11疲れてるときは気を付けよう
この村で暮らしていくのは別に構わないと考えるクーロイには生まれてから悩んでいることに今日も悩んでいる。せっかくもらった才能は何か役立つことは無いのだろうか。
結構すごいぞってことを創造神は言っていたが、さっぱり役に立った覚えが少ない。黒い石と得体の知れないスライムであるプルと出会ったことはそのおかげかもしれない。
十分すごい目にあったからこれで打ち止めなのだろうか。
はたと気づく。落ち着いて思い返してみるとこれ以上を求めるのは傲慢ではないか?
黒い石のおかげでとても強くなることができそうだ。時間はかかるが糸口は掴めている。
プルは言わずもがなだ。あのときに出会わなければ最悪死んでいた。
生きているだけで感謝すべきではないだろうか。謙虚になる必要があることを心に銘じておこう。
とはいえ、持っているものは有効活用しなくてはならない。
才能の伸ばし方は暫定『集めること』だとして、今まで集めたのは石・薬草・果実・薪・花、くらいか。
食べ物は自分一人で食材を集められないし、調理技術も未熟だ。まだ早いかな。
調合はまだ上手くできないから薬やポーションもまだ作れない。ナイフの使い方を覚えて木工でもやってみようか。
ん~。5歳が?微妙だ。自分一人での限界を感じるなぁ。もう少しヒントが出てきたら考えてみよう。
とりあえずは現状維持でいつも通りの取り組みをがんばることにしよう。
☆ ★ ☆ ★ ☆
そして、6歳の誕生日の朝!
を迎える前に、見覚えのある日本家屋の天井があった。頭が混乱して正常に戻る前にまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ハッピーバースデイ!クーロイ君!新しい人生は楽しんでるかい??」
「…えっと。ありがとうございます。そうぞうしんさま」
「あっれ~?君って寝起き悪い方だっけ?」
「寝起きに心底驚いたら、ちょっとくらい呆然とした声が出てもおかしくないと思いますよ。人間は」
ちょっとイラつきながらようやく目が冴えてくる。前の時は転生への感謝があったが、今回はイラつきが勝つ。なんか今日うざいな。
「へ~。そうなんだ」
「はい。なんかご用事ですか?」
「いや、キミにあげた才能について教えてあげようかと思ってね。特殊だし」
「助かります!ぜひ!」
都合の良い話に飛びつくが、顔を近づけすぎたせいで顔面にアイアンクローがかかる。
「近いよ。いきなり顔が近いと防御してしまうよ」
「ギブギブギブギブ!ごめんなさい!」
「おっとやりすぎたね。顔面を割る前に放そう」
「さて閑話休題、話を戻そう」
「大人しく聞きます」
顔の痛みをがまんして正座で居住まいを正す。
「魔物倒すのが一番早いよ。才能って要するに神からの祝福なんだけどさ。その神の望むことが一番良いんだよね。で、その才能を作るときに魔物をどう効率よく倒させるかってことも考えてしまってたからさ。それが反映されちゃったんだ」
「あんたのせいか!」
「気にしないで良いよ」
「気にするから!あんた今日変だよ!」
「普通が良い?普通の才能のことも聞くのかい!?」
「言うなら聞くから、どうぞ…」
ドン引きである。いつの間に話が通じないことになったのか。
目をカッと開き、背後に黒い靄を発生させながら大声を張り上げる創造神。なんというかホラーを主張したいようだ。
本当に前とキャラが違いすぎる。聞いてはいけない雰囲気を出してるつもりだろうか。心の声を呑み込み自身の主張を通す。
考えるふりを3秒ほどして、にこっと創造神は笑う。
「分かりやすく才能に沿った行動にすることが多いね」
「だったら、とんだ不良品じゃないか!?」
「だから説明に来たんだよ、許して。特に6歳にならないと才能って育ちにくいし」
「説明不足がすぎるね」
悩んでたのが無駄だったそうだが。教えてくれたのはありがたい。
『気ままなコレクター』とかのんびりした名前なのに必要な行動が『魔物を倒す』だったらすぐには気づかない。
イヤ、そのうち気づくだろうが。確証を得るための試行錯誤で時間を取られるのは不親切だ。一言だけ文句を言っておこう。
「あんたの部下の不始末で死んだんでしょう。もう不足は無しにしてくださいね!」
言ってやった!すごいドキドキする!こんな文句付けるなんて初めてだ!今回の創造神変だし。言っても大丈夫だろうと少し気を大きく言ったことに満足した。
しかし、次の一言で冷静にさせられた。
「違うよ。異世界の尻拭いだよ。キミ、元の世界からこことは別の世界に拉致されて、そこで処分されそうになったからこの世界で引き受けたんだぜ。…………あ」
いらないこと言ったとようやく正気に戻った創造神がごまかしの笑顔で色々と言い訳を言っている。逆にクーロイはとっさに声が出なくなる。
「は?え?」
説明をあきらめて投げやりに続ける。
「最初に説明してなかったね。細かいから別に気にすんなよ。めんどい」
「え?ちょっと待って。気にするところだよ?」
「気にしないようにしよう。ちょっと僕も疲れておかしかったよ。じゃあ才能の話はしたからこれで終了にしようか。はい、目が覚めるよ。3、2」
両肩を掴んでお願いする。
「きちんと説明をお願いします!」
「聞かなかったことに」
「できません」
休憩してから話しかけるようにすれば良かったと創造神も後悔した。
お読みいただきありがとうございました。