世界を救いなさい。いや世界を救え。01
あれからしばらくの時間が経ち、もう既に寝ている奴はいなくなった。俺たちを囲む兵士たちは何をするわけでもなくただの一歩も動かずに槍を向けたままだ。そんな状況に慣れ始めたのかクラスメイトたちは仲のいいグループでまとまり始めていた。俺は三樹 九音、日暮 奈々子の幼馴染2人とこの先の事を展開の予想と脱走する手立てを話し合っている。だがそんな話がまとまるはずもなくただ、ただむなしい空想論が繰り広げられただけだった。
そんな話し合いを銅鑼の『ゴーーーーーーン』と音が遮った。すると出口が見える側の兵士が横へと広がる。チャンス!?と思った俺たちは直ぐ様に落胆することになる。広がった先からは鎧を着た騎士たちが列を成して闊歩してきたのだ。奴らは俺たちのすぐ目の前まで来ると中央の一番豪華な装飾された騎士が兜を外す。
「我はヒノジン国、国王のゴクセンである。勇者たちよ、よくぞ参った。」
ざわざわと、し始める中で立ち上がったのは委員長の剣寺 さくらだ。皆がさすが委員長と思ったのか剣寺の方が見て静まりかえる。
「あなた方がどんな目的でこんなことをしているのかはわかりませんが、いたずらにしてはやりすぎですよ。家へ帰してください。」
・・・さすが委員長だ期待を裏切らない。だけどそうじゃない、そうじゃないんだ。全く状況を理解していない委員長に話の分かる奴らはきっとこう思っただろう。あの事故はリアルだそしてそこで何かが起きて俺たちはこの世界へ導かれたと・・・。だが、俺たちの運命は思ったより過酷なのだとこの国の王であるゴクセンが語った。
「ふむ。状況が呑み込めていないようだな。君たちは自分たちの世界で死んだのではないかな?我らの執り行う召喚の儀式とは異世界の果てで死んでしまった者を奇しくも蘇らせ呼び寄せる物であるのだ。」
俺たちは死んだと聞かされ静まり返る俺たちを無視してゴクセンは語り続けた。
「だが、君たちは運が良い。この地で新しく生を受けることができたのだからな。ただし、君たちには使命が与えられる。この世界にはダンジョンと呼ばれる遺跡があり、そのダンジョンが地を侵食し始めているのだ。それを食い止めるのが君たちの使命である。」
立ち上がったままの剣寺は呆然としていて頭が回っていない様子だ。それを見かねてなのか金澤が立ち上がった。金澤はクラスの風紀委員で正義感の強い男だ。
「おい。勝手に召喚しておいて使命だなんだって言われたってやるわけねえだろ!!俺たちには関係ねぇよ。」
それを聞いた王は1枚のスクロールを広げ俺たちの方へと向けた。そのクスロールには訳の分からない図や印がたくさん記述してあり、それこそが契約の証だとゴクセンは語った。そしてこの後にゴクセンが口にした言葉で場の空気は一変した。
「では、元の世界へと帰還するか?この契約の証使い解約の儀式を執り行えば君たちは元の世界へと戻ることができるだろう。だがしかし、君たちは死んだ身なのだ。その魂は即座に冥界へと送られることとなろう。どうするかね?・・・・・・・返答できぬか?では、生きたいなら世界を救いなさい。いや世界を救え。」
そう、ゴクセンの問いに元の世界へと戻してくれと答える者はいなかったのだ。そしておそらく皆が思っただろう。俺たちは勇者じゃない奴隷なんだと・・・。