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136嫌いな理由

気絶していなかった7人にそれぞれ黒い霧に包まれている。


「黒闇。初めて聞くけど効果はどんなもの?」

「音漏れ防止の上で、視覚を封じます。術者のワイには中で話したことは聞こえるようになってます。誰に言うかも指定できるんで、質問さえ決めてくれたらワイが全部聞き取りますよ」

「これ以上黒魔法を使っても大丈夫なのか」

「黒氷界は保護する必要なくなったので、ほぼ消費ゼロです。黒闇もそんなに消費無いんで」

「そうか。ありがとう」


聞き取りは任しといてください、と言ってくれたので頼んだ。聞き出してほしいのはこれからの『浄化の鉄槌』の行動だ。下っ端が知っているかは怪しいと言えば怪しいが。知っている可能性はなくはない。


自分勝手な理由で他人を踏みにじる話などずっと聞いているのはストレスだ。頭がおかしくなりそうになる。

でも、さっきの生命魔法はかけ直した方が良いだろうか。償いのために手が使えないのはただの邪魔だ。俺が原因で殺してはいけない。被害者の気持ちが晴れるための何かをさせなくてはいけないのに。

あとで確認しよう、ということだけを決めておく。


ヨウキからも目を離して少し離れたところで呼吸を整えて休憩した。30分ほど経つと幸丸が呼んできた。


「マスター。ヨウキの尋問が終わりました。外でケイトを始め、待機している者たちに引き渡さなくてはいけないのですが、どうしますか」

「分かった。引き渡そう。聞き出せた情報も聞きたいし、話して良い分は伝えておこう。気絶している3人に関しても、尋問を起き次第してもらうようにお願いしよう」


ヨウキに黒闇を解除させると、手首を切り落としたのがマシだと思えるくらいに腕と脚が無残な状態になっている。切り落とされてはいないものの、骨が折られてあっちこっちおかしな方向に曲がっているし、切り傷や打撲痕もたくさんあるし、火傷や凍傷もある。気絶しているが表情は恐怖に染まっている。


しばし、沈黙。


ゆっくりヨウキの方に首を回すと、同じように首を回して視線を明後日の方向へと向けられる。おい。


「ヨウキさんや」(こっち向け)

「はい、なんでしょ」(絶対にイヤや)

「黒闇の効果をもう一回教えてくれる?」

「さっき言うたとおりですよ~」

「本当に?」

「ホンマです」

「じゃあなんで俺と目を合わせないんだよ」


思いっきり心当たりがあります!と態度で示されていては、話を聞かざるを得ない。


「ご主人が子どもやと思うて、やったこと棚上げにした上で、泣き落としにかかろうとする。仁義の欠けたやつらにはこれくらいしても構わんでしょ…」

「はは…。ありがとう」


跡が残る程度に回復させた。さっきの二人も手首はくっつけた。神経が繋がるかどうかまでは確認していないが、繋がっていればどうにでもなるだろう。

黒氷界に穴を開けて、一人ずつ外へと送り出していく。外にはケイトが憲兵や兵士と一緒にいるはずだ。状況に関しては詳しくは言っていないが、暴れたので抵抗されなくなるまで攻撃するしかなかったと言ってある。

心構えが薄かったであろう人の悲鳴が穴から聞こえてきた。申し訳ない。でも完全に治すのは夢だと思われるから残しておかないといけないなって話し合って決めたんだよ。

残ったのは気絶した2人と錯乱した1人だ。


「こいつらも引き渡しでいいな?ヨウキ」

「指揮系統はあったとはいえ、直前やったからかこれからの動きは大体聞けました。幸丸が掴んどる動きからいっても間違いないでしょうし」

「はい。私も同意見です。マスター」


まあこの二人が言うなら引き渡しで良いだろう。


「じゃあ、あと半月くらいで」

「はい。『浄化の鉄槌』の本隊がマスターを狩りに来ます。魔物に力を貸すものとして」

「本当は逆なんだけどな。俺がプルとヨウキに力を借りてる」

「話を聞かん奴らの認識なんで」


まあでもこれで正当防衛の形は取れる。こちらから追いかけなくても向こうから来てくれるなら手間も省けるというものだ。それに。


「向こうが狩るんじゃない。こっちが擦り潰すんだ」


以前、『浄化の鉄槌』に所属しても抜ける人がいるということを話をケイトにしていた。その続きがある。まだ残っている奴らについてだ。

単純に入ったばかりで魔物に恨みのある者もいるだろう。だけど、それ以外の、長い期間所属している者についてはこの世界の害悪だ。


闇依頼をやりながら所属しているさっきみたいな奴らは、恨みも理念も忘れ楽にできる金稼ぎに溺れたやつらは一般人を犠牲に生きている。これでまだマシなやつらだ。

金儲けのために、利益率の高いものを行う。犯罪という点は評価できないので罰は下るが、生きるために動くのは生き物の摂理だ。犯罪者としてだが人の世でまだ生きていると言っていい。もう一回言う。これでマシなのだ。


