。


その間にクーロイが気づいたこととして、コレクションブックからコレクションルームに置いたものが取り出せることが分かった。

取り出せるのはコレクションブックの見開きページよりも小さいものだけだが、十分だった。

クロエミに背負いカバンをもらい、コレクションブックを中に入れて、さもカバンから取り出しているかのように見せることにした。

よほどおかしなことをしない限りはバレないだろう。周りに知られたくはないが便利なスキルを使えるように考えてみた。今のうちから試しておく。


そしてようやく町に行く日になった。当初は牙丸との2人で行くつもりだったが、あまりにも荷物が増えたため8人ほどの集団で行くことになった。

村を出発する前に、アカヅメを始めかつての遊び友達も見送りに来た。

お土産をねだるというよりも、一緒に連れていってほしいということだったが、なぜか追い返されていた。別の街に連れていくことにはなるそうだ。


よく考えればアカヅメももうすぐ10歳を迎える。そろそろ獣人の旅立ちを迎える。自分たちが旅立つ前に町に行きたいのだろうと解釈した。

そういうことならお守りみたいなものがあれば餞別用に買ってこようと買い物リストに加えた。


そう思いつつ、町までは特に何もなく到着した。一緒にいるメンバーたちがフード有りのローブで揃えていることは気になっていたが、見える位置になってから被っていた。

その時点でイヤな予感がしていたが、注意点を聞いて落胆した。


獣人村が暮らす村の名前は正式にはユーシルの村、今回買い出しに訪れたのはミルズの町だ。近くに物の売り買いが出来るようなところが無い。他の町は日帰りでは行けない。

つまり、ミルズの町を通さずにユーシルの村は物の売り買いをすることが難しい。獣人で商売に適した気質を持つものが少ないからだ。

にも関わらず、2~3年ほど前から安く買い取られ高く売りつけられるようになった。

食糧は獣人は何とかできるので特に何とでもなるが、生活を便利にするような魔道具や衣類などはちょっとした贅沢品にまで吊り上がってしまった。

下手すればガラの悪いものに絡まれてしまうため、町中では目立たないようにしておくことが獣人たちの共通認識になった。


クーロイの場合はむしろ町中では無関係を装った方が良いというほどだそうだ。

旅立つ前にこれを何とかしようと決めて初めての町の訪問をすることになった。


と、意気込んだところで初訪問だからと何か事件が起こったわけではない。

売るときだけ牙丸が近くにいたが、カバンの量を超えない程度に物を出していろんな店で肉や薬草や果実を売ることが出来た。持ち込みであれば特に今回は問題が無かった。


自分だけでやり取りをしたいと考えて方法を聞いたが、まだ6歳では冒険者ギルドの登録も出来ない年齢だった。特例を認めさせるにしてもせめて7歳を迎えてからと言われてしまった。あと半年くらいだろうか。ならば素材を貯めて自分でやり取りできるようにしようと決めた。


初めて手に入れた自分のお金は安く買えた香辛料に使った。仕入れの荷物に入れ替えるため叩き売りをすることにしたそうだ。かなりラッキーだった。クロエミに頼まれた普段使いは牙丸が購入する。自分の稼いだお金は自分で使って良いと言われたので、遠慮なく自分のために使った。ターメリック、クミン、コリアンダー、胡椒、ウコン等どこかで聞いたことのあるようなものがあった。自分のために使うが、これは絶対に村のためになると確信を持てた。


村に戻ってから購入物をクロエミに見せたところ、全部ではないが、村の周りでも採取できると言われたからだ。膝から崩れ落ちたことは言うまでもない。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「すべて狩られただと!?」

「数日前に狩猟の成果として売りに来ていたようです」

「富ませてどうするのだ!!もういい!下がれ!」

「かしこまりました」


執事が下がってから独り言のように呟く。


「直接の手段で駆除しろ」


返事はなかったが、声も出さずに笑う男が残った。

お読みいただきありがとうございました。

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