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14プルと稽古をする

翌日から魔物を倒す前に試しにプルと戦うことになった。稽古として動くことはあっても本当に命を懸けて戦うことはなかった。

実戦をするにしても、牙丸ともゴザルとも実力差がありすぎる。また、初めての狩りは人の形をしていないものと戦うことになる。

角うさぎ、走り鶏、そしてスライムといったところだろうか。ならばうってつけの相手がいた。


ということで、プルと戦うことになった。剣術の特訓でも使う木刀を構える。クーロイの基本は正眼の構えだ。


「では、勝敗の確認だ。クーロイはプルに一回攻撃を当てれば勝ちだ」

「オッケー」

「プルはクーロイに3回当てれば勝ちだ」


プルプル


「プルは分かったって。でもそんなにプルって強いの?」

「今のお前よりは強いぞ」

「本当に~?」


プルプル


「ほぅ。そこまで言うなら本気でやるからな」


牙丸にはプルの言葉が分からないのでどんな言葉が出てきたのかは分からない。が、クーロイの真剣さが増したので良しとした。少し頭に血が上りすぎではないかとも思ったが。

何事も死なない程度に経験することが必要だ。


「では、始め!」


掛け声とともに、クーロイは一気に踏み込みそのまままっすぐに突きを放つ。


「これでどうだっ!」


当たった、と思ったが手ごたえが無い。目の前の状態にも驚いた。プルは突きの着弾点を見切り、ドーナツ状に変化し突きを躱していた。

驚いたことでクーロイは硬直してしまう。その瞬間にプルは元の形に戻り、体の中に木刀を取り込んで固定した。

クーロイが慌てて取り返そうとするが、引っ張っても取れない。持ち方を変えようとしたところを木刀をねじられクーロイの手から木刀が取られてしまう。


すかさずペッと木刀を後方に投げ、プルは5本の触手を伸ばす。クーロイも切り替えて体術で迎撃しようと拳を構える。

顔に2本、胴体に3本が伸びてくる。顔狙いの2本と胴体狙いのの1本は躱し、残りの2本は左手ではじく。右の突きを放てるように足に力を入れて一歩踏み出す。


「これでっ…っど!?」


どうだ、と言おうとした。しかし上からの衝撃に右手にあった。衝撃を感じた瞬間に頭と肩にもそれぞれ一発ずつ。合計3回だった。

周りにも体に当たったプルの一部と同じものが5個ほど落ちていた。


「そこまで」

「えー??」


相棒が思ったよりも作戦を立てて攻撃を組み立ててきたことに驚いた。上から降ってきたのは当然プルが頭上に打ち上げたものだった。

木刀を取り戻そうとクーロイの視野が狭まったときには、最後の盤面が見えていたようだ。


「参りました…」


下げた頭にプルの触手がポンポンと乗せられる。下を見ていた視界の中に見えたプルの一部が本体に向かって戻ろうと移動していた。


あの一部も動かすことができるんだ。プルって普通のスライムを倒す練習としては強すぎるんじゃないか?


何か言う前に牙丸が先に言葉を発した。


「何が原因か分かるか」

「見くびっていたこと、攻撃手段を自分で縛っていたことかな」


反省しなければ動きが変わらない。言葉に出来るほど客観的に考えられるなら、ひとまず牙丸は安心できる。


「どんな時でも周囲に気を配ることはやめるな。相手が複数の時もある。探知系のスキルは切らすな」

「分かった」


一対一になることは珍しい。そもそも相手も自分も向かい合って戦いが始まることなどほとんどない。

隙を突くか、突かれた状態で始まるはず。どちらの場合にしても周囲の情報を掴まずに有利な状況は作れない。


自分の課題が一戦だけで浮かんできた。


「あとは攻撃の種類が武器、体術だけなのは少ないな。属性魔法が使えなくとも魔力で牽制するくらいは覚えた方が良い」

「分かった。複数のスキルを使うのはあまり意識したことが無かったよ」

「なら訓練時間以外でもスキルを使うことを意識するようにしておけ。無意識で使えるようにすることで戦闘時の思考の負担が減る」


前世のマンガでもそんなことがあったことを思い出しつつ、口から出てきたのは自分への扱いだった。


「ものすごく実践的だね」

「戦闘に大人も子どもも無い。あるのは生き死にだけだ。勝った方が死に負けた方が生きることもある」

「なるほど」

「獣人は基本的に生きるために狩る。下手に怪我をすれば家族を、村を守れない。怪我をせずに戦うことが求められる。回避や察知を重点的に鍛える者が多いな」

「怪我するのはイヤだから、俺もそうするよ」


色々と方針が決まりそうだ。いつまでも自分が一番弱いではだめだ。旅に出るときにプルと二人だ。守ってもらうだけでは相棒とは言えない。互角まではもっていかなくては。


「プル。せっかくだからもう少し相手してもらっても良い?」


プルッ


「ありがとう。じゃあもう一回!じいちゃん、審判よろしく!」




昼ごはんが、とクロエミが呼びに来た時、怪我こそないもののプル相手に転がされているクーロイを見て自然と微笑みが浮かんだ。気が付くと横に来ていた牙丸から魔力の使い方も実戦的なものを教えることを要請された。

午後からはクロエミが魔力操作の見本を見せることになった。

お読みいただきありがとうございました。

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