表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺がハマっている国家運営戦略SLGの世界に、クラスメイトが勇者として召喚された件  作者: 青い木と息
第1章~クラスメイトが勇者として召喚されてきた。さて、どうしようか~
13/14

第13話 セントリア王国からの救援要請5(終)

 そうだ。シエルにはそれがあった。


『鑑定』は名前こそありふれているが、これは超レアなスキルであり、それを所持している配下はこの場ではシエルだけしかいない。

 このスキルがあると、相手のステータスを見ることが可能である。


 俺もNPCのステータスは見ることができる。

 ただし、これはスキルではなく、プレイヤーの管理権限によるもので、その対象は配下のNPCに限られる。


 したがって、ユメリアの様にまだドラグレイに属さないNPCは対象外だ。


 しかし、鑑定のスキルを持つシエルはユメリアのステータスを見ることができるのである。


 そして、それによりユメリアを見たシエルはこう言った。


 ユメリアには『勇者召喚』というスキルがある、と。


 まさかとは思うけど、運営方々、昨今の異世界ブームに乗っかったんじゃないだろうな。


「シエル。もう少し詳しく教えろ。どういうスキルなんだ」


「通り一辺のスキル説明だけど『儀式を執り行い異世界から神より特別な力を付与した勇者なる存在を降臨させる』と書かれている。でも、読む取れる限り、このスキルを使えば、超優秀な配下を王に献上できたんじゃない。わざわざ、裸にならなくても、十分な対価だと思うよ」


「そ、それは……」


 ユメリアは口ごもった。

 どうやら、何か訳がありそうだ。


「理由があるなら、聞こう。別に隠していたから、援軍を考え直すとは言わない。ただ、正直に答えてもらおう。ユメリア殿の全権は俺にある……だったよな」


「……はい。そのとおりです。では、ハッキリと申し上げます。蒼龍王様。実は、私自身、勇者召喚の儀をおこなった事が無いのです。どのような結果を生むのか、見当もつきません。もし、召喚した勇者が勇者とは名ばかりで、蒼龍王様にご迷惑をお掛けしてはと思うと……」


「なるほど。それこそ、前例が無いゆえに、リスクを気にしたというわけか」


「はい。そのとおりです」


 まぁ、そういうことにしておかないとシナリオのストーリーがおかしくなるわな。

 だったら、最初から亡命して援軍なんて求めず、今流行の異世界テンプレに倣って、勇者召喚したらって、ツッコみを俺でも入れるからな。


「でも、優秀な人材が増えるのは国にとって良い事だ。蒼龍王は人を使うのが上手い。必ずやいい方向に役立てるとボクは考える。勇者召喚の儀を執り行ってもらうことも報酬に追加してはどうだろうか」


 シエルはそう提案する。

 多分、提案されなくても勇者召喚しないと、この公式イベント上、重要なフラグを立て損なうと俺はもうすでに判断している。

 公式イベントには先述したとおり、一連のストーリーがある。


 勇者召喚をしなくても、国力のゴリ押しでクリアすることもできるが、用意されているフラグを立てておかないと最高のエンディングを迎えることができないし、今回のような報酬交渉型の公式シナリオの場合は、このあとの報酬にも影響してくるだろう。


「お待ちください」


 その時。第一軍団長のユキムラが立ち上がり、俺達の元へ歩み寄ってきた。

 そして、俺に進言する。


「我が君。我らの力だけで十分です。異世界から得体の知れない者達の力に頼る必要はないと考えます」


 現状、ドラグレイド最強の戦士であるユキムラの誇りなのだろう。

 まだ本格的に魔王軍と戦っているわけでもない。

 ドラグレイド自体が窮地に陥っており、藁にも縋る状況であるならまだしも、いきなり勇者の力に頼るのは、如何なものか。

 ユキムラの意見はそういう事だろう。


「ユキムラ。別にボクはユキムラ達だけじゃ不安だと言っていないよ」


「では、何だというんだ」


「ドラグレイドの将来のためだ。凄い能力を持った『勇者』と呼ばれる存在を国の中に取り込み、その血筋を繋げば、ドラグレイドのさらなる繁栄が見込める」


 軍人ユキムラ政治家シエルの違いだ。

 正直なところ、ユキムラだって、ずっと最強ではいられないのだ。

 それは本人も分かっているはず。

 LOTには種族ごとに寿命が設定されている。

 人間族の寿命はゲーム上の時間で約6年。

 その内、幼児期が1年、成長期が1年、全盛期が3年、老衰期が1年という内訳になる。

 この内、幼児期の経験によりアバターの身体や能力傾向の基礎が確定し、成長期の経験により能力が一気に伸びて、全盛期を迎える。

 そして、老衰期になるとその能力が段々と衰え、天寿を全うする。

 これがLOTにおける人間族の一生だ。


 簡単に言えば、俺の屍を超えていけ! という話で、プロ野球チームの様に世代交代を疎かにすると、気づけばどんどん弱体化してしまうという、ある意味でリアルな要素がLOTにはあった。


 なお、この6年という寿命は目安であり、これが7年、8年、9年……10年はまだ聞いたことはないが……と、そんな形に伸びることはあるし、6年を待たず、戦死や病死をしてしまうパターンもある。


