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147ときに真実は心を抉る

「だんまりかぁ」


二人はどうなるかの末路が分かっているようで、話すこと自体を拒否している。黙っていることが何かありましたって証明しているようなものだ。真実を隠すことで逃げることを選択したらしい。


「じゃあ言っておこう。ダンジョンの管理をしている神獣は魔物を発生させるところを選択することが出来る。厳密に決まっているんだ。ユニコーンに明確に敵対する前の状態のあんたたちの前にイレギュラーな魔物が発生することはあり得ない」


反応するが、聞く耳を持ってくれたようで驚く。クーロイは邪魔されないうちに全部を話してしまうことにする。


「だから獣人が暴走は俺には分からないけど、不似合いの魔物は嘘だ。なんならどこのダンジョンか教えてよ。そんなことをする神獣なのか聞くし、時間があれば連れて来れるよ」


(連れてくるまではハッタリだけど)


「何も言わないなら、別のところも言っていくね。ユニコーンを傷つけなければ強さの底上げをしてくれたはずだよ。そのために現れたんだから」

「…は?」


声をあげたのはグラントだ。声が聞こえたのかタイジョンも反応している。


「ダンジョン攻略者に事情説明するってのも神獣の役割なの。さっき俺が話してた神獣の役割とかを聞いて、協力することを承諾したらスキルとかステータスとかを上げてくれるんだよ。それこそ壁をぶち破るほどのね。あ、俺はまだもらってないから。キミたちを相手する前にもらったらずるいじゃん?」


誤解の無いように苦笑いで話す。同じ表情にならないのは当然だ。


「だから、攻撃を加えずに事実を受け入れていればこんなことにはならなかった。キミたちが道を踏み外したのはそこが最大の悪手だったね。ちなみに神様たちが一番怒っているのもそこだよ。部下を傷つけられたんだからね」


話を戻す。


「うまくいかないことを誰かのせいにしないでね。全部自業自得だから。で、話せよ。グラントと同じ目に遭わないと話せないのか?」


沈黙の空間になってしまった。グラントを崩すにはここかと思ったが、話さないなら仕方ない。ダンジョンに連れて行くことにしよう。そう判断して指示しようとしたら話し出した。


「あの報告は嘘だ」

「ミゲン!!やめろ!」

「ラゲズ、俺はせめてちゃんと話をしてスッキリしてから死ぬことにする。俺たちが原因なんだ」

「やめろ!まだ、まだ生きられるはずだ!死にたくない!」


こんなに取り乱すなら最初からしなければ良いのに、としか思えないが話してくれるなら聞きたくなってしまうのがヒトの性というものだ。


「うるさいから。ヨウキ、用意してたやつ使って黙らせて良いよ」

「お。ホンマですか。お披露目いたしましょか。ちょっと待ってくださいね」


そう言って、黒に染まった魔力を溜め込む。


「召喚魔法、黒骸軍団」


黒の霧を発生させると、そこから黒く染まった骸骨が無数に召喚される。手にはロングソードと盾が握られている。ヨウキは嬉々として召喚しているが現れる数が多すぎてその場にいる全員の周囲をあっという間に埋め尽くしていく。

最終的に召喚された数は数百に及んでいた。クーロイからも少し離れていた『浄化の鉄槌』の他のメンバーががどこにいるのか見えなくなった。


離れて監視している者たちからもこの光景は見えているが、合図があるまでは来ないように言われている。むしろ逃げたいと思っているくらいだが、逃げられない。


「ヨウキ、多すぎだよ」

「それくらい魔力使わんように溜めてたからですよ。減らします?」

「ついでだから訓練でもしたら?これ全部操ってるの?」

「命令すればある程度は自律行動可能ですよ。苦労しましたから!!」

「はいはい、分かったから。2体いれば十分だから、別のところに持って行って。軽い訓練でも課して今後の使い方でも考えてよ」

「へ~い」


クーロイにとってはいつもよりも少し喧しいくらいの状況だったが、他のメンバーにはそうではなかった。気が付けば再度静かになっていた。


「じゃあ、続きを話してね。邪魔しようとしたら物理的に口を塞ぐ準備もしてあるから大丈夫だよ」


すぐに話を始められるほど、ヨウキの使った魔法の影響は弱くはなかった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


落ち着いたミゲンが話し出す。


「先に進むように言ったのは俺とラゲズだ。それを師匠にも獣人のヤットにも止められた。師匠にも内緒で勝手に進んだんだ。だけど突然現れた魔物が多くて二人だけで対処しきれなくて、助けに来てくれたヤットを見捨てて逃げたんだ」