最悪なのは、今度来る『浄化の鉄槌』の本隊のやつらだ。やつらは金儲けは考えていない。魔物に関係すると言われたら人でもパーティでも村でも、標的は必ず殺す。本当かどうかは関係ない。疑いがあるというだけで行動する。

前に来た時に俺がクーロイだとバレていたら店の中にいた人は全員殺されてた。俺を殺したのが誰かというのを分からなくさせるために。

情報をもたらすのは、奴らのブレーンであるラゲズという男だ。こいつが聖教会との繋がりがあるらしい。それをリーダーのグラントとサブリーダーのタイジョンは盲目的に信じる。

そこまで信じる理由は知らない。聞く気も無いし、聞いても意味が無い。自分で考えることが無くなり、ただ自分の主観だけでモノを見て、周囲を決めつけて暴力を振るう。

その対象は魔物や一般人だけに限らない。他の冒険者もそうだが、自らのクランメンバーでも指示に従わなければ殺す。もはや救いようがない。ただ、一番の罪はそれではない。


奴らは過去に神獣を傷つけた。神獣とは、この世界を守護する神のために存在するもの。どれだけ食べるのが好きなだけの動物たちに見えても、この世界を守る役割を担い、この世界で守るべき存在なのだ。それに害を為した。


天罰を喰らわせたくても神は力が強すぎてやり過ぎる。


神獣はもう彼らの前には姿を現さない。神獣に会う方法はダンジョンを攻略するしかない。俺はイレギュラーだ。気にしないでくれ。

ちなみに俺のようなイレギュラーではなく、条件を満たせば世界の仕組みを知ることは出来る。どれでも良いからダンジョンをクリアすれば良い。会えば神獣が教えてくれる。

世界の仕組みを知るものは少ない。ダンジョンなんて簡単にクリアできないからだ。行って理解したが19階層から下は普通では進めない。コレクションハウス無しで行くなんて今の俺でも無理だ。


奴らがダンジョンに入るとほぼスタンピードに近いことが起こる。神獣が身を守るためにそういったことを起こすのだ。奴らに向かって魔物が本気で殺すために群れて現れる。階層すら無視してAランク魔獣が襲い掛かる。

だから『浄化の鉄槌』はダンジョンで仕事が出来ない。やつらが狩れなかったAランク魔物は(神獣が狩るまで)残るからダンジョンは閉鎖される。だからギルドからも嫌われる。安全に金を稼ぐなら闇依頼をするしかないのだ。


神獣がダンジョンで魔物を作る理由を触れ回るわけにはいかない。色々と神様にも制約はある。知っている者はこの大陸とは違ってもっと魔物が強いところに行くことになる。それだけ強さが必要とされるからだ。

『浄化の鉄槌』がやり過ぎたことで落ち目であることもあるし、一般的な権力で押さえつけられることも関係している。だから生かされている。方向性だけ修正すれば魔物を殺すから。その点だけは役に立つから。大目に見られていたのだ。

奴らを殺す手間と返ってくるリターンが釣り合わない。聖教国に圧力を加えて行動を抑えるが、ちょこちょこ悪事をはたらいているのが現状だ。


神獣からこの世界の仕組みと神獣と魔物の役割を聞く前に神獣を傷つけたそうだ。知っていれば行動は変わっただろうか。関係ないか頭悪そうだったしな。


望むまま魔物を殺せなくなって抑圧された『浄化の鉄槌』は八つ当たりのように地上にいる魔物を、魔物を引き連れたものを殺してまわる。


そこに小回りが利く俺という存在が現れた。本筋ではまだ役には立たないが、『浄化の鉄槌』くらいは相手に出来るようになった。神の意図も理解している。


「待ってようじゃないか。ゴミ虫の雑魚がやってくるのを」

お読みいただきありがとうございました。

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