 初代ユキムラは戦死だったし、2代目ユキムラはプレイ当初に全盛期の人間族NPCで購入したこともあり、つい先日、6年という天寿を全うされお亡くなりになられた。

 そういう意味では目の前の3代目ユキムラは、幼児期からドラグレイドで育成し、全盛期を迎えた配下の代表であった。

 ユキムラを始め、今、この場にいる重臣クラスの人間族はドラグレイドで幼少期から生まれ育ち、頭角を現して現状の地位に上り詰めた者達ばかりである。

 課金によって購入した奴はもう一人もいない。

 少なくとも、人間族に関しては。


 俺はユキムラに言った。


「ユキムラ。勇者の件だが、俺はけっしてそいつ等の力を当てにしているわけではない。元よりドラグレイド単体で戦うつもりだった」


「では、なぜ……」


 そりゃ、勇者召喚をやってみたいからだという個人的な理由を言うわけにはいかないので、こう答えた。


「だが、状況が変わった。国全体を預かる立場からシエルが言う将来的な話も無視はできない。王として、これからのドラグレイドの発展およびセントリアのために優秀な人材はいくらでも欲しい。良いか。俺はけっしてその者達に頼るつもりはない。使うつもりだ。ユキムラは不満か?」


「いえ。最終的には我が君のお考えに従います。されど、我らは決して後れを取るつもりはございません。魔王の首級を挙げるは、我らドラグレイド竜騎士団。必ずやこのユキムラの剣で魔王の首を取ってご覧にいれます」

「期待しているぞ。お前がウチのエースだからな」


 俺はユキムラの肩を力強く叩いてやった。


「ユメリア殿」


「はい。蒼龍王様」


「勇者召喚の儀を執り行っていただきたい」


「よろしいのですね?」


「ああ。敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず。しかし、その敵の力量がまだ分からない以上、手に入るカードは全て得ておきたい。むろん、勇者の方々にはセントリア王国の復興にもご尽力いただくつもりだ」


 愛国心の厚い彼女の好感度をちょっとでも稼ぐべく、俺はセントリア王国のことにも触れておく。

 思ったとおり、彼女は感涙しだした。


「蒼龍王様のお心遣い。感謝に堪えません」


 そして、ユメリアは勇者召喚の儀を執り行うことを約束した。


「よし。これですべて決まったな」


 俺はそう言って、仮想画面の「YES」の表示を弾いた。


―――

以下のイベントを引き受けました。


【イベント名】

 魔王討伐

【イベント概要】

 ドラグレイドの南より、セントリア王国の第一王女ユメリアが亡命してきた。彼女の要請に応じ、魔王軍と戦うか、否か、果たして蒼龍王の決断は……

【勝利条件】

 ・魔王の撃破

【敗北条件】

 ・プレイヤーの死亡

 ・セントリア王国の滅亡

 ・期間満了

【期間】

 1000日

【報酬】

 ・933ゴールド

 ・無地の外套ローブ

 ・短剣

 ・弓

 ・セントリア騎士の鎧

 ・セントリア騎士の戦闘服

 ・セントリア騎士のブーツ

 ・セントリア騎士のソックス

 ・指輪

 ・ドラグレイド製礼装ドレス

 ・ヒール

 ・竜玉の飾り

 ・ブラジャー

 ・パンツ

 ・ユメリアの人権

 ・勇者召喚の儀の執行

【備考】

 ・イベント終了まで、南の国境は使用不可となります。

 ・セントリア王国入国後、報酬について再交渉。

―――


「ありがとうございます。それではこれより勇者召喚の儀を執り行いたいと存じます」


「ボクもユメリア殿に付き合うよ。どのみち、ボクしか能力を視ることができないわけだし」


「それもそうだな。シエルに任せる。それと、何かユメリア殿に着る物を渡してあげてくれ。出来れば、ウチで今用意できる最高級の魔法衣が良い」


 スキルの効果は、全てステータス値による。

 より高い効果を期待するためには当然、ステータス値を高めておかなければならない。

 ステータスの値は成長のタイミングによるので、簡単には上がらない。

 なので、即効的に上げるなら、付加価値のあるアイテムを装備させるのが一番手っ取り早いことになる。

今、イベントを引き受けたことでユメリアのステータスを見ることができるようになったが、彼女の能力は総じてみるべき所が無く、正直、配下として働いてもらうとすると、軍団長や大臣といった重臣クラスにおける数値ではない。

 やはり、勇者召喚のためだけのキャラクターなのだろう。

 あとは、まぁ、この公式シナリオのヒロイン的な役割かな。


「我が君。神が遣わす者達です。本日は重臣一同揃っております。やはり国を挙げて歓迎すべきでは……」


 エリスが助言する。


「エリスの言う通りだな。ユメリア殿。勇者召喚はどれくらい時間が必要かな?」


「概ね、3時間ほど見ていただければと存じます」


 LOT内では、特にプレイヤーが凝って設定しなければ現実の単位等がそのまま準用される。

 ドラグレイドの時間は特に弄っていないので、現実と同じ1日24時間。

 1時、2時と普通にカウントする。今から3時間後だな。よし。

 盛大にパレードとか催すには時間がないが、この玉座の間にて重臣一同心より歓迎し、別会場で細やかな宴を用意するくらいは十分できるだろう。

 俺はそれらをエリスに指示し、全体に玉座の間へ30分前集合を命令し、臨時議会の閉会を宣言した。


 しかし、この後。


 俺は自らの決断を後悔することになろうとは、この時まだ知る由もなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