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気ままなコレクターという才能をもらって転生したが、気ままに過ごせるかどうかは別問題らしい  作者: つちのこ
4章 活動範囲が広がると起こす騒動も様々
101/151

101真剣なのは最初だけ

「幸丸っ!!」


自分への攻撃のことよりも、幸丸へと駆け寄る。近づいた俺に待っていたのは、


ガッ!!!


顎への一撃だった。幸丸にやられたのだと気づくのにまた時間が必要になる。目の前がチカチカして世界が回る。一瞬足に力が入らない。生命魔法を使おうとしたが、魔力もうまく練れていない。危機感だけが高まっていると、目の前に猿の足が見えた。

そして頬にチクッとした痛みを感じると、気持ち悪い魔力が流れ込んでいく。何をさせたいのか魔力が強要してくる。その意思を汲んで立ち上がる。


これが、魅了の状態か。俺はどうやら記憶が残るタイプの様だ。これで残る敵対勢力はプルだけになったということか。戦闘ではまだヨウキは頭数に数えられることもない。ピアスに隠れているし。


せめてもの抵抗で単純な攻撃や単純な魔法だけを使う。幸丸の偵察機もプルに攻撃を加えていく。


プルからの言葉も聞こえている。必死に止まるようにヨウキからの声がする。


「ご主人!止まってくれ!」


プルはともかくヨウキは出て来るなよ。手加減してても危険だから。


俺たちだけではなく残った軍隊猿までも攻撃に加わっていく。さしてダメージを受けたわけでないが、攻撃を控えているため徐々にプルを追い詰めていく。


「ご主人、幸丸。どないしたらええんやー!先輩を殺そうとするのはやめてやー」


ヨウキが叫ぶ。猿たちにも聞こえるように言っているので、猿たちも反応する。笑っているようだ。


「ウキー!ウッキッキッキー!」


言葉は分からないが、猿たちが遠巻きに集まってくる。見物に切り替えたようだ。最前線は俺と幸丸。間を開けた後ろには兵隊として戦っていた軍隊猿と司令官が控える。その後ろには見習いということだろうか。


余裕を持って司令官が歩いて近づいてくる。もう隠し玉はなさそうか。




じゃあ、もういいか。




くるっと後ろに振り返る。


「風環円刃」

「一斉掃射」


無防備になっていた司令官や兵隊に多大なダメージを与えていく。


最後列に控えていた猿たちの反応は様々だ。こちらに向かって威嚇しながら近づいて来るものもいれば、離れるように逃げようとするものがいる。前者は兵隊に、後者は司令官になるんだろうな。なんとなくそんな気がする。


「まあ逃げられないんだけどな」


最後列には巨大化したプルが触手を振り回しながら現れ、逃げようとした猿から捕まえていく。こちらに近づいてくる猿たちは兵隊より弱いため、近づいたところで問題無く撃破していく。


5分後には全て片付いた。


「周囲に敵影無し。終了と判断いたします」


幸丸から敵対勢力の鎮圧終了の報告があった。プルも同じことを言っている。


「あ~…しんどかった…」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「幸丸の一撃強すぎない?」

「申し訳ありません。思ったよりも強く入ってしまいました」


プルの索敵により、近づいて来るものがいないことは常に確認してもらっている。やはりAランクの魔物はまだ相手にしたくない。

幸丸に文句を言いながら、ドロップアイテムを回収していく。


「まあ幸丸に魅了の針が刺さったところで効果無いですからね。見た目に動物やとでも思ったんでしょうね。でもご主人も幸丸も打ち合わせ無しでよく出来ましたね」

「いや、効果ないのは俺も分かってたけど、幸丸が本気出したらもっと威力あるのは分かってたからさ。戦闘能力ないって言われても、顎をどつかれてあれくらいの衝撃で済むのはおかしいと思ったんだ。しばらくは目が回ったけど」