「ふ~ん。ヤットって獣人さんだけは災難だった話だね。それで、そうなると師匠さんが死んでしまったのはなぜ?」


さすがにそこに関して言うことは勇気が必要なのか再度黙ってしまうミゲン。ちょっとイラっとしてしまうクーロイ。


「……しょうの……に…けをまぜ……」

「は?」

「師匠の食事に酒を混ぜたんだ」

「ん?それだけ?」


それがなぜ死ぬことに近づくのか、分からないクーロイは首を傾げる。その言葉に反応したのはグラントだった。


「馬鹿な!師匠は酒が飲めなかったんだぞ!」

「し、知らなかったんだ!ただ豪快な人だったからそうだとは思わなくて…。それくらいしないと師匠に気づかれてしまうからってラゲズが言うから…!本当に済まないことをしてしまったと思っている!」

「まて…、待て!ラゲズ。お、まえ……。お前は……」


あ、この続き何を言うか分かった。クーロイが予想しているときにはグラントは既に目が真っ赤に染まっている。


「お前は、師匠が酒に弱いことを、知っていたはずだ!あまりに強すぎるものを呑むと、危険なことがあるくらいには、酒に弱かったことまで!」

「そん…なに…?」


動揺しているミゲンにクーロイが突いて質問する。


「酒に弱い人は結構いると思うよ。どんな酒を混ぜたのか、もっと詳しく」

「師匠は普段は飲むと止まらなくなるけど、酒には強いと。眠ってしまうくらいにしようと思えば強いものを入れるしかないと言っていたので、そのとき持っていた度数の強い酒をいれた……」


その言葉を聞いてグラントは既に言葉にならない叫び声をあげている。信じていた仲間がくだらないことで師匠を殺していたのだから、そうなるのも分かるというものだ。

クーロイはお構いなしに真っ青になって震えているミゲンに先を催促する。


「ちゃんと師匠さんがどうなっていたかを言ってよ」

「戻ってきたときには白くなっていた。息はあったが、呼吸が浅かった。なぜそんなことになっているか分からなかったから…。俺たちが生きてダンジョンを脱出するために、師匠の装備を奪って逃げることを、ラ、ラゲズが…」


この発言によりグラントが立ち上がろうと暴れたが、ヨウキが念のため10体ほど取り押さえるために黒骸を呼び戻して取り押さえている。


「あんたが知っているのはそこまで?」

「……そうだ。でも、でも俺も知らなくて!」

「知らなくて許されないことはある。謝っても許されないこともある。子どもの俺に言われなくても分かるでしょ?」


話は終わりのようなので、念動魔法で他の仲間のところまで浮かせて運ぶ。代わりに黙らせるのに拘束していた黒骸2体がラゲズを連れてくる。


「はいはい。お待たせ。全部知った上でやってたんだね。全部の黒幕ってことで良いかな」

「く、黒幕なんて…、俺だって…」

「騙されたって?でもこの状況を作り出す行動はあんたが仕出かしたことが原因だろう?他の連中を見てみなよ。全員が被害者面して全員睨んでるよ」

「う…」


しばらく色々と試したが、ラゲズはそれでも話そうとしなかった。さすがにもう時間も使い過ぎた。一番時間を使ったのはクーロイではあるが、どうしようかと頭を抱えたくなってしまう。


「そんなら聖教国のことでも聞きます?」


ヨウキから提案が入る。言いたいこととしては違う切り口から攻めるということだ。


「え~?全部話してって言ってもここまで言わないのに?聞き方変えても限度があるでしょ」

「こっちが聞いて、それが嘘かどうかを調べるんですよ。嘘やったら兄貴が分かるんやし。試しですよ。一回だけ聞くだけでいいやないですか」

「もう結構長いし。言わないならもう良いかなと思い始めてるんだけど…」

「まあそう言わずに。じゃあ兄貴頼みますね」


そう言ってプルを抱えて、ラゲズに質問をする。


「当たらなさそうな質問するか。グラントの村を滅ぼしたのは、実は聖教国が裏で糸を引いていた?」

「ち、ちがう!」


プルの判定は嘘。つまりグラントの村を滅ぼしたのは聖教国らしい。しかもラゲズがそれを知っていたと。うわぁ、もう言葉にするのもキツイ。


「え?当たるはずやないことを聞いたつもりやったのに…」


それを聞いていたグラントは既に呼吸すらしづらい状態になっている。さすがのクーロイも少し回復させた。

話が濃いなぁとクーロイは思ったが、まだ言うこともあるからと仕方なく最後まで聞くことにした。

お読みいただきありがとうございました。

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