表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺がハマっている国家運営戦略SLGの世界に、クラスメイトが勇者として召喚された件  作者: 青い木と息
第1章~クラスメイトが勇者として召喚されてきた。さて、どうしようか~
8/14

第8話 VRMMO(終)

 俺の名前は青山あおやま裕一郎ゆういちろう。17歳。

 高校2年生である。

 一つ自慢すると、俺の通っている皇高校は昔から地元の名門校としてこの辺りの地域では一目置かれている学校だ。俺の合格が決まった時に、両親が鼻高々で大喜びしたのは言うまでもない。


「「裕一郎は絶対に受かると思っていたよ(わ)!」」


 二人とも調子の良い事を言っていたが、受験当日に包丁で手を切るわ、免許証を忘れるわ、何で当の本人よりも緊張しまくっているのだろうか。

 合格発表を見に行く前も、地元の神社に1万円のお賽銭を迷わず突っこみ、俺を驚かせた。

 大学受験の時に、十万くらい平気でお布施しそうで恐ろしい。


 そんな良くも悪くも息子おれを溺愛している両親は合格祝いも、奮発してくれた。


『ロード・オブ・タクティクス』。


 通称『LOTエルオーティ』。


 パッケージにその銘が打たれた合格祝いは、VRMMO史上初となる国家運営型戦略SLGだ。


 VRとはコンピュータが創り出す仮想現実世界のことであり、その仮想現実世界(VR世界)をゲームとして用いたVRゲームの内でも、いわゆる大規模かつ多人数が一つのVR世界を同時に共有する、いわゆるオンラインゲームの形態を成すVRゲームがVRMMOである。


 VRゲーム自体が誕生したのは、今から15年前。俺が生まれた年である。

 その頃はまだ人間の機能の内でも視覚や聴覚のみをVR世界に同期させるのが限界で、VRMMOを成立させるために絶対的不可欠なフルダイブ―――すなわち、人間のすべての機能を仮想世界と送る技術はまだ確立されていなかった。


 その頃、フルダイブという名称は小説や漫画などに登場する用語でしかなく、現実的には不可能とさえ言われていた。


 しかし、それから研究が進み、俺が小学校6年生の時にはフルダイブ技術が確立された。


 これにより人類は新たな時代に突入することになった。所謂、VR時代の始まりである。


 人間は生身の肉体とは別にもう一つ、仮想空間で活動するための新しい自分の身体を持つことができるようになった。

 このVR世界で得たもう一つの身体を専門用語で『アバター』という。

 専用の機器によって脳とアバターを接続し、五感を始めとする脳からのすべてのシグナルがアバターへ送られる。

 初めてVR世界へフルダイブする時のアバターは、身長、体重、その他一切、自身の生身の肉体そのままのアバターであるため、あたかも自分が別世界に入り込んだかのような錯覚が生じる。


 これがフルダイブの大雑把な原理である。


 ここで俺達一般人が心得ておかなければいけない常識は先に述べた大雑把な原理とVR世界に同期している間は現実世界にある生身の肉体は完全睡眠状態パーフェクトスリープという特殊な睡眠状態となり、VR世界からログアウトされない限り、一切動くことがないという事だ。

 脳からの指令はすべてVR世界へ送られるので、当然だが、現実世界の生身の肉体は植物人間のような状態になるというわけである。


 VRは様々な業界に浸透し、影響を与えている。

 その中でも、一番の恩恵を受けているのは、やはりゲーム業界だろう。

 先に述べたとおり、すでに昔から多くの小説や漫画の世界においてVRMMOは描かれており、ようやくそれが実現したわけだから。


 現在、VRMMOの形態を成しているVRゲームは2つ。


 一つは俺が手に入れた『ロード・オブ・タクティクス』。

 ちなみに発売されたのは丁度、俺が受験勉強に必死な時期だった。

 今思うと、合格祝いで本当に良かった。

 多分、発売と同時に両親がプレゼントしてくれたら、間違いなく皇高校には受からず、今頃、地元の最底辺の高校に通う羽目になっただろう。


 そして、もう一つ。

『ソード・アート・クロニクル』、通称『SACエスエーシー』だ。

 これは俺が中学1年生の時に発売された世界初のVRMMOだ。

 


 プレイヤーの比率で言えば、現状は3:7くらいでソード・アート・クロニクルの方がプレイヤーの人口が多い。

 発売時期の違いも当然あるのだが、ソード・アート・クロニクルは実際にプレイヤー自身が剣や魔法を使い、どんどん強くなっていく本格的なVRMMORPGなのに対し、ロード・オブ・タクティクスはSLGで、プレイヤー自身は最強になれない。しかし、プレイヤーを助ける仲間が強くなり、国を盛り立て、天下統一を目指すという、ちょっと人を選ぶ要素がある。

 

 好みの問題かもしれないが、万人受けするのはやはりソード・アート・クロニクルだろう。

 一つのVR世界をみんなで共有し、運営が用意するダンジョンや公式シナリオをみんなで楽しむ。

 戦闘だけでなく、生産職とか多数の職業が設定されており、男女問わず、様々なプレイスタイルが可能である。


 だから、ロード・オブ・タクティクスの方が敗けているというわけではない。多分、こっちはこっちで今も続いているSLG系の『信長様の御野心』シリーズのようなコアなファンが付いていくだろう。実際、俺がそうであった。


「さあて、今日もやりますか」


 帰ってくるなり、俺は自室へ向かう。

 そして、いつものように自室へ鍵を掛け、机の上に置かれている物に目をやった。


 俺の机の上には流線型のヘルメットと、騎士の籠手のような右手用のグローブが置かれている。

 俺はカバンの中から左手用のグローブを取り出すと、それらすべてを装着する。


 俺が今装着した一式の機器こそ、VRMMOをするために必要不可欠となるゲームハードである。


『ヘッドギア』と呼ばれる流線型ヘルメットと『グローブギア』と呼ばれる騎士の籠手のようなグローブ。


 この二つを総称して『メイルコア』と呼ばれている。


 ちなみに、このメイルコアはソード・アート・クロニクルとロード・オブ・タクティクスでは外観こそ似ているが、中身は全く別仕様であり、両方のゲームをプレイするためには、それぞれに対応しているメイルコアが必要となる。


(そんな富裕層は日本でも一握りだろうよ)


 そんな事を思いながら、俺はメイルコアの装着を完了する。

 そして、自分のスマートホンを左手のグローブギアにセットする。

 これがプレイ中に非常に大事になってくる。

 そして、自室のコンピュータに向かい、コンピュータ内のソフトを起動させ、それが終わるとヘッドギアと右手のグローブギアのスイッチにある機器のスイッチを入れた。


 すると、目の前にいきなりA4サイズの半透明画面が出現した。


 この半透明画面はメイルコアを装着している人間にしか見えない。

 恐らく、何も知らない第三者が俺を見たら、変な装置を付けている危ないヤツにしか見えないだろう。


 この半透明画面―――『仮想画面システムウインドウ』の存在には最初はビックリしたが、今はもう慣れた。

 仮想画面に流れる何度も見たLOTのオープニング映像もスキップすると、スタート画面に切り替わった。

 俺は仮想画面がスタート画面表示になっている状態のままベッドに横になり、画面の「GAME STRAT」の文字に触れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