「私はプル先輩から周囲にまだ隠れている魔物がいるからどうにかならないかと聞かれて判断しただけです」


プルと幸丸は話せるようになってから、結構話をしている。先輩と後輩のような感じだが、傍から見た感じでは面倒見の良い姉と生意気だけど姉が大好きな弟だ。

まあ実際の年齢があったとすると、姉弟とはいえないほどの差があるだろうが無粋なので言わない。


「本体プルと分裂プルとでは、何となく色が違うのも大きいよな」

「何となくでしか分からんときありますけどね」

「私も同様です。全く同じにしか判別付かないときもありますが、必要なときにはハッキリと分かります」


プルの謎がまた1つ深まった。


「それでも一番突っ込みたいのは、ご主人やで。針刺さってなかったですか?」

「刺さったよ。そのあとに魔力が浸透してくるのも感じたよ。悪意のある魔力ってすっごい気持ち悪いぞ。体内に入ってくると余計に際立つ感じ」

「そこまで来てなんで無効?耐性持ってました?」

「耐性が無かったとしても、MPが高くて魔力の扱いにも慣れた俺が、系統的に魔力の扱いが苦手と言われる獣系の魔物に乗っ取られるわけが無い」

「あ~。そういう…」


納得したような感じで手を打つヨウキ。ポンと手を打つものの、骨なのでカンという音だ。すぐに納得したような、できないような表情になる。


「森林虎も魅了されてましたけど?」

「魔力の扱いは下手なんでしょ」

「ご主人、さっきAクラスはバケモンやって言ってましたよね」

「うん、言った。でもその「ご主人バケモンもですやん!!」先を言ったから鍛錬でしごく!」

「堪忍!!」


ヨウキの確保に向かう俺だが、更に逃げていくので悪ノリして更に追いかける。


「これで回収は完了ですね。飽きるまでほっておきましょうか」


幸丸は姉というより母か?


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


さすがにいつまでも17階層で遊んでいるわけにもいかないので16階層を目指す。そこまで離れているわけでもないので、到着はすぐだ。


16階層に上がったところには、叩きだした2人、逃がした3人と1匹がそれぞれ別れて待機していた。


「ちゃんといたね」


正直逃げてると思ってたけど。俺が声をかけると2人の方は露骨に震えるが、槍男の方は複雑な表情を浮かべていた。森林虎もいる。これの扱いどうしようかなぁ。というか階層を上がってくることも出来るのか。できなきゃダンジョンからのスタンピードなんて成立しないか。


「じゃあ、ここからはもう魔物が脅威にはならないから魅了を解くよ」


事前宣告の通りに行動しようとするが、そこに待ったがかかる。


「待てよ!そいつらを解放することでお前に何のメリットがあるってんだ!」

「お前らが苦しむ。説明もされてると思うけど、地上ではお前らのやったことはほぼギルドに通報してあるよ。ここで俺に手を下される方が良いか、黙って地上まで連行されるのが良いか。解除するまでに選んでて良いよ」


疲れてるんだから、無駄な問答はやめてほしい。口を動かしつつ、手は解除に動かす。間にプルとヨウキが入るので2人は近づいて来れない。


さすがに何人も行ったので、魔力の除去は問題なく終了。あとは衝撃を与えれば良いのだが、念のために確認しておく。


「俺がやっても大丈夫かな」

「2人ともB級冒険者なわけですし、大丈夫でしょ。でも弱めにやってくださいよ!あのおっちゃんみたいにしたらダメですからね!」

「オッケー。気を付ける」


エスロンさんから弱めにはたく。が、びくともしなかった。ほとんど揺れもしないエスロンさんを確認して、ヨウキと目を合わせる。


「「え?」」


もしかして、エスロンさんってタンクとして超有望株の人かも?仕方が無いので、徐々に強くしていくが、ちっとも目が覚めない。


パチン


バチン


バッチーン


ここではたく、から殴るに変える。


コン


ゴン


ガツン


ドゴ


素の力で叩いても戻らないので、強化を施すことにした。そこまでいってようやく目を覚ました。適量が分からん。


「う…、ここは?」

「詳しくは後で話すよ。もう一人いるから待ってて」


次にサイラさんだ。大きく振りかぶる。


「強化状態のまま殴んな~~~!!」


強化を切り忘れていたことをヨウキからハリセンで強く突っ込まれた。


「……死ぬかと思った……」


殴らずともサイラさんは目を覚ました。

お読みいただきありがとうございました。

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